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5.マスターになりました

魔王抱いたままなのに、コアちゃんが飛びついていたので

魔王をライムに渡す描写を追加しました。

 

 部屋に戻るとライムがわたわたと慌て始めた。

 どうやら女神様達に椅子とお茶の用意をしたいが、魔王を置く場所がなく困っているらしい。

 

 「魔王を預かるわ、ライム」

 

 優奈がそう声をかけると、ほっとした表情で魔王を手渡してきた。

 なぜか魔王は小さくなってからずっと気を失ったままだ。

 

 「お待たせいたしました、どうぞこちらへ」

 

 しばらくするとテーブルとお茶の準備が整いライムに促されて席に着く。

 優奈の前に創造神レイファール、その左横に時の女神ブルベル右横は豊穣の女神アイリスと運命の女神ノルンだ。

 

 「ライムあなたは座らないの?」

 「私ごときが女神様方と同席など恐れ多いです!」

 

 ぶんぶんと大きく顔を振るライム。

 優奈がレイファールの方を見ると、にっこりと微笑みながらライムに声をかけていた。

 

 「気にしないで一緒にお茶にしましょう?」

 「ですが!」

 「ね?」

 

 にこにこと微笑みながらダメ押しをするレイファール。

 表情はとてもにこやかなのに、有無を言わせない迫力がある。

 

 「う……、かしこまりました……」

 

 諦めてライムは優奈の横に座った。

 ちなみに魔王は優奈が抱っこしたままである。

 

 「さて、まずブルベル何があったか説明してもらえるかしら」

 

 レイファールに促されてブルベルがぽつぽつと語り始める。

 

 「数日前に魔界を見ていたら、少し大き目なダンジョンを見つけたのです。

 大きいのに誰も入った様子がなく、スタンピートが起きそうなほど中は魔物で溢れかえっていました。

 このダンジョンの神託がなされてないのならまずいと思い、確認のためにダンジョンの側まで行ったのです」

 

 この世界のダンジョンは突如勝手に出現する。

 と言ってもそう簡単にはダンジョンは出来ないのだが。

 ダンジョンが出来ると神託が下され、冒険者ギルドがダンジョンを管理することになる。

 誰も入った様子がないってことは、守護者たるべき女神ガイアが神託の仕事をさぼっていたことになる。

 

 「そしてその……、ダンジョンの上空に出たときに鳥にぶつかりそうになりびっくりして手にしてた時のタクトを落としてしまい、ダンジョンにタクトが飲み込まれてしまって…………。

 慌てて下に降りたら水晶花に閉じ込められてしまいました……」

 

 ブルベルが俯き、顔を真っ赤にしている。

 

 「時のタクトがダンジョンに飲み込まれてしまったのね?

 困ったわね、神器だから最下層の宝箱の中かしらね……」

 

 そしてレイファールがブルベルに、女神ガイアが勇者と魔王に時の秘薬を使用してレベルが1になってしまったこと。

 私たちにレベルを戻すのに時のタクトが必要なことを告げた。

 

 「あの馬鹿! 時の秘薬を人間に使うとは何を考えているのだ!」

 

 ブルベルが椅子から立ち上がり怒気をはらんだ声で叫ぶ。

 秘薬は女神達が若返ったり、逆に年を取った姿にするために使うもので

 女神用に調節されているのため人間に使うと下手すると死亡してしまう可能性があるのだ。

 レベルによる身体強化がなかったら勇者でも死んでいた可能性がある。

 

 「ガイアは女神の中でも位が一番下なので、秘薬の力について詳しいことは知らなかったのでしょう。

 時が戻る=レベルが下がるくらいの認識だったのではないかと思います」

 

 それを聞いて優奈がため息をつき頭を押さえる、ガイアの馬鹿さ加減に頭が痛くなったようだ。

 

 「それと申し訳ないのだが、時のタクトがないとレベルを戻してあげることが出来ない」

 

 ブルベルが立ち上がったまま頭を下げる。

 最高神である女神達でも使える力に上限があり、

 それ以上の力を使うには神器である時のタクトを使用しないと無理なのだ。

 タクトには神力(しんりょく )を溜める機能があり、自分の力以上の術を行使するときにタクトに貯めた力を使用するのだ。

 カンストした優奈達を元に戻すのにはさすがにタクトの力が必要になる。

 

 「確実に最下層の宝箱の中にあるのなら、私が直接箱を開けに行ってもいいけどあるかどうか怪しいわねぇ……」

 「幸いなのは誰も入ってないダンジョンと言うことです。

 誰かが入ってうっかり時のタクトを持っていかれてしまった場合困りますので」

 

 それは困るというレベルを超えているのでは?と優奈は思ったが口には出さないでおいた。

 

 「とりあえず件のダンジョンの入り口を封鎖しましょう」

 「待ってくださいレイファール様、ダンジョンコアに返還を要請すればいいのでは?」

 

 ノルンの言葉にレイファールがぽんと手を打つ。

 

 「そういえばダンジョンコアが居ましたね」

 「ダンジョンにコアが……?」

 

 優奈の疑問にレイファールが答えた。

 

 「ダンジョンは周囲の瘴気を調整するために、一定以上の瘴気が溜まっている所に出現するようになっているのです。

 人の街があると出現しやすくなりますね、街には瘴気が溜まりやすいですから。

 発生したダンジョンを管理するために、ダンジョンにはコアがあります。

 入った瞬間にドラゴンがいて殺されたとかだと誰も来ませんからね。

 各階層の敵の強さや内装、戦利品などをコアが管理して人が来るようにしているのです。

 ダンジョンは周りの瘴気を集めてしまいますから、放っておくと魔物が溢れてしまうのです」

 「レイファール様そのコアはすぐに呼び出せるのですか? ダンジョンの奥深くに行かないとダメとかはないのでしょうか」

 

 優奈が元の世界で読んでいた本では、ダンジョンコアはダンジョンの奥深くにあったりするからだ。

 

 「ダンジョンコアはダンジョンにだれか入ればわかりますので、入り口で呼びかければ大丈夫です。

 今回は私がここに直接呼び出します。あと私の名前はレイファールです」

 

 さすがに優奈も名前は知っている、聖剣の名前だからだ。

 創造神を名前で直接呼ぶのはちょっと優奈が困っていると。

 

 「レイファールです。いえ、レイファールでは長いですねレイでいいです」

 

 なぜか愛称で呼べとさらに難題をつきつけてくるレイファール。

 愛称とか無理です無理ですと優奈は心の中で拒否をする。

 

 「貴方にはガイアがとても迷惑をかけています、なので気にせずレイと」

 

 それとこれとは違いますからって思ったところで優奈は気づいた。

 先程から自分は一度もしゃべってないと。

 

 「ユウナちゃん諦めた方がいいわよ、こうなるとレイファール様しつこいし」

 「うむしつこいな」

 「しつこいわねぇ」

 「あなた達私はそんなにしつこくありません」

 「「「「いえ、頑固だししつこいです」」」

 

 心の中を読まれたことに気づきがっくりとする優奈。

 そして女神達のやり取りを見て思わず笑みがこぼれた。

 

 「あとね、私もアイリスって名前で呼んでね!ノルンとベルちゃんも名前で呼んでほしいよね?」

 「ええ、私もノルンと」

 「私もベルでいい」

 「わかりました、ではレイ様 アイリス様 ノルン様 ベル様で」

 

 優奈は苦笑いしつつ女神たちの要望に応えた。

 このまま拒否しても延々とループするだけのような気がしたからだ。

 

 「では、話も纏まったことですしダンジョンコアを呼び出しましょう」

 

 レイファールがそういうと、テーブルの上に人形サイズの幼女が現れた。

 青い髪に青い瞳でとても可愛らしい。

 

 「初めましてダンジョンコア、さっそくで申し訳ないのですが時のタクトを返却して頂けますか」

 「いや!!」

 

 コアというくらいなので、丸い玉が出てくると思っていた優奈はまさの幼女出現にびっくりする。

 しかもレイファールの要請を拒否するとか幼女なのにすごい度胸だなと変なところで感心する。

 

 「お願いします、それはとても大事な物なのです」

 「いやいや、これを使って人を集めるの! もう一人はいやなの! ダンジョンにすぐ人が一杯くるから寂しくないよって、先輩に聞いてたのに誰も来ないの……」

 

 泣き出すダンジョンコアに優奈は同情した。

 誰も来ないダンジョン。いるのは魔物だけとか寂しいに違いない。

 抱っこして慰めてあげたいと思ったところ気づく、まだ魔王を抱いていることに。

 そして隣にいるライムにそっと魔王を押し付けた。

 

 「では、代わりのアイテムを差し上げますのでそれでどうですか?」

 「他のダンジョンにない目玉が欲しいの、人がいっぱい来るような物が・・・」

 

 いつの間にか時のタクトらしきものをぎゅっと抱え込んでるダンジョンコア。

 もう優奈はダンジョンコアにめろめろだ。

 

 「困りましたね、このダンジョンコアだけ特別扱いすると他のコア達にしめしがつきませんし」

 「ダンジョンコアちゃん、それを返して貰わないとダンジョンが封鎖されちゃうので誰もこなくなっちゃうよ?」

 

 優しくダンジョンコアに語り掛ける優奈。

 タクトを抱きしめたまま俯いてるダンジョンコアをみて、どうしてもタクトを手放したくないと感じた。

 

 「レイ様、時のタクトはすぐに戻らないと支障がでますか?」

 「いいえ、あなた達のレベルが戻せないくらいですぐに支障が出るとかはありません」

 「わかりました」

 

 優奈はもう一度ダンジョンコアに向き合い、優しく語りかけた。

 

 「あのね、今すぐは無理だけど私のレベルが上がったらダンジョンの魔物を間引いて沢山人が来れるようにしてあげる。

 そうしたらその時のタクトを返してくれるかな?

 もちろん宝箱とかに入れないで、大事に持っててね」

 「お姉さんが私のマスターになってくれるなら大事にする……」

 

 マスターって何だろう。と首を傾げる優奈にレイファールが説明をする。

 

 「ダンジョンマスターのことですね、コアと契約してそのダンジョンの主になることができます。

 この世界のコアは自然発生したダンジョンに配置されますので、マスターはいないです。

 他の世界だとダンジョンマスターにコアを与えて、マスターがダンジョンを作るのですが」

 「特にデメリットとかありますか?」

 「他のコアと契約できないくらいでしょうか?」

 「わかりました、コアちゃん私でよければあなたのマスターになるわ」

 

 ダンジョンコアが極上の笑みを浮かべて優奈に飛びついてきた。

 ダンジョンコアの頭を撫でながら優奈はとても幸せそうだ。

 しばらくそうして撫でていると、優奈の足元に白い円が出現し円から伸びてきた光が優奈をスキャンし始めた。

 

 「勇者橘優奈をマスターに設定しました! マスターこれからよろしく!」

 「コアちゃん、あなたに名前はある?」

 「ないの! マスター付けて付けて!」

 

 優奈の膝の上でぴょんぴょん跳ねる、ダンジョンコア。

 突然の名づけに悩む優奈、そういえば昔飼っていた猫に似ているなと思った。

 

 「うーんそうね、ミイナとかどうかしら?

 昔私が飼っていた猫の名前なのだけど垂れ耳でとても可愛い子だったのよ」

 「ミイナ……ミイナ。うん、今日から私の名前はミイナ! マスター素敵な名前をありがとう」

 

 優奈の膝の上に座りミイナが胸にすりすりしてくる。

 ミイナの頭を撫でていると、ブルベルが重大なことを告げてきた。

 

 「ところでユウナ、レベルをあげてしまうとたぶん元のレベルに戻せなくなるけどいいかしら?

 自力でレベルを戻してもらうことになるわ……」

 「レベルをあげてしまうと、あげたレベルを一度下げてさらにそこから元のレベルへ戻さなければなりません。

 貴方は一度強い時の力をその体に受けていますので、あと1度ならともかく続けて2度になると体が持ちません。

 最低でも数年は間を開けなければ」

 

 元のレベルに戻れないと聞き少し悩む優奈、だがすぐに吹っ切る。

 レベルは頑張れば元に戻せる、それにミイナと約束したからだダンジョンに人を一杯呼んであげると。

 

 「ミイナと約束しましたから、ダンジョンに人を一杯呼んであげるって。

 大丈夫です、私に寿命はないのでいつかはレベルは元に戻ります」

 

 そう言って微笑む優奈に、「貴方は優しい娘ですね」とレイファールも微笑みながら言った。

魔王「ユウナの胸にすりすりだと! ダンジョンコア今すぐ場所を変わるんだ!」

ミイナ「だが断る!」

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