27.悪い虫は退治します!
次の日優奈の屋敷の食堂に和人・ライル・ブルベルそしてリリアとミイナが集合した。
神殿に泊まった優奈より、会わせたい人がいるので集まる様にと伝達があったのだ。
会わせたい人についてブルベル以外が推測をしていると扉が開き優奈が入って来た。
その後ろには雪菜と奏がいる。
しかし、全員雪菜が部屋に入って来た瞬間目を見張った。
「ユウナ様が二人います!」
「ユウナが分裂した!!」
16歳に戻る以前の優奈の姿を知っているライルとリリアが驚いて声をあげる。
優奈はカツカツとライルに近づきその頭に拳骨を落とす。
軽く手加減をしたが、ゴン!といい音がしてライルが椅子から転げ落ち頭を抱えてゴロゴロと床を転がる。
「ねぇ、ライルは馬鹿なの? 分裂するわけがないでしょう」
ライルの言葉に反応した雪菜と奏が床を転がっているライルを見つめる。
そして痛みが治まったのか立ち上がって椅子に座りなおしたライルを見てため息を漏らした。
艶のある黒髪に無駄に自信に満ち溢れた黒い瞳、見るものを引き付けるその美貌。
威厳に満ち溢れたその姿はまさしく魔王としか言いようがなかった。
優奈は雪菜と奏がライルに視線が釘付けになってるのを見て、またもやライルの頭を殴りつけた。
今度はあまり手加減せずにだ。
痛みのあまり声も出さずに椅子に蹲るライル、その姿をみて雪菜が優奈を窘める。
「ゆなちゃんさっきから何してるの! 人様を殴っちゃダメでしょう」
「ライルが馬鹿だからよ、無駄に恰好付けて!」
全員の視線が優奈に集まる、優奈は気づいていないが女性の視線を集めるライルに嫉妬しているのだ。
「あのユウナ様、とりあえずご紹介して頂けると助かるのですが」
このまま放っておくとまずいと判断したリリアが優奈を促す。
「あ、ごめんなさい。まず皆に紹介するわね。
私の横にいる私そっくりの女性は私の双子の姉の雪菜、その後ろにいるのは私の親友の紗倉奏よ。
馬鹿な女神のせいでこちらに召喚されてしまったのだけど、二人ともこの世界に残りたいと言うので皆よろしくね」
「ご紹介にあずかりました橘雪菜と申します、魔道具に興味がありますので魔道具の開発などをしてみたいと思っています。
皆さまよろしくお願いします」
丁寧な挨拶とお辞儀をする雪菜を見てリリアが思わず声をあげる。
「ユウナ様のお姉さまと思えないくらいとてもお淑やかな方ですね」
「リ~リ~ア~!」
「あ、すみません口が滑りました」
しれっとした顔で謝るリリア、悪いとはこれっぽちも思っていない。
「あとで山ほど仕事押し付けてやる」
ぼそっと呟く優奈の言葉に抗議をするリリア、「自業自得だよね」と言っている和人とブルベルの声が聞こえる。
「ゆな、違った優奈の親友の紗倉奏です。ゆなに付く悪い虫は全部退治しますので覚悟してくださいね」
にこっと微笑み、ライルと和人を順番に見ていく奏。
その笑みにライルと和人はぶるっと震える。
「それじゃ皆も自己紹介してくれる?」
リリア達に優奈は自己紹介を促す。
まずリリアが椅子から立ち上がる。
「ユウナ様の補佐官をしております、リリアと申します。よろしくお願い致します。
最近ユウナ様が仕事をさぼってどこかに行ってしまうので困っています」
身だしなみを整えライルが立ち上がる。
「魔族の王ライルだ、ユウナを諦める気はない」
それだけ言うとまた椅子に座りなおしてしまう。
次に和人が立ち上がった。
「相馬和人です、優奈さんにはすでにプロポーズ済みです。私も諦めませんので」
ふんわりと見るものを癒すそんな笑顔を浮かべお辞儀をすると椅子に座る。
最後にブルベルが立ち上がった。
「最後は私ね、この世界の最高神時の女神ブルベルよ。今は女神になったユウナの指導役として人界に降りているわ」
洗練された動きでお辞儀をし、椅子に座りなおすブルベル。
「最後は私なのー! マスターユウナのダンジョンコアのミイナなの」
ブルベルの膝の上でびょんびょん跳ねて自己紹介をするミイナ。
その愛らしさに雪菜と奏も顔を綻ばせる。
その夜雪菜と奏の歓迎会が開かれ、夜遅くまで屋敷に優奈の笑い声が絶えなかった。




