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2.お茶会

 

 

 

 「ライム久しぶりね、元気にしてた?」

 

 数日後お茶会に出席するために魔王城に転移した優奈は、出迎えてくれたライムに声をかける。

 ここは魔王城の転移の間、なぜか魔王城と優奈の屋敷に直通の転移陣がある。

 魔王が勝手に設置したやつだ。

 

 「ユウナ様お久しぶりです、本日はご出席下さり誠にありがとうございます」

 

 肩で切りそろえた碧の髪に同じ色の瞳の少女ライムが笑顔で優奈に返事をする。

 彼女は魔王の四天王ライム、少女の姿をしているが歳は……まぁそこは詮索しない方がいいだろ。

 主に回復系に秀でているが戦闘能力も高く、そこら辺の魔人では相手にならない。

 

 「ライムが私のためにお菓子を用意してくれたのでしょ、来ないわけがないわ」

 「お茶も厳選したものを用意致しましたので、ぜひ楽しんでいって下さい」

 

 ライムに案内されてお茶会の部屋に移動する、ここは城の3階にありバルコニーからは湖が一望できる。

 心地よい風も入ってきてお茶会をするのには最適だ。

 しかしそんな素敵な風景も魔王がすべてを台無しにする。

 

 「ユウナぁぁぁぁぁ!!!! 俺の愛を受け取れぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 部屋から魔王が飛び出してくる、両手を広げ優奈を捕まえようとする。

 いつものように剣で魔王の腹を殴ろうと、優奈は腰を落とし剣を持つ手に力をこめる。

 魔王は優奈に触れられるのが嬉しいらしく、拳で殴ると手首を掴んで手の甲を顔ですりすりしてくるのでやっかいだ。

 殴るというか魔王の間合いに入ったらヤバいので衝撃破で腹に一撃いれるのが常だ。

 タイミングを計っていたら、魔王の姿消えた!

 悪寒を感じて背後に向かって優奈は肘鉄を繰り出す。

 

 「おごあっ!」

 

 クリーンヒットしたらしく、魔王がお腹を抱えて蹲っていた。

 美しい黒髪を乱れさせ蹲る魔王はとても滑稽だ、せっかくの美男子なのにいろいろ台無しである。

 

 「まったく、素直に剣で殴られてたらいいのに。姑息なことするから手加減なしで肘鉄しちゃったじゃないの」

 「あら魔王様よかったですね、肘とはいえユウナ様が触れて下さいましたよ」

 

 にこにこしながらライムが魔王に話しかけてる。

 涙目でおう!と返事をする魔王、どうしても優奈に触れたいらしい。

 

 「まったく、過剰に私に触れようとしなければちゃんと対応してあげるのに」

 「うむ、それは無理だな! 愛しいものに触れたいのは止められん」

 

 もうダメージから復帰した魔王はそう言い放つと椅子に座った。

 

 「それにユウナはまだ俺を許してはいないだろう? 普通にしていたのでは他の男に取られてしまう。大げさにして周りに俺の想い人だとアピールしておかなければな」

 

 テーブルの上で手を組みその上に顔をのせて、真剣でそして優しい瞳で優奈を見つめてくる魔王。

 艶のある黒髪に端正な顔立ち、黙っていたら貴公子にしか見えないが服の下は鍛え上げられた肉体と鋼の精神力がある。

 その真剣な眼差しについうっかりと優奈は魅入ってしまい「不覚……」と小さくつぶやく。

 

 「はいはい、おかげでだれも私に言い寄ってこないわよ」

 

 平静を装い優奈は椅子に腰かける。

 そしてライムが出してくれた紅茶を一口飲んで驚いた。

 

 「すごい美味しい。柑橘系の味にほのかに甘みがあって、香りもすごいいいわね」

 

 好みの味に優奈は微笑む、あとで入手方法を聞こうと心に書き留める。

 

 「うふふ、それ魔王様が手ずから品種改良したやつなんですよ。ユウナ様好みのお茶を作るんだって言って、最近やっと完成したんです」

 

 ライムが満面の笑みで言うと、魔王があーとかそのなんだとか言いながらそっぽを向いた。

 顔を赤くし照れる魔王を初めてみた優奈は驚いた。

 

 「うん、すごい私の好みだわ。ありがとうね魔王」

 

 優奈がそう言うと、魔王がすごい嬉しそうな顔をした。

 お礼を言われたのがよほど嬉しかったのか、にやにやしだした魔王をみて優奈はドン引きした。

 とりあえず魔王を放置しお茶を楽しむ優奈、しばらくするとライムがテーブルにお菓子を出してきた。

 

 「あらそれが噂のお菓子?」

 

 丸いクッキーの中央にジャムが乗ったどこにでもありそうなクッキー。

 

 「ええ、ぜひ召し上がってください」

 

 優奈がクッキーに手を伸ばすと、魔王も一緒に手を出してきた。

 一口サイズだったのでそのまま口に入れてかみ砕き飲み込む。

 途端に体にものすごい衝撃が走った!

 

 「うあ……、ああああああああ!!!」

 

 優奈が椅子から転げ落ちる、体が痛い痛い痛いいたいいたいいたい。

 体が熱い溶ける溶ける溶ける!

 骨が軋み声が出ないほどの激痛に転げまわる。

 腰に差した剣がガチャガチャと音を立てている。

 体から強引に何かが吸い出される苦痛。

 痛みと苦痛で優奈の目から涙が流れ落ちる。

 どのくらいの時間がたっただろうか、唐突にそれは収まった。

 

 「はぁはぁ、今のは一体……。」

 

 優奈は体にものすごい気だるさを感じ椅子につかまりよろよろと起き上がると、ライムが何かを叫んでいた。

 

 「魔王様! 魔王様! まおうさまぁぁぁぁぁ!!」

 

 子供を抱え泣き叫ぶライム。

 

 「ライム、クッキーに何を入れたの?」

 

 落ち着いて優しくライムに優奈は尋ねる、ライムが魔王に危害を加えるはずがないが、どう考えてもクッキーに何かが入っていたとしか思えない。

 

 「ちが、私が用意したんじゃないんです……。」

 

 子供を抱え涙を流しながらライムが答える。

 どこから子供が?と不信感をもった優奈はテーブルを周りライムに近づく。

 床に魔王が履いていたズボンと靴がありライムの腕の中に魔王によく似た、魔王の服に包まった5歳くらいの子供がいた。

 

 「ライムその子は?」

 「魔王様です」

 「はい?」

 「クッキーを召し上がった直後に体が縮んでこのお姿に……。」

 

 ライムの言葉に一瞬思考が停止したが、先程の痛みにもしやと思い慌てて優奈は部屋の隅にある姿見まで移動した。

 そしてそこにはこの世界に召喚された時の16歳の姿の優奈がいた。

 


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