2.けもみみはいいものだ ~相馬視点~
7話は一人称になります。
ここも三人称にしようと思いましたが、和人の内面について書いてるのでこのままにしました。
神殿を出ると馬車が用意されていた。
どうやらこの馬車で優奈さんの屋敷に向かうみたいだ。
屋敷までの道すがら優奈さんがこの街について教えてくれた。
この街は冒険者ギルドが運営する、冒険者のための街らしい。
冒険者ギルドの本部もあり、なんと街の中にダンジョンもあるようだ。
優奈さん曰く街の中にダンジョンではなく、ダンジョンの周りに街が出来たというのが本当の所らしい。
で、優奈さんは冒険者ギルドの総帥でこの冒険者の街『タチバナ』の実質的な支配者ということだ。
ちなみに街の名前を言う時にとても嫌そうにしていた、なんとか回避しようと頑張ったけど勇者様の街だから!ってことで押し切られてしまったらしい。
その後も街の名前を変更しようとしたけど、ことごとく失敗したとか……。
あと冒険者ギルドはどこの国にも属さない完全な独立組織とのことだ。
冒険者が国にいいように利用されないようにってことだけど、その代わりに冒険者には簡単になれないし犯罪などおこすとかなりきつい制裁が課せられると。
巨大組織の長とか変そうですねって言ったら、死んだような眼で「大変デス」って返ってきた……。
頑張れ優奈さん……。
神殿を出て10分、街を見下ろす丘の上に優奈さんの屋敷があった。
屋敷に着くと連絡が行っていたのか、メイドさんと執事さんに出迎えられた。
本物のメイドさんだ!黒いお仕着せに白いエプロン。頭には猫耳さらにお尻から尻尾が……って耳と尻尾!?
思わず足を止めてメイドさんをガン見してたら、優奈さんが笑いなら説明してくれた。
本物の猫の獣人の人もいるけど大半が偽物の耳と尻尾らしい。
なんでも執事長さんの趣味だとか……。
「猫耳は正義です!」
とか真面目な顔して言われても困るんだけど?
「私は垂れ耳押しです」
うん垂れ耳も可愛いよねって、優奈さんまで何言ってるんですか。
ちなみに猫以外の獣人の方もちゃんといました。
なんでもこの屋敷のメイドさんは結構有名で、ここのメイドは街の娘さん達の憧れの職らしい。
それとあとで知ったんだけど年一回けもみみ総選挙をやってるらしい。
けもみみが似合うメイドさんを決めるのだとか……。
まさかMID48とか言わないよね!?
最初は屋敷内だけでひっそり総選挙をしていたけど、報酬の猫耳カチューシャを欲しがる人が続出で気づいたら街をあげてのお祭りになってしまったらしい。
装着すると『100メートル先に落ちた針の音をも聞き取れる』魔道具なんだとか。
どこからか蜘蛛男が出てきそうな道具ですねって言ったら、優奈さんがにやっと笑ってた。
絶対わかって作ったよねこれ!
「でも盗聴とか悪用されないですか?」って聞いたら。
その機能がついてるのは優奈さんが持ってるオリジナルだけで、賞品として渡される奴は『半径10mの敵の気配察知』しか出来な見たい。
それでも冒険者なら皆欲しがるすごい性能なんだとか。
一般販売はしてないし持ち主登録をするので欲しかったら総選挙で勝つしかない。
一度でも優勝した人は再出場不可&女性だけでなはく男性の総選挙もあるんだとか。
「相馬さんもしこの世界に残られるなら一回出場してみたらどうですか、いいところまで行けると思いますよ」
って言われたけどお断りします。
話を聞いてて思ったんだけど、優奈さんは私と近い年代から召喚されたんじゃないかと思う。
こちらとあちらでは時間の進みが違うのかな?
案内された部屋は落ち着いた感じの居心地がよさそうな部屋だった。
ベッドにお風呂も部屋についてる!
天蓋付きベッドの日本のホテルのスイートルームみたいな部屋もあるけど、日本人と聞いてこの部屋を用意してくれたらしい。
なんでも優奈さんがそういう部屋を嫌がるので、同じ日本人ならってことみたいだ。
天蓋付きベッドとか落ち着かないのでとても助かります!
しばらくするとメイドさんが夕飯を持ってきてくれた。
そういえば召喚されたのが夕方くらいだったので、結構お腹が空いている。
本来なら食堂で食べるらしいけど、お疲れでしょうから今日は部屋でゆっくりお召し上がりくださいとのことだ。
うん、本当にいろいろあって疲れた。
特にけもみみ総選挙は衝撃的だったよ。
異世界に召喚されたことはあまり衝撃じゃなかった、楽しそうだしこちらに残ってもいいかなって少し思っている。
次の日ハイエルフのリリアさんが観光に連れ出してくれた。
ついでに服も買ってくれるらしい、ありがとうございます。
リリアさんは優奈さんの補佐官で、しばらく優奈さんは仕事で忙しいので代わりに案内してくれるみたいだ。
それにしてもエルフだよエルフ!やっぱりエルフは耳が尖ってるんだなって変なところで感心してしまった。
あとリリアさんは金髪碧眼のエルフのイメージぴったりの人でした。
街を歩きながらリリアさんがこの街の成り立ちを説明してくれた。
200年前まだ優奈さんが召喚されたばかりの頃、ここはダンジョンの側にあるありふれた冒険者の村だったようだ。
冒険者ギルドもそれほど組織立っておらず、初心者が無謀にダンジョンに突撃して亡くなるとか日常茶飯事だったとか。
優奈さんは世界の脅威を退けたあと報酬でこの村を貰い、冒険者の街として発展させ冒険者ギルドを組織化し、初心者講習などを開いて冒険者のために尽力したらしい。
そのおかげで冒険者の死亡率が下がり、ダンジョンから安定して素材の供給が出来るようになったと。
「それじゃこの街の名前に優奈さんの名前が付くのは当たり前ですね」
「そうなんですよ。なのにいまだにユウナ様は街の名前を変更しようと無駄な努力を……」
優奈さんは早々に諦めるべきだと思うな。
そのまま街を歩いていると、本屋が目についた。
近づいてみるとなぜか字が読める、リリアさんに聞くと異世界から召喚された人は言葉で困らないように共通言語というスキルを持ってるんだとか。
スキル欄を確認してみると確かにあった、日本創造と離れた場所にあったので昨日は気づかなったようだ。
異世界はどんな本があるのかと棚を眺めていたら、「勇者物語」という絵本が目についた。
「ああ、それはユウナ様のお話しですよ。
もし気になるのならお屋敷に本がありますのであとでお届けしますね」
「ぜひ読んでみたいのでお願いします」
本屋を出るとお昼だったのでそのまま屋敷に戻ることになった。
お昼の後にさっきの本を持ってきてくれるとの事なので、午後は本を読んで過ごそうと思う。
あ、服も買ってもらいました。仕立ての良いさらさらとした感触の服で着るのが楽しみだ!
ちび魔王「そわそわ、そわそわ」
ライム「ま・お・う・様!」
魔王弟「兄さん逃がさないからね」