バレンタインその後 告白
6/4 後半部分修正致しました。
シャナと雪菜にはほのぼのして貰いたかったのでシャナの独占欲をなくしました。
そこは地上の楽園だった。
森に抱かれた花畑、中央には大きな池があり池の中央には蓮によく似た花が一輪だけ咲いている。
池の水は驚くほど澄み切っており、中央の花はその花弁が光を受けキラキラと輝いていた。
池を通り過ぎると地下からこんこんと湧き出る清水が川を作り、森の外へと流れている。
ここは人間からは精霊の森と呼ばれいてる聖域である。
その精霊の森が長らく不在だった主の帰還に喜び震えた。
雪菜は昔からシスコンだったわけではない。
小学校低学年の頃までは普通の双子の姉妹だった、男の子に淡い恋心を抱いたりもしていた。
そんな普通の日常が変化したのは高学年になってからしばらく経った頃だろうか。
優奈が近所のロリコンニートに攫われたのだ。
泣き叫ぶ優奈の声に気付いた家人に救出され事なきを得たが、
優奈の心に深い傷を残しそして優奈はその記憶を封印してしまった。
そして雪菜はその時から優奈に近づく男を排除しはじめた、妹が辛い記憶を思い出さないように……。
この世界に召喚され二度と会えないかもと思っていた優奈に出会え喜んだのも束の間、
雪菜の側には害虫が二人もいて怒りに燃えたものだ。
優奈から引き離したかったが、優奈が二人を受け入れているため大人しく観察するだけに留めた。
観察した結果二人は優奈に必要と結論がでたが、そうすると自分はどうしたらいいのかわからなくなった。
今まで優奈が世界の中心だった、優奈の笑顔を守るために頑張って来た日々。
しかしこれから優奈を守るのは和人とライルの仕事だ。
気付いたら優奈がこの世界で快適に暮らせるようにと魔道具作成に今まで以上に打ち込んでいた。
そして出会ったシャナ、素晴らしい知識を持ち雪菜のアイデアを次々と形にしていく今まで雪菜の周りにはいなかったタイプに
少しづつ雪菜はシャナに惹かれていった……。
シャナが聖域の花畑に足を踏み入れると、森がざわめき花がさわさわと揺れシャナの帰還を歓迎した。
そして空気がキラキラと輝き始める、聖域にいる精霊の仕業だ。
シャナに手を引かれ聖域を訪れた雪菜はその美しさに思わず息を呑む。
「シャナさんここは……」
「ここは精霊の森、精霊が生まれる聖域だよ。いや聖域ですよ」
雪菜は言いなおし口調が変わったシャナをきょとんとした顔で見つめる。
「これが本当の私です、今までのはそうですね人間用です。
この口調が嫌ならば元に戻しますがどうしますか?」
「今までのシャナさんも格好いいですが、その方がしっくり来るのでそのままで大丈夫です。
でも人間用って?」
小首をかしげ問いかけると、シャナは雪菜に微笑みかけ手を引き池まで雪菜を誘導する。
「ユキナ聞いて下さい、私は原初の精霊。すべての精霊・妖精を統べる者です」
「精霊……」
「1000年と少し前、人に興味を持った私は魔族の街へ赴きました。
魔族の街を選んだのは偶々だったのですが、そこで一人の魔族の女性と恋をし娘をもうけました」
雪菜の手を両手で包み込みと話を続ける。
「当時の文明はまだ低くて、人に合わせて生活するのはかなり苦労しました。
妻に楽になって欲しくて魔道具の開発をし始めたのもその頃です。
私は原初の精霊であり、魔道具作成の祖でもあるんですよ」
「あの奥さんは今……」
「妻は1000年くらい前に亡くなっています、私ならば精霊にして一緒に永遠の時を生きることもできたのですが
人のまま死にたいと言う妻の意思を尊重しました」
池に咲く一輪の花を見つめ当時を思い出しながら語るシャナを雪菜は抱きしめる。
「ユキナ……」
「ごめんなさい、シャナさんが泣きそうな顔をしていたので」
「ありがとう、ユキナ……」
顔を上げた雪菜とシャナの視線が絡み合う。
自然と二人の唇が触れ合っていた。
「二度と人を好きになることはないと思っていました、娘もいましたね。
ユキナ貴女と出会う前、私は魔道具に対する情熱を失っていました。
妻が好きだった人の為に魔道具を作るのは苦ではなかったのですが……」
雪菜を抱きしめ苦しそうに言葉を紡ぎだす。
「魔道具を作っても作っても、満足できなかったのです。
もっと人々の役に立つものを作りたかった、でも何を作ればいいのかわからない日々が続き
いつしか魔道具にたいする情熱すら失っていました」
「それで引退しようとしていたのですか?」
雪菜が初めてシャナに出会ったのは、飛空艇完成間際の事だ。
優奈に高齢で引退を考えている魔道具職人の店を引き継いで店を出さないかと言われ
その店に行ったらシャナがいたのだ。
高齢と聞いていたのに会ったらまだ若い青年で驚いたものだ。
なぜか優奈も一緒に驚いていた、ライムから受けた話だったようで優奈も実際に会うのは初めてだったのだ。
「ええ、でも貴女の腕を見せてもらうのに出してもらった魔道具を見て、心が震えました。こんな道具を作る職人がいるのかと!
それからは夢のような日々でした、貴女からあふれ出る思いもよらなかった発想を形にしていくのはとても楽しかったです。
そして気づいたら貴女に恋をしていました」
左手を雪菜の腰に回し、右手で頬を包み想いを告げる。
「ユキナ愛しています、精霊となり私と生涯添い遂げてくれませんか。
そして面白楽しい魔道具を一緒に作っていきましょう」
シャナの想いに雪菜も涙に潤んだ瞳でシャナを見つめ、自分の想いを伝える。
「私もシャナさんの事が好き……なんだと思います、でも確信がもてないんです。
ずっとゆなちゃんが一番で、自分の事を考えたことがなかったんです。
だから待ってもらえませんか、自信をもってシャナさんを好きだと言えるその時まで……」
その言葉に微笑み、そっと雪菜の耳元で囁く。
「ええ、待ちますよ。貴女に愛してもらえるように私も頑張ります」
見つめあい微笑みを交わすシャナと雪菜。
聖域を風が吹き抜ける、原初の精霊の恋を祝う様にくるくるといつまでも花を揺らしていた。
お待たせして申し訳ありませんでした!
次は新章です、創造神の恋編の予定でしたが変更してガイアに焦点を当てたいと思います。




