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28.けもみみ総選挙一日目

ブックマーク・評価本当にありがとうございます!

とても励みになります!


 『これより、けもみみ総選挙を開催します!!』

 

 段々と日差しがきつくなり、薄着の女性が増えてきた夏のある日タチバナの街の広場に優奈の執事長グレンの声が響いた。

 汗ばむような陽気にもかかわらず、黒い執事服を着こなし風魔法を使った拡声器の魔道具を手に喜々として進行をしている。

 拡声器は優奈が手を加えマイク型になっている。

 

 グレンの開会宣言に広場中の人々が大きな歓声をあげた。

 年に一回のこのお祭りを街の人々は楽しみにしていたのだ。

 一日目は予選で二日目が本戦になる。さらに今回は三日目にシークレットコンテストがあると聞き皆の期待は否応もなしに盛り上がる。

 

 ちなみにタチバナの街の住民と冒険者は無料で投票が出来る。

 これは二重投票などの不正の監視が楽だからだ、どうしても投票したい観光客はお金を払って投票券を購入しないといけない。

 購入しても投票は一人一回までだ、投票用紙購入時にちょっとした仕掛けをするので二重投票しても弾かれてしまう。

 観光客に無料で投票用紙を配らないのは、数が膨大になり集計が面倒になるからだ。

 

 『本年も無事にけもみみ総選挙を開催出来ました!

 今年はシークレットコンテストもありますので、全力楽しんでくださいねー!』

 

 舞台で挨拶する優奈の言葉にまたもや観客席から大きな歓声があがる。

 

 『それでは男性部門予選を開始します!』

 『まずは、エントリーナンバー1番! 冒険者のライチさんです!』

 

 広場に設置された舞台に虎の耳と尻尾を付けた筋骨隆々の男性が上がってくる。

 男性はビキニパンツのみを履き、筋肉を惜しげもなく晒している。

 そしてT字になった舞台を歩き、観客の前でポーズを取りまた舞台袖へ下がっていく。

 

 『素晴らしい筋肉に虎の耳と尻尾がよく似合っていましたね!

 現在彼女募集中らしいです、あの筋肉に抱きしめられたい!って女性がいたらぜひお付き合いを申し込んでみたらどうでしょうか!』

 

 グレンの言葉に会場からどっと笑い声がおこる。

 次々と参加者が舞台に上がっていく、そのたびに会場の笑いを取るグレン。

 けもみみ総選挙はグレンの話術も人気の一つだ。

 

 ちなみにグレンは白い垂れ耳と猫の尻尾を付けている。

 白い垂れ耳はけもみみ総選挙の実行委員のトレードマークなので、白垂れ耳を使う参加者はいない。

 装備してると実行委員と間違われて大変な目にあうからだ。

 

 

 

 「ふわぁ、すごい人出だね。あ、ゆなちゃんあれ美味しそう!」

 

 きょろきょろと周りを見渡し楽しそうに優奈の袖を引っ張る雪菜。

 もちろん奏も一緒だ。

 

 「雪菜あんまりはしゃいでると迷子になっちゃうわよ」

 「そうそうゆきちゃんは方向音痴なんだから、絶対に優奈の袖を離さないようにね」

 

 優奈と奏両方に窘められぷーと頬を膨らます雪菜。

 

 「で、あれが食べたいの?」

 

 優奈は屋台に近づくと3人分購入し雪菜と奏に手渡す。

 それは日本の焼きもろこしによく似ていた。

 

 「「美味しい!」」

 

 一口かじり雪菜と奏が声を揃えて絶賛する。

 味も焼きもろこしに似ているが、甘さがすごい瑞々しいのだ。

 とても甘いのにすっきりとした甘さで二人とも夢中で食べ始める。

 そんな二人を嬉しそうに見つめながら優奈も食べ始める。

 

 総選挙中は街中いたるところに屋台が出ている。

 値段もいつもより安くなり、掘り出し物があったりするので冒険者もこの日に張り切って買い物をする。

 この日の為に貯金する冒険者もいるほどだ。

 

 3人は中央の舞台を避け、掘り出し物を探しにギルド通りへ足をのばした。

 ギルド通りも買い物客で賑わい人にぶつからずに歩くのは至難の業だ。

 

 「危ないから私から絶対にはぐれないでね」

 「「はーい」」

 

 優奈の服の裾を握り人ごみをぬって移動する三人。

 店を冷やかしながら移動をしていると雪菜がとある店の前で足を止めた。

 そこは魔道具を扱う店で、店内のショーケースに魔道具が陳列されていた。

 

 「そういえば雪菜は魔道具に興味があるんだっけ」」

 「うん、魔道具って面白いよね。日本にある機械を魔道具で作れないかなって思ってるんだ」

 「冷蔵庫とかコンロとかあると便利よね」

 「こっちの世界にはないの?」

 「あるんだけど使い勝手が悪いのよね、もうちょっと使いやすいといいのだけど」

 

 そんな話をしながら店内を歩いていると、奏が一つのポスターを見つけた。

 それは魔道具ギルドのギルド員募集のポスターだった。

 

 「ゆな、あの魔道具ギルドって?」

 「あ、魔道具作成の基礎を教えてくれる学校みたいな所かな?

 他にも裁縫ギルドとかいろいろあるわよ」

 「ゆなちゃん私魔道具ギルドに入りたい!」

 

 目をキラキラさせてポスターを見つめる雪菜。

 二つ返事で了承する優奈、この世界でやりたいことを見つけた雪菜を嬉しく思うのだった。

 

 

 

 そのころ和人とライルは男二人で街を巡っていた。

 昨日の夜優奈を誘いに行ったらすでに雪菜達の先約が入っていたのだ。

 ブルベルも用があるとかで神界に戻ってしまい、仕方なく男二人で祭りに参加している。

 

 「なぁ、なんで男二人で祭り見てきてるんだ」

 「この世界の祭りは初めてなのでどうしても見てみたかったんです。

 あと優奈さんへのプレゼントを探しに」

 「プレゼント?」

 「まだ先ですけど、誕生日プレゼントを今のうちに探しておきたいなと。

 祭りの日は掘り出し物があると聞いたので」

 

 それを聞き、まだこの世界の事をあまりしらない和人の為にプレゼント探しを手伝ってあげるライル。

 雪菜と奏という強力な障害が立ちふさがったことにより、ライバルというより友人みたいな関係になりつつある二人の姿がそこにあった。


 


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