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とりあえず殴ればいいと言われたので  作者: 杜邪悠久
第一章 初心者
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とりあえずアクティブとパッシブを学ぶ

 私達は【湖都:アクゼリシア】を【始まりの町:ルクセンダーラ】とは逆のもう一つの、次の町へと向かう方に掛かる橋を渡って近くの草原まで足を運んだ。草原はどこまでも続くかと思うほど広く遮蔽物も無い。時たま吹く風が、ここがゲームの中だと忘れさせるほど、穏やかで心地よく肌を撫でる。周りを見ればモンスターと戦う人の他に、普通に座ってお喋りしている人達が多く見受けられる。不思議に思っていると、エースがそれについて教えてくれる。


「ユイが最初に戦ったスライムは【アクティブモンスター】だからね。ここの草原に居る敵は皆【パッシブモンスター】だから」

「アクティ…パッシ…?」


 そう言って教えてくれたのだが、何を言っているのか理解出来ない。エースはやれやれと言いたげに肩をわざとらしく竦めると、今度は丁寧な口調で教えてくれた。


「全く、これだからゲームしない人は」

「しょうがないじゃんかー!」

「どうどう。ごめん、ちゃんと教えるから。えっとね、まあ要は自分から攻撃してくるのが【アクティブモンスター】、こちらから近付いたり攻撃しない限り襲って来ないのが【パッシブモンスター】って訳さ。あのスライムは【アクティブモンスター】だから、近づくだけで攻撃してきたでしょ?」

「そう言えばそうだね」


 確かに、あまり良いとは言えない記憶力を溯ってみても、スライム達は近くを通り過ぎるだけで攻撃を仕掛けてきたように思える。尤も、それは最初の方だけで、後半からは自分から嬉嬉として向かっていたように思うけど。


「んでね、その延長線上というか、さっきのスキルの説明をする為にここに連れ出してきたという訳さ」

「スキルの説明ならさっき町で聞いたよ?」

「うんにゃ、あれはまだほんの一部だけさね。おいちゃんはまだまだ説明し足りないぜ?」


 うひひ、と笑う親友に若干嫌な予感を感じさせつつも、具体的には何をするのかと問おうとしたところで、目の前にスクリーンが現れる。


『エースからパーティーの申請が来ています。許可しますか?』


「パーティー?」

「そっ、パーティー」

「ダンスとかお泊まり会とかするの?」

「いやー、流石ウチの親友は期待を裏切らないぜ。愛してるぜベイベ」


 明らかにからかってる時の顔でそんな事を言うエース。何がツボったのかお腹を抱えてクククと笑うエースの背後に私は立つ。


「あれ? ユイさんや、どうして後ろから抱きつくのかね。いや、それはちょっとやめようか?」


 私は後ろから片手でエースのお腹をがっしりと掴み、完全に逃げられないようにロックする。そしてもう片方は胸の辺りをこれまたガッチリと抱き締める形を取る。エースのキャラが現実の身長よりも高いのが逆にちょうどいい。そのまま私は、エースの脇に手を滑り込ませ、円を描くようにぐるぐると。しかし急いではいけない。ゆっくりと、丹念に円をなぞるのだ。


 その結果──­­


「ひゃっ、あんっ。あふっ…ちょっ、ごめんっなさっ…あうぅ」


 この攻撃がエース、いや一華に対して大ダメージを与えられる一撃の一つだ。昔から脇から脇腹に掛けてはとても弱いのは周知の事実。これをやればどんなに暴走していても大人しくなる。ただどこへ行っても、周りの男達が何故か妙にそわそわしだすのが気がかりだけど。

 そうして脇ぐるぐる攻撃を数分した後、エースがピクピクと草原の上でまな板のコイみたいな状態になったのを眺める事更に数分。


「ぐぬぬ」

「もう。昔からエースは話している最中に脱線するよね」

「ぐぬぬ」

「ごめんなさいは?」

「いや、あれはユイのギャグセンスの高さが」


 指ワキワキ。


「すいません、申し訳ございません」

「素直で宜しい」

「で、さっきの続きを話してよ」

「そだね、うん。あと、とりあえずパーティーには入っておいてね」


 言われた通り、パーティーに加入後、若干ビクビクしながらエースは話し出す。


「さっきの【パッシブ】と【アクティブ】は実はスキルにも共通している用語でね。【アクティブスキル】は自分が任意のタイミングで使用するスキルで、【パッシブスキル】は持ってるだけで勝手に使用されるスキルって話さ」

「へー。でもどっちもスキルなんだしMP使うんでしょ? 勝手に使用されるって事は、直ぐにMP無くなっちゃうんじゃ」

「あー、訂正。言い方が悪かった。【パッシブスキル】は持ってるだけで効果が発揮されて、しかもMP消費も無い。もし効果を発揮させたくない場合はステータス画面からON/OFFも出来ちゃうのさ」

「おー凄い。じゃあその【パッシブスキル】ってのだけ取ればいいんだね?」

「いんや。【パッシブスキル】はあくまでも自身の補助や補正が主目的さ。例えばユイの【極稀な奇跡(クリティカ・ラッキー)】もその一つだね。【パッシブスキル】は取れば取るほど確かに強くなれるけど、要は素のステータスを上げてるだけなんだ。反面、一撃が強い攻撃や遠距離攻撃を出すには向かない。それが」

「【アクティブスキル】って訳だね」

「そういう事。勿論、ユイの言ったように【パッシブスキル】ばかり集めるのも一興ではあるけれど。それに【アクティブスキル】だからって絶対強い訳じゃない。まあ大まかに分けるなら、って話だね」

「んー、分かったような分からないような」

「ハハハ、まあ最初は皆そういうもんさ。やってりゃ自然と覚えてくるよ。あ、とりあえずメニュー開いて設定から『スキルの種類表示』ってのをONにしといて」


 言われた通り私は設定を弄る。それが終わるとステータスを確認してみてと言われ画面を開く。すると──


 称号:【スライムイレイザー】

 スキル:

 《アクティブ》

【ダブルアタック】【トリプルアタック】【ダッシュ】【ハイジャンプ】【パワーコネクト】

 《パッシブ》

極稀な奇跡(クリティカ・ラッキー)


 と表示が変わって見やすくなった。


「私達からするとその機能が無くても効果で判別出来るから、まあユイみたいな初心者サポート用の機能だね」

「おー。凄くわかりやすく…あれ?」

「どったの?」

「【ダッシュ】のところ、消費MP0ってなっているんだけど」

「ああ。移動系のスキルは皆そうだよ。【ハイジャンプ】も消費無いでしょ?」

「あ、本当だ」

「けどその代わり、移動系の中には使用回数が制限されてるものがあるから、ちゃんと効果欄は読むように」

「はーい」

「さあて、じゃあ長話も終わった事だし、少し暴れますか」


 背筋をぐっと伸ばすとそのままエースは天に手を掲げる。いきなり何をしているのかと思ったが、次の行動に私は目を奪われた。


「【リーフストーム】」


 いきなり現れた大量の木の葉が、まるでエースを包むように竜巻の如く舞う光景だった。


閲覧ありがとうございます。作者の杜邪です。

アクセス数1万超え、並びにブクマ登録数400超え、並びに総合1000pt超え、並びにVR日間5位、並びに総合111位。


本当に本当にありがとうございます。

もう仕事の疲れよりも、「なにこれ怖い」という心労の方がやばそうです。良い意味で、良い意味でッ!

これが賢者モードの寝落ち気味物欲センサーで連戦した時の感じですね、分かります。


まだまだ基礎編が続き、既プレイの方には退屈かも知れませんが、どうかよろしくお願いします。

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