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22.結婚式

 リンゴーン リンゴーン

 世界樹の神域に祝福の鐘が鳴り響く。

 世界樹の前に祭壇がおかれ、その前には赤い絨毯がまっすぐにひかれている。

 祭壇には司祭役の優奈と主役のリオン、そして絨毯の両脇には和人・ライル・ブルベル。

 そしてアイリスと今日のみ特別に神域に立ち入ることを許されたエルフ国王夫妻だ。

 

 エルフの国民にはすでに第2皇子であるリオンが世界樹の化身と恋をし、そのため世界樹の守り人となったことが告げられている。

 そして本日の結婚式をアイリスの計らいで王宮で、街の中心の大樹の所で中継されている。

 空に映し出される結婚式の様子を全国民が固唾を飲んで見守っていた。

 

 現在映し出されているのは司祭役の優奈とリオンだ。

 そんな優奈達を見てざわざわと騒ぎだす女性二人の姿があった。

 しかし周りのエルフに睨まれてすぐに黙り込む。

 一人の女性が近くのエルフの女性に話しかけた。

 

 「あ、あの今映し出されている女性はどなたでしょうか」

 「おや、あんたユウナ様を知らないのかい? ああ、見るのは初めてなのかい。

 彼女はこの世界を救った勇者ユウナ・タチバナ様さ! しかも今は女神なられてこの世界の守護者になっておられるんだよ。

 さすがは勇者様だよねぇ、女神なられちまうなんてさ」

 

 エルフの女性は尊敬と憧憬の入り混じった瞳で空の映像を見上げる。

 優奈の名前を聞き女性の顔色が変わる、そして答えてくれたエルフの女性に詰め寄った。

 

 「ゆうなたちばな……橘優奈! あ、あの優奈に会うにはどうしたらいいですか!」

 「ん、ユウナ様に会いたいのかい? この国からずっと北に行ったタチバナの街がユウナ様が治めている街だからそこに行けば会えるかもしれないけど」

 

 エルフの女性はそう言うと話しかけてきた女性とその後ろにいる一団の服装を見て驚く。

 

 「あんた達見慣れない服を着ているね、もしかして……異世界人かい?」

 「たぶんそうなんだと思います……」

 

 所在なさげに呟く女性をみて、エルフの女性は巡回していた兵士を呼び止める。

 その後二人の女性はエルフの国にある神殿へ連れて行かれこの世界のことを学ぶことになる。

 彼女たちが優奈に会えるのはもう少しあとのことだ……。

 

 

 

 

 

 「健やかなる時も、病める時も、慈しみ、世界が滅ぶその時まで愛を持って生涯支えあうことを誓いますか」

 

 優奈の言葉が静かな神域に響き渡る。

 

 「誓います」

 「はい、誓います」

 

 「では、誓いのキスを」

 

 リオンがベールを持ち上げユーフェミアにキスをする。

 ユーフェミアのウェディングドレスとリオンのタキシードは和人が創造した優奈達の世界の衣装だ。

 デジカメを渡さない和人に怒った優奈がスパルタで和人にスキル上げをさせ創らせた物だったりする。

 

 キスが終わると参列者から一斉に花びらが撒かれる。

 

 「「「おめでとう!!」」」

 

 祝福の言葉がかけられる。

 エルフ国王夫妻は目に涙を浮かべ息子の晴れ姿を見つめている。

 二度と会えないと言われたのに、神域まで呼んでくれ息子の結婚式をしてくれた優奈に二人は言葉では言い表せない程の感謝の気持ちで一杯だ。

 

 式が終わるとリオンとユーフェミアはアイリスが建ててくれた家に国王夫婦を招待した。

 木で出来た温かみのある家になっている。もちろん門番の家も別にある。

 

 ユーフェミア達が家に入ると優奈達は後片付けをはじめる。

 絨毯を一緒にくるくると巻いている和人にライルが質問をする。

 

 「なぁカズト、この間のプロポーズ本気か?」

 「まだそこまで考えてはなかったのですが、優奈さんが結婚式をしたいと言うのを聞いたら勝手に体が動いてました」

 

 そう言い苦笑する和人、優奈は好きだがまだ結婚とかは考えてなかったのだ。

 でも勝手に体が動き気づいたらプロポーズしていた。

 

 「不死を手に入れるまではプロポーズはしないつもりだったんですよ」

 「なぜ不死を?」

 

 巻き終わった絨毯を最高神と話し込んでいる優奈に手渡し二人は湖畔へ移動していく。

 優奈に聞かれていい話ではないからだ。

 

 「優奈さんが女神で寿命がないからです、もしプロポーズして優奈さんが受け入れてくれてもいつか私は死んでしまう。

 優奈さんを一人残してです、それは耐えられないです。二度と優奈さんを一人にはしたくないですから」

 「そうか、そうだな。なまじ自分の寿命が長いから優奈に寿命がないのを忘れていたな……。

 しかし、不死か……。俺でも手に入れられるかどうか手段もわからんな」

 

 湖を見つめ落ち込む男二人。

 現実的なのは神族になることだが、それも容易いことではない。

 

 (寿命をなくしたいですか?)

 

 「創造神!」

 「創造神様!?」

 

 いつものように突然話しかけてくるレイファール。

 今更そんなことに二人とも驚かないが、話しかけられた内容に驚いた。

 

 「なくせるならなくしたいな、そうすればずっとユウナの側に居れる」

 「私も同じ気持ちです」

 

 (健やかなる時も、病める時も、慈しみ、世界が滅ぶその時まで愛を持って生涯ユウナを支えることを誓えますか)

 

 それは先程優奈がユーフェミア達に言った言葉そのままだった。

 

 (ユウナは守護者です、これからきっと世界の脅威と戦った時と同じような困難に向かいあうことがあるでしょう。

 その時にユウナを支えてあげられますか? 私はユウナを気に入っています、あなた達が誓いそしてユウナがあなた達を選んだらその時は寿命をなくしてあげましょう)

 

 「誓う、決してユウナの側を離れない」

 「誓います、優奈さんを支えともに困難に立ち向かいます」

 

 (よろしいいいでしょう、その言葉違えないように。ユウナが誰を選ぶのか楽しみにしています)

 

 そして訪れる静寂。

 二人ははぁと息を吐きだす、知らず緊張をしていた。

 

 「簡単に解決してしまいましたね」

 「そうだな、それだけ創造神がユウナを気に入ってるってことなんだろうが」

 

 和人はライルと向き合い拳を突き出す。

 

 「優奈さんは渡しません」

 「ふ、俺も渡す気はない」

 

 そしてライルも拳を突き出しお互いの拳をぶつけ合う。

 男の熱い友情がなんか生まれていた……。

 

 

 

 神界 創造神の神殿。

 

 「ノルンいますか」

 「はい、ここに」

 

 すっとレイファールの側に現れるノルン。

 

 「先程時空のゆがみを観測しました、どうやらユウナの知り合いがこちらへ召喚されたようです。

 偶然開いたゲートに飲み込まれたのか、だれかの意図なのか調べて下さい」

 「はい、畏まりました」

 

 そして呼ばれ時と同じようにすっと消えていくノルン。

 後には人界を眺めるレイファールのみが残された。


ブックマーク・評価ありがとうございます!

少しずつ増えていくブックマークとても励みになります。


召喚されたのを一団から女性二人に修正しました。

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