3.創造神降臨
「なぜ……」
呆然と姿見を見つめていると、どこからか笑い声が聞こえてきた。
とても感にさわる声だ。
「あはははは!! まさか魔王まで食べちゃうなんて、いいわねあなた達面白いわ」
突如部屋に光が集まり一人の女神が姿を現した。
面白くて仕方ないって顔をしながら部屋を眺めている。
見た目は15歳くらい金の髪を縦にロールさせ、人を小馬鹿にしたような顔をしている。
この女神は優奈を送還するという約束を破り、そして不老不死にした元凶である女神ガイアだ。
暇だからという理由でなにかと優奈にちょっかいをかけてくる。
この世界を導き守護する役割を持っているため、手を出すわけにはいかないし厄介なことこの上ない。
「どういうことが答えなさい! 女神ガイア!!」
痛いくらいに剣の柄を握りしめながら優奈は女神を問い詰める。
怒りで魔力が膨れ上がり、服の裾がはためいている。
「うふふ、そこのね魔族の娘に勇者の世界のお菓子を手に入れたので今までのお詫びに渡したいけど、私からの贈り物なんて拒否されるから貴方が用意したってことにして渡してくれないと言っただけよ」
自分の迂闊さを優奈は呪った、最近ちょっかいをかけてこなかったので油断していたのだ。
普通のクッキーに見えた時点でライムに確認をしておくべきだったのだ。
「で、そのお菓子に何をしたのかしら! 魔王が子供に私が召喚時の姿に戻ってるんだけど」
「時の秘薬を入れただけよ、Lvを1に戻すためのものだったのだけどまさか姿までかわるなんてねぇ」
優奈は慌てて冒険者カードを確認するとLv999でカンストしていたのがLv1に戻っていた……。
世界を救うために必死であげたレベルが……、あまりの事に優奈は床に崩れ落ちた。
「勇者はぁ、私を殺したくて仕方ないって感じだったから私怖くてぇ。思わずLv1に戻しちゃったぁ」
くすくすと笑いながら思ってないことをガイアが言い放った。
許さない許さない許さない!優奈の怒気が膨らみそれに呼応するかのように聖剣が輝いていく。
「あと、勇者がLv1だといろいろ不都合が出ると思うから、ちゃーんと従者も用意しておいたわよ。
私ってなんて優しいのかしらぁ」
くすくすと笑いながら、ガイアは面白くて仕方ないとう顔をした。
「あなたがこの世界を守護する女神だからって我慢してたけどもう我慢も限界だわ!」
「へぇ……、どうするの? 私を斬るの? Lv1で女神である私に勝てるとでも思ってるのかしらぁ」
「斬る必要なんてないわ、創造神レイファール様にあなたを裁いてもらうわ」
「あははははは、面白い冗談ね。一介の人間に創造神様がお会いになられるわけがないじゃないの!
この私でさえお会いしたことがないのに!」
ガイアを斬る必要はない、聖剣の力を使えばいいだけだ。
ただそれをすると聖剣の力を使い果たしてしまうので今まで優奈は使わなかっただけ。
ガイアはいろいろ邪魔してきてうっとうしかったが、そこまでするほどの事じゃなかったからだ。
だがこれは許せる範疇を超えている、ガイアは調子にのりやり過ぎた。
優奈は聖剣を鞘ごと腰から抜き鞘を握りしめ女神に突きつける。
「この聖剣の名前を知ってる?」
「そんな剣の名前なんて知らないわ、聖剣とか言っちゃってるけどどうせドワーフあたりが造った剣でしょ」
「この聖剣の名前はレイファール。創造神レイファール様より下賜された聖剣よ」
「嘘よ! 創造神様が人間ごときに下賜されるわけがないでしょう!!」
「200年前世界の脅威が現れた時に、豊穣の女神様がお持ち下さったのよ。
この度のガイアの不始末に対してのお詫びの品だとね、そしてこの聖剣は一度だけ創造神様をお呼びすることができるそう説明頂いたわ」
優奈を見下していたガイアの顔が真っ青になりガタガタと震えだした。
聖剣からあふれ出る力を確認して優奈の言葉が嘘じゃないと悟ったのだろう。
聖剣からあふれ出る力は間違いなく、創造神レイファールの力だからだ。
優奈は聖剣を鞘から抜き天に向かって掲げる。
「聖剣レイファールよ! 私の声を創造神様へ届けよ! 人をおもちゃにして喜ぶ女神に罰を!!」
聖剣が青く光り天へ向かって光が伸びていく。
光は部屋を満たしそして一か所に収束していく。
聖剣の光が収まると部屋に白く輝く両開きの扉が現れた。
彫刻の施されたそれはそれは美しい扉だった。
扉が開かれ中から3人の女神が現れる。
向かって左が豊穣の女神様、そして右は運命の女神様。
そして真ん中は……。
「創造神様でいらっしゃいますか?」
乳白色の髪に金の瞳の女神に優奈は問いかける。
本来なら跪かなければいけないのだろうけど、女神ガイアへの怒りでそんなこと忘れてしまっていた。
「ええ、私が創造神レイファールよ。この部屋で何が起こったのか把握致しました。
勇者ユウナこの度はガイアが迷惑をかけてごめんなさい。
まさか時の秘薬を持ち出すとは思わなかったわ」
「守護すべき人間をおもちゃにして遊んでいたとは……」
豊穣の女神がガイアをものすごい睨んでいる。
豊穣の女神の視線を受けガイアが後ずさる、言い訳をしたいがガイアが何をしたのかすでに知られしまっている。
もう何を言っても無駄だった。
「創造神様にお願いがありお呼びさせて頂きました、女神ガイアを守護者の任から外し二度とこの世界に関わらせないで下さい」
怒りを抑えた声で創造神に優奈は願いを伝える。
創造神は一瞬驚いたような顔をし、その後優しく頷いた。
「ええもちろん守護者は別の者に任せましょう、そして女神ガイアにはしかるべき処罰を与えます。
世界の守護者である女神が人をおもちゃにして遊ぶとは言語道断です」
そして少し困ったような顔をして言葉を続けた。
「あと申し訳ないのですが、あなた達のレベルを戻せるのが時の女神だけなのですが現在彼女はこの下界にいるのです。
お手数をおかけしますが彼女の所まで一緒に来ていただけますか」
創造神様は3つの力を分け与え愛と豊穣の女神アイリス・運命の女神ノルン・時の女神ブルベル
最高神である3人の女神を誕生させた。
今でも3つの力は使えるが、3人の女神ほどの力は使えないのだ。
「どうやら時の女神は動けない状態にあるようですので、こちらから移動した方が早いのです」
最高神が動けなくなるような場所へ言っても大丈夫なのだろうかと、優奈が思案していると。
「それでは移動しますので、そのまま動かないでくださいね」
と、創造神の声が響き強制的に転移させられた。