5.相馬の想い
時間かかってすみません!
相馬くんの想いを文字にするのが大変でした……orz
ブックマークありがとうございます、励みになります!
二人は先に転移させた冒険者の無事を確認し、ギルドマスターに報告したあと屋敷に戻ってきた。
現在優奈の執務室で二人向かい合って紅茶を飲んでいる。
「はぁ~、無事に帰れてよかったです。ところで和人さんお酒を用意した理由はわかりましたが、現れたのが黒竜で上手くお酒に喰いついてくれたからよかったようなものをそうじゃなかったら命が危なかったんですよ。
なぜ最初に約束した通りに転移結晶を使って帰らなかったんですか」
目に怒りを湛え優奈は和人を責める。
「すみませんでも優奈さんを一人置いて逃げるのは嫌だったんです、それに高確率で黒竜がくると思っていましたし、お酒を出すチャンスがあれば必ず喰いつくと思ってましたから」
「なぜ黒竜がくると思ったんですか?」
「ギルドの受付の後ろに竜の巣についての注意が書いてあったのですが、その注意書きに『黒竜の卵があるので』って書いてありました。なので高確率で黒竜が直接来るかなと、普通子供を守るのは親なので」
「しまった、全然気づいてなかったです……。確かに自分の子供を守るために親が出てきますよね」
優奈は顔に手を当ててソファーに背中を預け呟く「だから白竜もいたのかぁ……」
飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置き、和人は優しい笑みを浮かべ優奈を見つめる。
顔に手を当てたまま優奈ははぁとため息をつくと何かを決心したのか、姿勢を戻し真剣な表情で和人を見つめ和人に疑問をぶつけた。
「和人さんそういえば黒竜のアルトに『私の笑顔を守りたい、もう一人で孤独に戦わせたくない』と言ってましたけど、会って数日の私のことをなぜそこまで守ろうとするのですか」
優奈の視線を受け止め、和人は言葉を探しているかのようにゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「この世界に来た次の日リリアさんに勇者物語という本を貸して頂きました。
その本を読んだあと優奈さんはこの世界を救ったけど、だれがその優奈さんの心を救ってあげたのかなと思ったんです。
そうですね、最初はちょっとした好奇心と同情だったんです。
そして気になると調べずにはいられない性格なので、勇者物語のその後を調べました。
でも調べても調べても優奈さんの心を癒せるような記述を見つけられませんでした。
全部調べきれたわけではないですし、もちろん書物に載ってないこともあると思うんです」
和人はテーブルにカップを置き、中身のないカップに視線を移す。
しかし瞳はカップを映してはおらず、自分の中の気持ちを探る様に揺らめている。
「私は幼いころに両親を亡くしていて、大学生の頃に親代わりだった叔父夫婦も亡くしました。
叔父夫婦には我が子のように育ててもらいました、私も叔父夫婦を本当に好きでした。
だから大切な人にもう二度と会えないその辛さはわかります。
そして帰れたはずの故郷に帰る手段を絶たれ、さらに不老不死の呪いまで受けたのにこの世界のために頑張る優奈さんを知るたびにどんどん惹かれていきました。そして思ったんです」
和人は優奈をまっすぐに見つめる、その瞳に固い意思をのせて。
「たった一人でこの世界を守ろうと頑張る少女を守りたいと……。
なんの力もない自分がこんなことを言うのはおこがましいんですけどね」
「いいえ、和人さんに何の力もないなんてことはありません。現に私を竜の巣で私を助けてくれたじゃないですか。
私が見逃していた黒竜の卵のこと、それに私ですら知らなかったお酒好きという情報を知っていたこと。
十分凄いと思います、私は結構おっちょこちょいなので冷静に周りをみてくれる人がいるのはとても助かります」
柔らかな夕日が部屋の中をオレンジに染めていく。
オレンジに染まった部屋の中で和人は優奈に告げる。
「竜の巣に行くまではこの世界に残るか揺れていたんです、優奈さんに惹かれていたけど日本にも少し未練はありましたから。
まぁ親類縁者はいないのでそういう意味の未練はないのですが、便利な文明から離れるのが少しだけ……。
でも自分が弱体化しているのに人の為に迷わず強敵に挑むその姿を見た時に堕ちてしまいました。
人の為に決して勝てない黒竜に挑む優奈さんはとても美しかったです」
そしてふふっと笑うと、優奈に願い出た。
「この世界に残り優奈さんの隣で戦うことを許して頂けますか」
優奈は戸惑っていた、魔王とは違う自分へ向けられる愛情に。
和人には無事に日本へ帰って欲しいと思っている、でも自分の笑顔を守りたい一緒に戦いたいという気持ちがすごい嬉しかった。
この200年ずっと孤独だった、もちろん慕ってくれる人は沢山いるそういう意味では孤独ではなかった。
でも自分の心に寄り添い守ってくれる人はいなかったのだ……。
優奈は葛藤する、日本へ帰って欲しいでも側にいて欲しいという気持ちが芽生え始めていたからだ。
「二度と日本へ帰れませんよ? 私の側にいるということは魔物と戦うってことですよ? いつ死ぬかわからないんですよ!?」
気づいたら優奈は叫んでいた、もう何が正しいのかよくわからなくなっていた。
和人は笑う。
「正直魔物と戦ったりするのは怖いです、それでも優奈さんの側にいたいと思ったんです。
それに私がいると日本食が食べられますよ?」
「それは卑怯です!」
優奈は思わず突っ込みをいれてしまい、顔を赤くする。
そしてお返しだとばかりに言い返す。
「それじゃ私専用の料理人ってことですね! ふふ、私の隣からずいぶん離れてしまいましたね」
「あ……、しまった!」
和人は顔に両手を当て、あちゃーという感じで天を仰ぐ。
そして二人顔を見合わせ笑い出す。
「ふふ、お友達からでいいですか? 魔王は強敵なので頑張ってくださいね」
「もちろんです! 魔王さんですか、会うのが楽しみですね」
薄闇が迫る部屋に楽しそうな笑い声がいつまでも響いていた。
数日しかたってないのに少し強引かなって気もしますが、
送還まで時間がない&この世界に残るのにいい理由が思い浮かばなかったのです!
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ちび魔王「はっ! ユウナが誰かに洗脳されている!?」
ライム「魔王様……(残念な子を見るような目)」