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26.邂逅

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 神殿の和人も通された部屋のソファーに二人の女性が座っている。

 目の前には紅茶が置かれているが手を付けていない、優奈が来ると知らされそわそわとしている。

 そしてバタバタと誰かが走ってくる音が聞こえ、バンと扉が開け放された。

 びっくりして開いた扉を見つめる二人の女性。

 扉を開けた人物は部屋の中にいる女性の顔を見つめると、その女性に向かって飛びついた。

 

 「雪菜! 雪菜! 本物? ねぇ本物?」

 「優奈? 本物のゆなちゃん?」

 「昔雪菜は私に告白してきた男の子を田んぼにつきお」

 「ストップ! わかった本物のゆなちゃんだね! だからそれ以上私の黒歴史をばらすのはやめようか」

 

 ひしっと抱き合う二人の姉妹。

 そしてもう一人の女性が優奈に質問を投げかける。

 

 「ゆなはなんで若いの? 行方不明になった時くらいの姿だよねそれ」

 

 雪菜から顔を離し話しかけてきた女性を見て驚く優奈。

 そこにいたのは自分の親友だったからだ、一緒に召喚されたというから両親かもと思っていたのだ。

 

 「奏じゃないの、老けた?」

 「ちょっと200年ぶりにあった親友にかける言葉がそれなの!」

 「200年って私の物語読んだの?」

 「うん、全部読ませて貰った。ゆな頑張ったわね」

 

 その言葉に色々な思いがこみ上げ、ボロボロと涙を流す優奈。

 そんな優奈を抱きしめ背中を撫でてあげる雪菜。

 

 「ゆなちゃんよく聞いて、私はゆなちゃんが行方不明になってから7年後の世界から来たの。

 お父さんとお母さんはずっとゆなちゃんを探してた、そして日に日に憔悴していって先日亡くなったわ」

 

 びくっと肩を震わす優奈。

 

 「わたし、わたしのせいで……」

 「違う! ゆなちゃんのせいじゃない、悪いのはこの世界にゆなちゃんを呼んだ女神よ。

 だからゆなちゃんが責任を感じることはないの」

 「そうよ! ゆなに告白した魔王ってやつも悪いわね。告白さえしなければゆなは元の世界に戻れたのだから」

 

 奏のその言葉に雪菜の肩に顔を埋めてた優奈は顔をあげて反論する。

 

 「違うの、ライルは悪くないわ!」

 「ふぅ~ん、ゆなはその魔王が好きなんだ?」

 「ちがっ、好きじゃないし!」

 

 顔を真っ赤にして反論する優奈、反論すればするほど雪菜と奏は確信を深めていく。

 そして声を揃えて一言。

 

 「「私は認めないからね!」」

 

 シスコン雪菜と小さな頃から習い事ばかりで友達の作り方がわからなかった奏、

 高校に入ったばかりの頃一人でぽつんとしていたら優奈に声をかけてもらえ人生初の友達になった優奈。

 奏にとって優奈は世界の中心なのだ。

 この二人が優奈に悪い虫がつくのを認めるはずがなかった……。

 和人とライルの前途は多難である。

 

 「ゆなちゃん、私この世界に残るからね」

 「私も残るからね!」

 「ダメよ! まぁ雪菜はお父さんとお母さんが居ないなら別にいいのかな?

 でも奏はちゃんとご両親がいるでしょ。ご両親を悲しませることだけはダメ!」

 「優奈も知ってるでしょ、私の両親は子供に興味がないって。

 お金をかければいいと思ってるだけなのよ、習い事をさせても忙しいの一言で発表会にもこない。

 食事だって一緒にしたことないわ、それに家の為になるからって勝手に結婚まで決めてきたのよ。

 しかも相手は40代のおじさんよ、私まだ23なのよ。なんであんな親父に嫁がないといけないのよ!」

 

 立ち上がり拳を突き上げて怒り出す奏に優奈は笑い出す。

 

 「奏は変わらないわねぇ。本当にいいの? 数年までなら帰れるけどそれ以降はもう戻れないよ」

 「いいわよ、両親に愛情なんてないし。私は世界で一番優奈が大事、優奈以外なにもいらない」

 「はぁ、奏もいつか恋をして私離れをしようね?」

 「ずぇぇたいに嫌」

 

 

 その日三人は神殿に一室を借り泊まることにした。

 優奈の屋敷に帰ると落ち着いて話が出来ないと思ったからだ。

 ベッドに川の字になって横になる三人。

 優奈は召喚されてからの物語を二人に語る、辛く苦しい旅。

 旅が終わって街を作っても、自分を慕う人が沢山いても苦しかったし孤独だった事。

 だけど和人が来てから自分が少しずつ変わり始めた事。

 この世界で生きていくのが楽しくなった事。

 夜が明けるまでずっとずっと話し込んだ。

 そして雪菜と奏の二人は心の片隅にメモをする。

 

 『要注意人物:相馬和人』

 

 頑張れ和人! 大きな障害がやってきたぞ!

 

 

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