12.ガールズトーク
ドロップアイテムを拾い終わり、リポップ待ちの間しばし休憩をする優奈達。
冒険者カードのレベルを確認後、優奈は少し考え込んでいた。
やがて考えが纏まったのか和人達に提案をしはじめる。
「あのね、今レベルが25でしょ。あと一度殲滅させたら20階層のボスにいこうと思うの。
私はなるべく攻撃しないで、ボスの突進を抑えるから皆で攻撃してくれる?
和人さんとベルに戦闘経験を積んでほしいのよね」
「じゃぁ俺も盾持って注意を引き付けるか」
「そうね、ライルお願いするわ」
ボスでの立ち位置などを相談したあと、アイテムボックスからお茶を取り出し飲み始める。
一息つきまったりとした空気が流れる。
「そういえば、今更なんですけど優奈さんは鎧を装備しないんですか?」
和人の質問につぃっと顔を横にそむける優奈、どうやらあまり触れてほしくない話題のようだ。
そんな優奈をみて、ライルが笑いながら質問に答える。
「ユウナはな、鎧は固くて嫌だって理由で竜王に鱗をくれとねだって自然に剥がれ落ちた鱗を貰ってきたんだ。
竜王もユウナに甘くてな、貯め込んでた鱗を全部渡しやがった。俺がいくらくれと言ってもくれなかったくせに……」
まったくと言いつつ言葉を続けるライル。
ベルも興味深そうにライルの言葉を聞いている。
「しかもだ、そのねだり方っていうのがまたあざとくてな。
『あのね優奈格好いい竜王の鱗で装備を作りたいの、剥がれ落ちたのでいいから鱗欲しいな』と言いながら上目遣いでねだったんだ。
竜王が許可すると『ありがとう、竜王だーいすき』って言いながらあいつの足に抱き着いたんだぞ!!」
「ナンノコトカナ……」
とぼける優奈、しかし和人とベルの冷たい視線が突き刺さる!
はっきり言って黒歴史である。
「もう、いい加減その話忘れなさいよ。ちゃんと貰った鱗で四天王の装備も作ったんだからいいじゃないのよ。ライルしつこい」
「ライルしつこい男は嫌われるわよ?」
「ぐ、だけどな……」
ぶちぶちと文句を言うライル、よほど優奈が竜王に大好きと言ったのが許せないらしい。
そんなライルに同意する和人、なんだかライルと和人に変な友情がうまれつつあった。
「それで、鱗はどこに使ってあるんですか?」
「このコートよ、当時かなり無理を言って作って貰ったわ」
コートを触らせてもらった和人が驚く、すごく軽くて柔らかいのだ。
「すごいですね、元が鱗とは思えないです。あと中に着てるのはニットですよね? 暑くないんですか」
「どうやって作ったのかわからないけど、すごいわよね。あ、ニットは使ってある毛に秘密があるの。
黄金の羊の毛を使ってあるんだけど、この毛自体が魔力を蓄えていてその魔力がすごい面白いの」
ニットの裾を持ち、魔力を流し始める優奈。
魔力を流したニットを和人に触らせる。
「あ、冷たい! 今度は暖かくなった!?」
「ふふ、冷気を流すと冷たく熱を与えると暖かくなるの。温度も慣れれば調節できるし、しかもこの毛自体が衝撃吸収の特性が付きやすい優れものなの」
「両方ともすごい装備ですね、さすが優奈さんです」
装備を褒めて貰えて嬉しそうにする優奈、ダンジョンに入ってからだんだんと和人に対する口調がくだけたものになってきている。
「そうだ、ここを出たら黄金の羊の毛刈りにいかない? ちょうど今毛刈りの時期だし、皆の装備をつくりましょうよ。
まだ竜王の鱗もあるからベルは私と同じ長さのコートに、ライルと和人さんはロングコートで! コートの裾をはためかせながら戦う男性って格好いいよね!」
うきうきしながら言う優奈に、お茶を飲んでいたライルが苦笑しながら答えた。
和人もお茶を飲む手を止めて苦笑している。
「鎧のが好きだが、ユウナが望むならそれを作ろうか」
「私はもともと鎧は装備できないので、それで構いませんよ」
楽しそうな優奈をみて、和人とライルが内緒話をしている。
「あれだな、カズトが来てからユウナはわがままになってきたな。昔はわがままなんて滅多に言わなかったからいい傾向だな」
「優奈さんすごい楽しそうですよね、元の世界では16歳なんてあんなものだと思いますよ」
「そうなのか、ユウナはやっと今を楽しみ始めたってことか」
二人がそんな話をしているとは知らない優奈は、ベルと二人どんな服を作るかで盛り上がっていた。
ダンジョンの階段でガールズトークする二人、ここダンジョンだからね?
毎回短くてすみません、もう少ししたら毎日投稿せず数日空けて長めのを投稿したいなと思っています。