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7.女神転生


 カツコツ……カツコツ……。

 蒼い水が湛えられた部屋にサァァァという水が流れ落ちる音と、部屋の真ん中を貫く白い通路を一人の少女が歩く音が聞こえる。

 肩で切りそろえられた黒髪に黒い瞳、白いドレスを纏い緊張した面持ちで歩いている。

 通路の終着には白い大きな扉がある、少女がたどり着くと扉脇に控えていた神官が扉を大きく押し開けた。

 

 部屋の中には大勢の人がいた、通路の両脇に設えられた長椅子の最前列は各国の王とその重鎮。

 そして通路中央の椅子には和人と神殿関係者が。

 通路の先は一段高くなっており、3人の女神像が置いてある。

 少女が通路を歩き終わると女神像が光りその3つの光が集まり扉を形取る。

 光はどんどん白くなり、白く輝く扉が現れた。

 

 音もなく扉が開かれ中から4人の美しい女神が現れる。

 参列者は息をするのも忘れて女神達を見入る。

 そして3人の女神達の前に立つ乳白色の髪に金の瞳の女神が目の前に立つ少女に話しかけた。

 

 「久しぶりね、勇者ユウナ・タチバナ」

 

 この世界に初めて……、創造神が降臨した瞬間である。

 まぁ、公式的にはということではあるが。

 

 「お久しぶりでございます、レイ様」

 

 親しげに話す優奈に参列者がざわめく。

 しかしすぐに皆口を噤んだ、創造神の前で騒ぐなどあってはならないことだからだ。

 そして創造神の凛とした声が部屋に響く。

 

 「勇者ユウナ・タチバナ、貴方は女神となりこの世界を守り導く覚悟はありますか」

 

 「はい、あります」

 

 「例えその身が朽ち果てようとも、世界を守りますか」

 

 「はい、守ります」

 

 レイファールが数歩前に出て、優奈の額に指をあてる。

 指の先から光が優奈の中に入り優奈の覚悟をその内からも確認していく。

 

 「ユウナの覚悟しかと受け取りました」

 

 そして優奈に当てた指先が光り、優奈の体が次第にぼやけ輪郭が無くなりそして体が消えた。

 参列者が息を呑む中、次第に空中が光りだす。

 光がレイファールの指先に集まり、光が消えた後には先程と同じ姿形なのに神々しく威厳のある優奈の姿があった。

 人の肉体を捨て、女神に転生したのである。

 優奈から指を離すとレイファールは手のひらに一つの虹色に輝く玉を作り出す。

 

 「これは私からの贈り物です」

 

 そして優奈の額につぷりと玉が入って行く。

 

 「それは豊穣・運命・時の力が篭められています、今はまだ小さな力ですがあなたの努力次第では最高神に次ぐ力を扱えるようになるでしょう」

 「ユウナちゃん私の力正しく使ってね」

 「ユウナ運命の力に振り回されないように気を付けてね」

 「まったく、3つの力をもった女神などいないわよ? 時の力大事に使いなさい」

 

 レイファールが腕を広げ歌う様に告げる。

 

 「女神ユウナをこの世界を守り導く守護者とする!」

 

 そして4人の女神が光り天を貫く光の柱が出現する、光が消えたあとには4人の女神の姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 

 数日後、執務室の机に突っ伏してる優奈の姿があった。

 女神転生が終わった後、各国の王との会談や会食など休む暇がなかったのだ。

 

 「うう……、癒しが欲しい……」

 「あー、最近ミイナ様は外にお友達が出来たみたいですぐ遊びに行ってしまわれますものね」

 「マスターとはなんだったのか……」

 「いいじゃないですか、友達が出来るのはいいことですし、そういえばユウナ様世界を回られると聞いたのですが本当に行かれるんですか?」

 「セカイタベル……マルカジリ……」

 「頭大丈夫ですか……」

 「リリアひどい……、ちょっとした冗談なのに」

 「私に異世界ネタを振るのが間違っているんです、そういうのはカズトさんにお願いします」

 

 優奈は突っ伏したまま顔だけあげ、リリアを恨めしそうに見る。

 コツと音がして机に緑茶が置かれる、和人が創造した日本産のお茶だ。

 

 「ありがと~、はぁ美味しい。やっぱりお茶は湯呑で飲まないとダメよね」

 「それで詳しい話をまだ聞いてないのですが?」

 「そうねとりあえず、世界を回るというより各地のダンジョンを見て回るって言った方がいいかしら。

 ガイアがまったく仕事をしてなくて、未発見のダンジョンがかなりありそうなのよ」

 「ほんとっうに使えない女神ですね」

 「それで、私の神力はまだ弱くてすでに出来たダンジョンの特定は難しいのよ。

 ダンジョン内の安全向上のためにも直接ダンジョンに出向きたいし、あとレベルも上げないといけないからこの機会にすべてのダンジョンを回ってくるわ。」

 

 優奈はそう言うとにこっと笑ってお茶のお代わりを催促する。

 お茶を入れつつリリアが疑問を口にした。

 

 「最初はここのダンジョンですよね? この街にいる間はいいですけど、仕事はどうなさるんですか」

 「私じゃなければダメな仕事はあまりないし、どうしてもって時は呼び出し手段を用意するのでそれで呼んで頂戴」

 「わかりました、つまり私の仕事が増えるってことですね」

 「仕方ないじゃない、女神の仕事なんだから。助手を雇っていいからお願い」

 

 苦笑しつつリリアを宥める。

 この街に帰ってくるときはリリアに何かお土産を用意してから帰ってこよう、優奈は心の片隅にメモをした。

 リリアと二人しばらくお茶を堪能していると、突然部屋に一人の女性が現れた。

 腰まで伸ばした銀の髪に紅い瞳、見たものの劣情を誘う蠱惑的な紅い唇。

 何の前触れもなく突然現れた女性に、二人ともえ?という顔をして固まった。

 そしてフリーズから戻った優奈が女性に声をかける。

 

 「ベル様どうしたんですか? なにかとても人間臭いですけど……。あとリリアこの方は時の女神様よ」

 「え? あ、時の女神様!?」

 

 リリアは突然のことに頭がついていかず、ブルベルと優奈を交互に見つめる。

 

 「ユウナこの間ぶりね、私がユウナの指導役につくことになったのでよろしく。人間臭いのは神力を押さえているからね」

 「指導役の女神がくるとは聞いてましたけど、まさか最高神がくるとは予想外です」

 「まぁタクトの件もあるし、私も冒険者となり一緒にダンジョンの掃除を手伝うわよ」

 「冒険者ですか? ベル様なら神力のみでいいような」

 「人界であまり神力を使うなと釘を刺されているし、どうせユウナもレベルあげをするのでしょう? なので冒険者として付いていこうと思って」

 「まぁ和人さんも一緒にいきますから、人が増えても問題はありませんけど。冒険者になるなら様付けはまずいかなぁ」

 「ベルで構わない。冒険者としては新人だしよろしく」

 

 最高神を呼び捨てにすることに優奈は一瞬悩んだが、冒険者として付いてくるなら仲間だ。

 命を預ける仲間に様付けはしたくない、なのであっさり割り切った。

 

 「冒険者になるなら命を預ける仲間になるので、敬語も使わないですけどいいですか」

 「もちろん、人界のこともいろいろ教えて欲しい」

 「わかったわ、これからよろしくねベル」

 

 そうして握手を交わす二人。

 リリアは私はどうしたらいいのでしょうという表情を浮かべて、立ち尽くしていた。

 


やっと女神になれました!


ちょっとブルベルの口調を変更しました、いまいち安定しないのでまたかわるかも?

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