4.水晶花
今日はもう1話投稿予定です。
22時前後には投稿できると思います。
色とりどりの花が咲き乱れる森の中の広場、広場の中央には大きな水晶の花が輝いていた。
どこかで見たような景色だと思いながら優奈が水晶に近寄ると、中に銀の髪の美しい女性が閉じ込められていた。
周囲を見渡すと地面に違和感を感じた、この感じは近くにダンジョンがある?そう思ったが、先に目の前の女性を救出しなければと聖剣に手をかけ創造神に問いかけた。
「創造神様、聖剣で壊してもよろしいですか?」
「いえ、聖剣ではその水晶は壊せません。私を呼び出したことにより力の大部分を失っています。
力の方はあとで戻してあげましょう」
創造神様の言葉に優奈は歓喜した、聖剣の力を戻してもらえるとは思わなかったのだ。
もう二度とこの剣は使えないのだと思った、力がなければただのよく斬れる剣だからだ。
200年も一緒に戦ってきたのだ今更他の剣は使いたくない、聖剣を胸に抱きその柄に頬を寄せる。
「これは、水晶花ですか。でもこんな大きな水晶花は初めて見ました」
「突然変異なのでしょう、それにしてもベルちゃんなんで水晶花に捕まってるのかしら」
ライムの言葉に豊穣の女神がそう言い首を傾げた。
水晶花とは魔界に咲く花で、魔界でも特に珍しい。
すべてが水晶でできており、触れた獲物を花弁を閉じて閉じ込めてしまう。
一度閉じると二度と開かず、捕らえた獲物をそのままの姿でずっと閉じ込めているので蝶などが閉じ込められた水晶花はとてつもない値段で売買されている。
「うーん、それにしても最高神であるベルが突然変異とはいえ脱出出来ないのはおかしいですね」
運命の女神が頬に手をあてそう言うと。
「なぜ水晶花に捕まっているのかはわかりませんが、返事もできなかったのはこれのせいみたいですね。
とりあえず、ブルベルを出してあげましょう。私なら水晶花の花弁を開くことができるでしょう」
創造神が水晶花に触れると開かないはずの花弁が開き、よろよろと時の女神様が中から出てきた。
「レイファール様ありがとうございます……」
豊穣の女神様が時の女神様を支えながら、ベルちゃん相変わらずどじっ娘ねぇと言ってるのが聞こえた。
「詳しい話を聞きたいですが、まずその水晶花は危ないので何とかしましょう。
どうやら女神の力を吸い取る事が出来るようです。ガイアこちらへ来なさい」
何かを察したのか青い顔をしたガイアがずりずりと後ろに下がっていく。
「逃げても無駄です」
創造神様がパチンと指を鳴らすと、ガイアの姿が消え次の瞬間水晶花の中に移動していた。
獲物を見つけた水晶花はものすごい速度で花弁を閉じ、あっという間にガイアは水晶の花に飲み込まれた。
そして水晶花ごとガイアは目の前から消えてしまった。
「勇者よ、ガイアは水晶花に閉じ込めたまま神界に移動させました。
今後音は聞こえるけど動けないままずっと神界で他の女神の眼に晒されます。
これをもって処罰とさせて頂きたいのですが、許していただけますか」
「私が想像していたのよりずっと厳しい罰です。これで十分です」
そう言うと優奈は創造神に頭を下げた。
「ありがとう、勇者。
ではブルベルも救出したことですし、元の場所に戻りましょう」
創造神がそう言うと景色が変わり、魔王城の一室に全員戻っていた。




