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とりあえず殴ればいいと言われたので  作者: 杜邪悠久
第一章 初心者
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とりあえずパーティーとは何か

 草原に突如として現れる木の葉を纏った竜巻。それは辺り一帯のモンスターを次々と巻き込み、その全てを倒していく。すると──


『ユイは1経験値とハウンドの牙を入手しました』

『ユイは1経験値とチュチュンの羽を入手しました』

『ユイは1経験値とハウンドの毛皮を入手しました……』


 と一気にスクリーンがまるでチャットのように連続して表示される。その全てが、今まさにエースによって倒されていくモンスター達の頭上に表示されている名前ばかりだ。


「あれ? 私何もしていないのに」

「それが『パーティー』というものさ。パーティーは最大6人までで組む事が出来て、モンスターを倒すとその全員にアイテムと経験値が振り分けられるのさ」

「おお、凄いねそれ!」

「勿論メリット、デメリットはあるよ。メリットは一人じゃ倒せない敵や倒せるけどHPやアイテムが底を尽きそうだ、って時とかに協力して助け合える。デメリットはアイテムや経験値が振り分けられるとは言ったけど、レアアイテムはパーティー内の一番レベルが高い人にパーセンテージが偏る。しかも経験値も同じで私とユイの場合、この辺りの敵だと経験値も少ないから1しか貰えなかったと思う」

「うん、全然だね」

「でしょ? だから本来は同じレベル帯の人同士で組むのが効率がいいし、攻撃、防御、回復、遠距離、強化、補助…みたいに違う役割を持つ者同士で組むと隙も無いし何より楽しい」


 エースの言う役割の違う者同士のパーティーというのはあくまでもユイに配慮した言い方である。ユイは基本的に記憶力が悪いが、それは興味が無い場合である。つまり興味さえ持ってくれればそこに自然と情熱と理解を深めてくれるのである。なので役割の違うパーティー編成を教えた訳だが、OOOでは主に特化パーティーが主流だったりする。あまりにもスキルの種類が多過ぎて、新規が覚えられない為である。だから強いスキルに絞った攻撃4、回復1、遠距離1などのパーティーが一般的なのだが、ユイにはあまり先入観を持たせないように気を配っている。


「んじゃ私は攻撃役になるんだね」

「まあそうなるね」

「エースは何になるの?」

「んー、私は防御か回復か補助かな」

「いいなー、いっぱい出来るんだね」

「まあスキルを沢山持てばね。あとは好みかな。ユイはちょっと覚えがアレだから」

「アレとはなんだー! アレとは!」

「まぁまぁ。回復や補助はタイミングがあるからね。防御も結構難しいし、そうなるとやっぱり今のスタイルは正解だったかなと私ゃ思う訳だよ」

「なるなる。つまり結論を纏めると?」

「レベルを上げてスキルを集めて殴れば勝つ!!」

「なるなる」


 本来ならばスキルの生かし方や戦略、戦術、装備やパーティーの編成などなど。多岐に渡るものの中から自分に合うスキルや相性を見出すのが醍醐味であり、エースの言うのはそれらを放棄するような極論であるのだが、まずはゲームそのものを楽しんでもらうのが何よりだ、というのが一華の持論である。勿論、元凶を辿れば一華の勧誘からなのだが、そこは昔からの付き合いで慣れっこの唯には特に問題にもしていない。なのでまずは基礎をゆっくり固めて、そうして最終的には並んで冒険を歩めるように、と密かな思いを胸にして。



「んー、そろそろ夜も遅いし続きはまた明日にしよっか」

「本当だ、もうこんな時間?!」


 メニューを開くと時間が表示されている。ただし時計は二つあり、一つは現実の、もう一つはゲーム内でのものである。ゲーム内での時間は現実とは異なる為の措置である。ゲーム内では何日も居るように感じても、現実では二時間程度しか経っていない、というのは今では常識である。そんな話を聞いてユイは単純に「凄いね」と言った。


「ユイの語彙力と眠気も限界だろうし、そろそろ落ちるかね〜」

「語彙力は関係ないじゃん!」

「ハハハ、じゃあおやすみ〜」

「もー。じゃあまた明日ね、おやすみ」


 そう言ってメニュー画面から『ログアウト』をタッチし落ちるユイを、エースは静かに手を振りながら見送った。


「にゃはは、少しは楽しくなりそうだなぁ」


 ユイが興味を持ってくれるかは賭けだった。昔にも色々誘っては引き込んでいたが、そのどれもが『一華がやろうって言うから』だった。今でも趣味と言えるのは小旅行ぐらいなものだろう。

 けれど最後にユイは言った。──また明日ね、と。

 この一言がたまらなく嬉しくて、少しの間草むらの上で身悶えしていた。その姿を通りかかったフレンドに見られるまで、エースのクフクフと笑う声が草原に響いていたのだった。


【攻略メモ】

スライム

出現場所:【始まりの町:ルクセンダーラ】の近辺ならどこでも。

レベル帯:1-2

攻撃方法が遅い移動からの体当たりの為、余程の事が無い限り簡単に倒せるモンスター。

【スライムの粘液】は使うと手にドロッとした液体が出現する。使い道は合成素材とスライムソードと呼ばれる武器で、攻撃力が無く当たるとちょっと濡れる。すぐ乾く。

倒しまくると【スライムキラー】などが手に入るが、逆に倒されまくると【スライムヘブン】というスライム系からの攻撃が必ず即死になる、というゴミスキルが入手出来る。なお、経験値返還率もゴミである。

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