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16.世界樹の危機


 タチバナの街から南へ行くと、エルフの国がある。

 都市の中心に大樹があり、大樹を囲むように街広がっておりさらにその街を囲むように森が広がっている。

 一年を通して温暖で近くに世界樹があるためかエルフの国近辺はとても清浄な空気で満たされており、近くに魔物もいなければダンジョンなども出来ない。

 そんなエルフの国から半日行った所に大きな都市がいくつも入りそうな程大きな湖がある、湖の中心には島がありその島の中心に世界樹がある。

 湖を囲むように虹色の結界があり、世界樹へ行くには唯一の入り口である白銀の大きな門から行くしかない。

 あらゆる怪我と万病を癒す世界樹の実は争いの火種になるため厳重に管理されており、たとえ門にたどり着いても門番により追い返されてしまう。

 唯一の例外は世界の守護者に認められること、守護者によって認められた者のみその実を手に入れることが出来る。

 世界を救ったり、失うと世界の損失になると判断された者達だ。

 稀に守護者の気まぐれで与えられることもあるとか……。

 

 

 

 世界樹への入り口である門へ転移した優奈達は門番を呼び出すが返事がない。

 いつもならば、門へ人が来ただけで門番が現れるのだが……。

 しかし守護者である優奈なら門を開けられるはずだとブルベルに聞き門に手を伸ばす優奈。

 門に手を触れた瞬間音もなく門が開き、世界樹への道を示した。

 門を通り抜け水晶の橋を渡っていく優奈達、湖には薄っすらと霧がかかっておりさらに色とりどりの蓮に似た花が咲いていてとても幻想的である。

 

 普段ならばこの幻想的な景色に心打たれる優奈だが、和人の事があるため景色など見ずに橋を全力で走り抜けていく。

 湖の中心へたどり着くと雲を貫くほどの大樹が現れた。

 世界樹の前で金髪碧眼のエルフの少女の姿をした門番が座り込みぶつぶつと何かを言っている。

 

 「どうして守護者様に連絡がつかないんですの。お願いだから応えて下さいですの!!

 このままだと世界樹が枯れ果ててしまうですの!!」

 

 泣きながら何度も必死に守護者に連絡を取ろうとしている門番。

 そこに優奈がたどり着き門番に声をかけた。

 

 「世界樹が枯れ果てるってどういうことなの門番!!」

 「ふえ……、勇者なの。どうやって門を通過したですの」

 「それは私が守護者だからみたいよ?」

 「守護者はガイア様ですの。どういうことですの!!」

 

 立ち上がり優奈の胸元をがくがくと揺すりながら詰問する門番。

 

 「久しぶりね門番、私は時の女神ブルベルよ覚えてるかしら?」

 「覚えてるの、時の女神様お久しぶりですの。どうなっているのか説明して欲しいですの」

 「まず、女神ガイアはこの世界の守護者を解任されました。そしてそこにいる勇者ユウナが新しい守護者に就任致しました。

 ここまではいいですか?」

 「守護者が変わったから連絡がつかないってことでいいのなの?」

 「そうです、貴女は守護者の眷属になりますので、守護者が変われば貴女の使えるべき女神も変わります。

 今まで守護者交代などなかったものですから眷属に対するフォローを忘れておりました。申し訳ありません」

 「ん、それは仕方ないの。使える人が変わったのはわかったけど新しい守護者に念話が届かないのどうすればいいの」

 

 そう言って優奈を見る門番。

 ブルベルは門番に近づくと跪かせ手を組ませる、そうして跪いた門番の頭の上に優奈の右手を乗せた。

 

 「ユウナ私のあとに続いて同じことを唱えて頂戴」

 「わかったわ」

 

 『女神ユウナの名において命ずる』

 「女神ユウナの名において命ずる」

 『我が眷属となり、世界樹を守る門番となれ』

 「我が眷属となり、世界樹を守る門番となれ」

 

 「はいなの」

 

 優奈と門番が光に包まれお互いが繋がっていく。

 優奈から門番へ力が流れていく、そして光が収まるとそこには先程より成長した門番の姿があった。

 

 「女神ユウナ様、今後貴女様の眷属として世界樹を守ることを誓います」

 「成長した……?」

 「眷属は女神の力によって力と姿が変わるのよ、ガイアよりユウナの力が強いので成長したのでしょうね」

 

 そしてはっと気づく優奈、世界樹の実を取りにきたのだ。

 急いで門番に先程の枯れ果てるについて問いただす。

 

 「門番、先程言っていた世界樹が枯れ果てるとはどういうことなの」

 「ご説明いたします、こちらにおいでください」

 

 世界樹の根元に案内される優奈達、門番に促され幹に手をあてる。

 

 「世界樹の状態がお判りになりますか?」

 「これは毒……? 上の方から枯れ始めている。世界樹の中身がないような感じもするのだけど」

 「そうです、中身がないのです。それが枯れ始めている原因でもあります。

 世界樹には心があるのです、そしてそれが人型を取り世界樹の実をもいでくれるのです」

 

 そして門番は俯きながら言葉を続ける、その顔はとても悲しそうだ。

 

 「一年前門の外に傷ついたエルフの青年が倒れていたのです。

 飛行魔法の制御に失敗し上空から落ちてしまったようで、かなりの重症でした。

 放っておけばよかったのですが、その者の短剣にエルフ王家の紋章が刻んであったため守護者様にお伺いをしました。

 そうしたら中へ運び実を与えよとの言葉を頂きましたので、根元へ連れていき世界樹の心である化身に実を取ってくるようにお願いしました。

 「おかしいわね、世界樹の実はある程度貯めておかなければいけないはずなのだけど。

 貯蔵はなかったの?」

 「守護者様がどうせ貯めても使わないので貯めなくてもよいとおっしゃって……」

 

 ブルベルがガイアの杜撰さにため息をつく。

 本来なら数日に一回くらいの頻度で実をもぎ、貯蔵しておかねばならないのだ。

 確かに使うことは少ないかもしれない、だけど200年前の世界の脅威襲来の時のように大量に使うこともあるのだ。

 あれもガイアのせいではあるのだが……。

 

 「話の腰を折ってごめんなさい、続きをお願いできるかしら」

 「はい、そして世界樹の化身が青年に実を与えたのです。そして傷の治った青年はお礼をしたいと言い、世界樹の化身は外の世界の話をねだったのです。

 ここには基本人は来ませんし退屈だったのでしょう、そして数日程青年が世界樹の化身に外の世界の話をしました。

 そしてその数日の間に二人は恋に落ちてしまったのです、青年が国に帰る時に世界樹の化身は一緒についていきたいとそれはそれは大変な騒ぎでした」

 「もしかして、世界樹の化身は青年について行ってしまったの?」

 

 門番は大きく頷く、そしてその後の顛末を語り始めた。

 

 「この世界樹のある神域にこれ以上青年を置いておくわけにはいかず、また私は守護者様にお伺いをしました。

 そうしたら世界樹の化身の好きにさせてあげなさいと。

 そして世界樹の化身は青年と共にエルフの国へと向かいました」

 「だから中身がないのね……、それで枯れてしまっているのはどうしてなのかしら」

 「ここからは推測になるのですが、世界樹は聖別された湖の水と島の大地からの栄養以外は毒になるのです。

 たぶんエルフの国で食事をしてしまい、それが身を蝕んでいるのかと」

 「原因はわかったわ、エルフの国へ行き世界樹の化身をとりあえず連れ戻して来ればいいのね」

 「そうね、浄化するにしてもまずここへ連れてこなければダメでしょう」

 

 そして門番が優奈達に頭を下げる。

 

 「世界樹をよろしくお願い致します」

 

 

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