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8.魔王の告白

 深夜三日月の光がタチバナの街に降り注ぐ。

 さすがの冒険者も夜中にはダンジョンへ行かないのか、ギルド通りに人通りはない。

 そんな寝静まった街の上を一つの影が飛んでいく。

 影は街を通り過ぎ優奈の屋敷に向かって行く。

 屋敷にたどり着くと影は一つのバルコニーに音もたてずに降り立った。

 

 魔道具の灯りに照らされた部屋で優奈は和人に作ってもらった漫画をベッドに腰かけ読んでいる。

 ミイナは優奈の膝を枕にしてすでに寝ている。

 ダンジョンコアに睡眠や食事は必要ないのだが、ミイナは優奈をマスターと定めてから食事も睡眠もとるようになった。

 どうやら優奈と同じことをしたいらしい、そんなミイナを優奈は妹のように可愛がっている。

 

 ふと部屋がかげった、月が雲に隠れたのかと優奈が漫画から顔を上げるとバルコニーに人影があった。

 しかし優奈は慌てない、この屋敷は魔王渾身の結界が張ってあるのだこの結界を破れる者は世界広しといえども数人しかいない。

 しかも音もたてずに侵入するなど一人くらいしか思い浮かばない。

 ミイナをベッドに寝かせると、優奈はバルコニーの人影に声をかける。

 

 「女性の寝室に忍び込むとはいい度胸ね、魔王」

 

 キィーという音がしてバルコニーの窓が開き一人の男性が部屋に入ってきた。

 

 「なぜ俺だとわかった?」

 「あのね、この屋敷の結界を張ったのは魔王でしょ。音もなく侵入できるのは張った本人くらいよ」

 「ふむ、それもそうか」

 「で、何の用かしら?」

 「月が綺麗だぞ一緒に見ないか」

 

 ため息をつくと優奈は立ち上がりバルコニーへと向かう。

 バルコニーに出ると部屋の窓を閉める、ミイナが風をひかないように。

 窓を閉め魔王の方を向くと、真剣な眼差しで優奈を見つめていた。

 

 「20歳くらいかしら、ベルに少し戻してもらったの?」

 「ああ、まだこれくらいしか戻せないけどと言っていたが若返ったと思えば悪くない。

 これ以上体を戻してもらうこともないだろう」

 「元とあまり変わらないけど、若い分少しだけ男前かしら?」

 

 ふふと笑いながら優奈は魔王を見つめる。

 

 「男性の異世界人が召喚されて、しかも優奈を守りたいから残ると聞いた」

 「ああ、やはりその件なのね。そうね、告白まがいの事はされたかしら?」

 

 魔王を試すように言葉を紡ぐ優奈、その瞳は楽しそうに揺らいでいる。

 魔王は右手で優奈の頬をそっと包む。

 

 「強く美しいユウナが好きだ、どんな困難にも挫けないユウナが好きだ、その気高い魂が好きだ」

 

 そして優しく優奈をその腕に包み込み、耳元で囁く。

 

 「愛している、ユウナ」

 

 魔王の腕の中でそっと目を瞑り、優奈も想いを紡ぐ。

 

 「ずっと貴方を憎んでいたわ。貴方が求婚さえしなければ元の世界に帰れたのにって。

 ガイアのせいだって頭ではわかっていたけど憎まずにはいられなかった。

 誰かを憎まなければ壊れてしまいそうだった……」

 「まだ俺を許せないか?」

 「いいえ、でもごめんなさい。魔王の気持ちには応えられないわ」

 「ライルだ、昔みたいにライルと呼んでくれ」

 「ライル……」

 

 月明かりが抱き合う二人を照らし出す。

 それはまるで一枚の絵画のようだった。

 

 「女神になったばかりだし、今はまだ恋愛に気持ちを割く余裕がないわ。

 それに和人さんも気になるし……」

 「そうか気長に待つさ。200年待ったんだいつまでも待つさ。

 ただ待った挙句他の男に取られるのは困るな。レベルあげするんだろ? 一緒についていく」

 「和人さんとブルベル様もいるわよ? 和人さんいじめたら許さないから」

 「いじめないさ、俺はそんなに心狭くないぞ」

 

 苦笑しつつ優奈から離れ、片膝をつき優奈の手を取る。

 

 「ユウナ姫、私を貴女のパーティーに入れて頂けませんか。

 貴女の剣となり貴女を守る盾となりましょう」

 「勇者ライルよ、貴方に私を守る栄誉を与えましょう」

 

 二人のしめやかな笑い声が、そっと夜のしじまに響いた。

 


やっとパーティメンバーが揃いました!


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