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37.ダンジョンデート 和人編


 次の日今度は和人と二人で狩りに出かける優奈。

 昨日と同じように魔法でさくさくとトレントを倒していく。

 ただし今度は和人に魔法のレクチャーをしながらだ。

 

 「トレントのように木の魔物は雷の魔法で倒すといいわよ」

 「火だと危ないからですか」

 「そうそう、トレントは森にいることが多いから火を使うと森林火災がおきちゃうのよ」

 

 半分ほど倒したところで休憩しようとしたが、さすがに昨日と同じ場所は気恥ずかしいのか滝からかなり離れた所を休憩場所にする優奈。

 川辺にレジャーシートをひいてそこに座る。

 座ってからしばらくして優奈が和人に話しかける。

 

 「あのね、和人さん聞きたいことがあるのだけど……」

 

 言いにくいのか口ごもる優奈。

 それを見て昨日の事かなと推測する和人、夕べいつもの男同士の話し合いでライルからついに優奈と恋人同士になったことを聞いたのだ。

 しかし優奈が話したのは和人の予想とだいぶかけ離れたものだった。

 

 「えっと……、和人さんはなんで私の写真を撮ったり撮影したりするの?」

 「優奈さんが好きだからです」

 

 優奈をまっすぐに見つめ即答する和人に優奈の方が恥ずかしくなってしまい顔が赤くなる。

 

 「それも理由の一つですけど、最初に写真を撮ろうと思ったのは優奈さんの笑顔が可愛かったからですよ」

 

 和人がアイテムボックスからアルバムを取り出し優奈に見せる。

 そこには魅力的に笑う沢山の優奈の写真があった。

 

 「すごい、これ全部私なの……」

 「ライルさんから聞きました、優奈さんはこの世界に残ることになってから変わってしまったと。

 あまり笑わなくなってしまったと、でも私が来てから優奈さんはよく笑い感情を変化させるようになったと」

 

 そしてアルバムのページをめくっていく、あるページでめくるのをやめると一枚の写真を優奈に指示した。

 その写真の優奈は今が楽しくて仕方ないと言う笑顔を浮かべていた。

 

 「それを聞いてすごい嬉しかったです、自分が優奈さんの笑顔を取り戻すきっかけになったことが。

 そこからですね、優奈さんの笑顔を全部残したいと思うようになったんです。

 実際には全部は無理ですけど、自分が可愛いと思ったのはかなり残せてると思いますよ」

 「そ、そんなに可愛くないと思うのだけど……」

 

 思わず噛んでしまった優奈にくすっと笑うと、アルバムをしまいさらに優奈を動揺させることを言う。

 

 「顔を真っ赤にさせてる今の優奈さんもとても可愛いですよ」

 

 和人の褒め殺しに、そういうことを言われ慣れない優奈はさらに顔を真っ赤にさせ何も言えなくなってしまう。

 和人は優奈の横に座りなおすと、耳元でそっと囁く。

 

 「優奈さんそんなに可愛いと食べちゃいますよ?」

 

 その言葉に優奈の思考がとまり頭がオーバーヒートしそうになる。

 そんな優奈をみて和人は優奈の首筋に指を這わせる。

 突然首を撫でられ「ひゃっ」と可愛い声をあげて俯いていた顔をあげる優奈。

 その瞬間和人が優奈に口づける、そしてそのまま優奈を押し倒してしまった。

 

 男の人に押し倒されキスをされている事実に優奈はパニックになる。

 しかし和人はすぐに口を離すと謝罪した。

 

 「すみません……、無理やりするつもりはなかったのですが体が勝手に動いて……。

 昨日の夜ライルさんから話を聞かされ焦ってしまったみたいです。

 指輪を出してもう一度プロポーズしようと思ってたのに……」

 

 頭を地面にぶつけ激しく後悔する和人、優奈には優しくしようと思っていたのに顔を真っ赤にして恥ずかしがってる優奈をみたら勝手に体が動いていたのだ。

 食べちゃいますよから無意識の行動だったりする。

 そんな和人の様子に優奈もだんだん冷静になっていく。

 

 「和人さんそのそろそろどいてもらえると」

 「柔らかくていい匂いがするので、離し難いです」

 「でもここ魔物がいますし、すぐ動けないのはちょっと……」

 「安全な場所ならまた抱きしめてもいいですか?」

 「そういうのは恋人同士じゃないとちょっと……」

 

 優奈のその言葉にはっとして和人が飛び起きる。

 突然飛び起きた和人に目を丸くする優奈、そして慌てて自分も起き上がった。

 優奈が起き上がったのを確認すると和人は両膝を付き優奈に小箱を差し出した。

 

 「これは?」

 「開けてみてください」

 

 和人の言葉に小箱を受け取り箱を開けるとそこには花がデザインされた銀色の指輪が収まっていた。

 

 「可愛い指輪ね」

 「優奈さん前に私がプロポーズしたのを覚えていますか」

 「世界樹の結婚式の時よね」

 「そうです、あの時は勢いでプロポーズしてしまったのですが今度はちゃんと言わせて下さい」

 

 そして優奈をまっすぐに見つめ、言葉を紡ぐ。

 

 「優奈さん愛しています、結婚して下さい」

 

 和人のプロポーズに少し悩んでから優奈は返事をした。

 

 「和人さんライルから聞いたのよね? 私には恋人がいるけどいいの?」

 「相手がライルさんなら構いません、3人で幸せになりましょう」

 「ライルと同じことを言うのね、そのまだ結婚は早いと思うのだけど」

 「では結婚を前提に付き合って頂けますか」

 

 その言葉に優奈はくすりと笑うと、全開の笑顔で和人に答える。

 

 「私でよければ喜んで」

 

 昨日のライルの話から和人にも告白されるだろうなと思った優奈は一晩じっくりと考えたのだ。恋人を二人持つことについて。

 そして和人も好きだしライルも好きだしどちらかを選ぶことは出来ないという結論に至った。

 どちらか一方を選ばなければいけないのなら、どちらも選ばなかった。

 でも二人は両方選んでもいいと言うのだ、だったら自分の気持ちに正直になって二人とも選んでしまおうと思った。

 

 優奈から指輪を受け取り、和人は優奈の薬指に指輪をはめる。

 

 「ありがとう和人さん」

 「私とライルさんも指輪をしようと思うのですが、優奈さんあとで選んでもらえますか?」

 「じゃぁ私と同じお花のデザインの可愛いやつを……」

 「それはやめてください!」

 

 先程押し倒された意趣返しに意地悪を言う優奈に和人が悲鳴をあげた。

 

 

 昼食を食べた後に指輪を選ぶ二人、結局シンプルな銀の指輪に落ち着いたようだ。

 

 「やっぱり和人さんのはお花の可愛い……」

 「押し倒したのは謝りますのでやめてください……」

 

 困り顔の和人を見てくすくすと笑う優奈。

 

 「地上に戻ったら指輪加工していいかしら、指輪の持ち主同士で念話が出来るようにと何か異常が起きた時に自動的に二人に信号を送れるようにしたいのだけど」

 「もちろん構いませんよ、じゃぁライルさんには加工が終わってから渡しましょうか」

 

 その後結局残りのトレントを狩らずに川辺でひたすらおしゃべりに花を咲かす二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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