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4.お散歩

ちょっと時間がかかっています。

何とか今日中投稿できるように頑張ります。


ちょっといろいろ強引だったので話を追加しました。

そのため8話のラストを少し変更予定です。

あと人称がバラバラなので三人称で書き直し予定です。

 心地よい風が吹くある日の午後、優奈と和人は『タチバナ』の街を散策していた。

 和人がこの世界に召喚されてから、すでに数日が経過している。

 最初は街に出て異世界の文化を楽しんでいた和人だったが、最近は部屋に籠ってスキルの修練に余念がない。

 それをしった優奈はスキルを使いすぎないようにもう一度釘を刺そうと思ったが、リリアの『和人さんとても楽しそうにスキルを使ってますよ』という報告を聞いて楽しみに水をさすのもあれかなと思いやめてしまった。

 

 この街は中央に大きな広場がある、その広場はけもみみ総選挙やイベントの主会場になっている。

 広場を囲むように有名ブランドが店舗を構えおり、冒険者ギルドの本部があるせいか各種職人ギルドの本部まである。

 そのせいかこの街の広場に店を持てたら一流の証!という風潮がある。職人たちは広場に店を持つことを夢見て日夜研鑽を積んでいる。

 広場には十字に大きな大通りが走っており、そのうちの一本は各種ギルドの本部や冒険者向けの装備道具を扱う店が立ち並ぶ通称ギルド通りという。

 

 ギルド通りに入るととても活気に溢れている。

 重そうな斧を背中に担いだ猫人族や如何にも魔導士然とした黒いローブを羽織ったエルフなど様々な人種の冒険者が闊歩している。

 通り沿いの一店舗でうさぎ耳を生やした可愛い女性の兎人族が呼び込みをしている。

 和人は目をキラキラさせてまるで子供の用に大通りを見つめていた。

 

 「すごい! まるで映画の中に入ったみたいですね!」

 「ふふ、これは現実の世界ですよ?」

 

 優奈は和人を下から見上げて訂正すると、和人が「そうでしたね」と照れながら頬を掻き始めた。

 武器屋を防具屋を冷やかしながらギルド通りを歩いていると、和人の足が道具屋の前で止まった。

 

 「少しお店の中見ていいですか?」

 「もちろんですよ」

 

 二人は冒険者をかき分け店の中に入って行った。

 店の中には所狭しといろいろな道具が置いてある。

 入り口付近には冒険に必須の道具類、少し奥に行くと生活用品も置いてある。

 店の奥には魔道具がガラスのケースに展示されていた。

 展示品を見ながら移動していると一番奥に一対の指なしグローブが展示されているのに気付いた。

 革で出来た黒いグローブで、手の甲の部分に魔法陣が書かれ、魔法陣を囲むように小さめの魔石が五芒星を描いている。

 

 「これは……!」

 「優奈さん?」

 

 それを見つけた優奈が食い入る様に見つめていると、ササッとエルフの店員が近寄ってくる。

 

 「お客様お目が高い! それは高純度の魔石を配置した当店自慢の一品でございます!」

 「左が高速移動の魔法に右が防御の魔法しかもこれはかなりランクの高い魔法だわ」

 「お客様魔法陣が読めるんですか!」

 

 エルフの店員が驚いたように目を見張る。

 魔法陣を読める人は少ないので店員が驚くのも無理はない。

 ちなみに魔法が発動できる魔法陣を書くのには『魔法陣作成』というレアスキルが必要になる。

 

 「これはおいくらですか?」

 「セットで金貨300枚になります」

 

 あまりの安さに目の前がくらくらする優奈。

 金貨は日本円にすると1万円くらいの価値である。

 

 「ええと、それだと原価割れどころの話じゃないと思うんですけど。嵌まっている魔石一つで金貨50枚くらいはします」

 「確かに原価割れですが、その魔道具を作成した人は冒険者のために安く良いものをという信念で作られています。

 それに誰にでも売るわけではありません、さすがにこちらの品ですと金以上のランクの方にしかお売りいたしません。

 過ぎたる道具は身を破滅させますので」

 「確かにお店には値段の割にいい道具が置いてありますね。そちらのグローブを金貨2000枚で買わせて頂きましょう」

 「2000! 申し訳ありませんが大金を積まれても金ランク以上の方にはお売り致しませんし、設定した金額以上でお売りも致しません」

 

 焦った顔で言う店員に優奈はあっという顔をしてかぶっていた帽子を取る。

 帽子には認識阻害の魔法がかかっていたので、店員は優奈を勇者だと認識してなかったのだ。

 帽子をとった優奈の顔をみて固まる店員、知っている顔より少し若い感じがするがまぎれもなく勇者だ。

 

 「ユ、ユウナ様でいらっしゃいますか……?」

 「ええごめんなさいね、今日は知り合いに街を案内していたので認識阻害をかけていたのよ」

 「いえいえ、ユウナ様でしたら喜んでお売り致しますが。金額の方は……」

 「ではこうしましょう、300枚は代金として残り1700枚はそれを作成した職人への支援としてお渡しいたします」

 「支援ですか、職人もユウナ様からの支援となれば喜ぶと思います」

 「安く良い物をという信念はとても素晴らしいものです、冒険者の生存確率をあげるためにもそういう職人は積極的に支援していきたいと思っています。ぜひ頑張ってくださいと職人の方にお伝えください」

 「必ず伝えさせて頂きます!」

 

 店員がキラキラと瞳を輝かせ急いでケースからグローブを取り出す。

 優奈に目をかけてもらえる、それはこの街では成功を約束されたようなものだからだ。

 

 「ええと……」

 「ごめんなさい、あとで説明しますのでもうちょっと待ってもらえますか?」

 「わかりました、あとで聞かせてくださいね!」

 

 和人は笑顔を浮かべて返事をする。

 和人の笑顔に優奈はほっとする、和人のことをついうっかり忘れていたのだ。

 しばらくすると店員が箱に入ったグローブを持ってきた、支払いはあとで屋敷の者が届けるのでそのままグローブを受け取り外へでる。

 「えっとあそこのベンチに座りましょうか」

 

 優奈は店の前にあるベンチに向かい、和人と二人ベンチに腰掛けた。

 ベンチに座ると先程の店でのことを説明しはじめる。

 

 「このグローブなんですが、手に嵌めて魔力を通すとグローブに書いてある魔法が発動するようになってるんです」

 「高速移動と防御魔法ですか?」

 「そうです、書いてある魔法はかなり上級の物でさらに周りに配置してある魔石のせいで数段上の威力になっています」

 「聞いてるだけで凄そうな物なのがわかります」

 「魔石の質もそうなのですが、魔法陣を書ける人も少ないので普通こういう魔道具は金貨300枚ではとても買えません。

 そうですね……このレベルの魔道具ですと金貨2000枚でも安いくらいですね」

 「とんでもないですね……」

 「これは高純度の魔石をいくつも嵌めて魔法の効果をあげてますし、この道具自体が普通ではないです。

 普通は魔法陣のみあとは魔石を1つくらいでしょうか」」

 

 和人の顔がひきつっている、日本円にして約2000万それでも安いと言われたのだ。

 優奈はこのグローブを和人に渡すつもりだ、この街にいれば危険はないと思うがこの世界なにが起きるわからない。しかも今自分のレベルは1でとっさに守ってあげられるかわからない。だからこのグローブを見つけた時に和人に装備してほしいと思った。

 この世界で初めて会えた同郷の人、無事に日本へ帰してあげたいという思いが強い。

 

 「えっと、和人さん!」

 「はい、何でしょうか」

 

 優奈の真剣な声に和人は驚きながらも背を正し、優奈の目をまっすぐと見つめる。

 

 「このグローブを貰って頂けませんか?」

 「こんな高い物頂けません!」

 

 和人は慌てて首を振る、何もしてないのに高価なものをもらうなどありえないからだ。

 

 「この街にいる限り安全だとは思いますがそれも絶対ではありません。

 日本と違い街の中だから安全だとは限らないのです、私も必ず守ってあげられるわけではありません。

 確かにこのグローブは高価ですが、和人さんの命とは比べられません。

 私は勇者としてではなく、同じ日本人として和人さんに無事に日本へ帰って欲しいのです」

 

 和人の目をまっすぐと見据え、己の想いを口にする優奈。

 そのまっすな想いを受けて和人は笑みを浮かべた。

 

 「わかりました、ではこの世界にいる間お借りいたします」

 

 貰うではなく借りる、それは和人のちょっとした男としてのプライドだった。

 軽くグローブの説明をすると二人は冒険者ギルドに向かって歩き始めた。

 和人が冒険者ギルドを見てみたいと言ったからだ。

 

 

 通りをしばらく歩くと右手に一際大きな建物が見えてきた。

 剣と盾を掲げた看板、目的の冒険者ギルドだ。

 中に入り受付へ向かうと、慌てた様子の冒険者二人が優奈達を押しのけ受付へに飛びつく。

 

 「すまん! 依頼を出して欲しい! 仲間が竜の巣に落ちちまったんだ!」

 「だれか一緒に救出に行ってほしい!」

 

 交互に叫ぶ冒険者二人、その内容を聞いてギルド内に静寂が訪れる。

 誰も反応をしない、当然だ竜の巣に行くということは死にに行くようなものなのだから。

 街から数時間行った先の山の中腹に竜の巣がある、竜は基本温厚で普段なら巣に入り込んでも問題はない。

 しかし卵がある場合話は変わる、竜は滅多に卵を産まないため卵が産まれた場合無事に孵るまで巣に入り込んだものを容赦なく攻撃するからだ。

 しかも間が悪いことに、先日卵が産まれたので巣に近づかないように竜側から警告がきたばかりだった。

 

 「まだ卵は孵ってないよな……」

 「警告がきたのはつい先日だぞ! 孵ってるわけがないだろう!」

 「無理だろ、あの巣には黒竜がいるんだぞ。金ランクでさえ倒せるかどうか」

 

 ざわざわとギルド内が騒がしくなっていく。

 優奈は帽子を脱ぐと受付の冒険者に詰め寄った。

 

 「その話詳しく聞かせて頂戴、どこから落ちたのか状況を詳しく!」

 「あんた行ってくれるか! ってユウナ様!」

 

 悲壮な顔つきだった冒険者の顔が歓喜に満ち溢れる。

 普通の冒険者では無理でも勇者なら竜を倒せるからだ。

 冒険者から話を聞いた優奈は受付に頼み部屋を一つ借り和人と二人部屋に移動した。

 

 「和人さんすみませんがこの部屋で待ってて頂けますか、すぐに屋敷から迎えを寄越しますので」

 「待ってください優奈さん一人で行くつもりですか! 竜の巣ってドラゴンが沢山いるんですよね!? 確か優奈さんはLv1に戻ってしまったと聞きました、優奈さん一人では無理です!」

 「和人さん落ち着いて聞いてください、別に竜を倒す必要はないのですむしろ倒すわけにはいきません。なので冒険者を見つけて転移で戻ってくるだけです」

 「私も連れて行って下さい! このグローブがあれば移動と防御は問題ないですよね? 冒険者は二人だと聞きました、優奈さん一人では何かあった場合二人とも連れて帰ってくるのは難しいのではないですか」

 「無理です! 和人さんを守ってあげれるほど今の私に余裕はないのです」

 「守って貰わなくても大丈夫です、自分でなんとかしますし。たとえ何かあったとしてもそれは自分の責任です」

 

 優奈は悩んだ、確かにもう一人くらい人手は欲しいのだ。それに和人に渡したグローブはきちんと使えば竜の攻撃を防げるほどのハイスペックだ。

 和人を危険に晒したくないために渡したものがまさか裏目にでるとは思わなかった。

 

 「わかりました……、ただし私が逃げろと言ったら絶対に逃げてください。いいですね」

 「わかりました善処します」

 

 絶対わかってないと思ったがここで押し問答してる時間すらおしいので、優奈はアイテムボックスから武器防具を取り出すと装備し始めた。

 

 「和人さんこれを装備しておいてください、それは魔力と防御を上げてくれるので和人さんの役に立つはずです」

 

 黒い無地のコートを和人に手渡すと、「ギルドマスターに会ってきます」といい優奈は部屋を出た。

 10分後戻ってきた優奈は部屋の机の上に魔法陣が封じ込められた水晶を設置する。

 

 「これは転移の目印にするものです、帰りはこれを目指して転移してもらいます。それでは竜の巣手前まで転移で飛びますので私の手を離さないで下さいね」

 

 

 

 

 景色がぐにゃりと歪み、次の瞬間二人は山の中にいた。

 目の前にはかなり深い渓谷がある。

 

 「この下が竜の巣です、これから気配遮断の魔法をかけて浮遊で下に降ります。いいですか、冒険者を見つけても絶対にしゃべらないでください。竜に声を聴かれるのすらまずいです」

 

 和人が頷いたのを確認すると、優奈は手早く魔法をかけていく。

 そして優奈が和人の腰に手を回すとふわりと二人の体が浮いた。

 そのまま渓谷を降りていく二人、優奈は周りに竜がいないのを確認すると用心深く冒険者を探し始めた。

 しばらく探すと崖のくぼみに身を寄せた冒険者二人を無事に発見する。

 近づいて確認すると骨折はしてるようだが、命に別状はなさそうだった。

 優奈はほっとすると無言でアイテムボックスから二つの転移結晶を取り出し冒険者に手渡す。

 和人の分も取り出そうとした時冒険者の顔が恐怖で歪む。

 慌てて振り返るとそこには高さ数十メートルになろうかという巨大な黒竜がいた……。

 和人の分を取り出し地面に放り投げると、優奈は黒竜に肉薄する!

 

 「和人さんそれを拾ってすぐに逃げてください!!」

 

 転移結晶は魔力をこめれば指定地点まで一気に飛べる便利アイテムだが、使い捨てなのと発動に数十秒かかるのだ。

 優奈は転移の時間を稼ぐために黒竜に戦いを挑む。

 Lv1のため大した力は出せないが、腕に付けた魔道具で最大限までスピードと腕力を強化する。

 走りながらさらに魔法でもスピードを強化!

 黒竜の後ろに回り込み空中を蹴って尻尾の付け根に聖剣を叩き込む。

 叩き込んだ勢いを利用して、そのまま竜を蹴り飛ばし即離脱する。

 離脱した瞬間さっきまでいたところに尻尾が飛んでくる、その風圧で思わず壁に叩き付けられそうになったが、なんとか体勢を立て直し壁を蹴り飛ばしさらに上空に移動する。

 たいした傷をつけられなかったが黒竜の意識をこちらへ向かすことはできたようだ。

 

 黒竜はこちらを向きつつ大きな顎門を開け、中に黒い光を溜め込んでいく。

 ドラゴンブレスが来る!優奈は慌てて範囲外から出ようとするが空中の為思うようなスピードが出ない。

 元のレベルなら空中でもかなりのスピードが出るので、ブレスを誘発させその隙に攻撃を行えたのだ。

 ミスに気付いた優奈はすぐさますべての力を防御に回す、ブレスが発射され周囲の地形が変形していく。

 優奈は直撃を免れたが衝撃破で壁に激突する。

 口から血を溢れださせながらもすぐに立ち上がり黒竜に向かって行く優奈。

 

 

 和人は優奈と黒竜の戦いを離れた所から見守っていた。

 二人の冒険者はすでに転移済みである、和人はどうしても優奈一人を置いてこの場を去ることができなかったのだ。

 ほんの数分の間に優奈は今にも死にそうなくらいボロボロになっていた。

 すでに転移できるだけの時間は稼いだのでこの場を離脱したいのだが、黒竜がそれを許してくれなかった。

 ついに黒竜の尻尾が優奈を捉えた、尻尾に殴打され和人近くの壁へ優奈が激突する。

 

 「優奈さん!!」

 「か、和人さんなぜまだいるのですか。早く逃げて……」

 

 優奈は剣を杖に立ち上がろうとするが上手く立てない。

 先程の殴打で肋骨が折れていた。

 

 「黒竜待ってくれ! 行方不明の冒険者を助けに来ただけなんだ。すぐにここから出ていく!」

 『たとえどんな理由だろうと、この時期に巣に入り込んだ者は排除する』

 

 重厚なそれでいて威厳のある声が頭に直接語りかけてきた。

 黒竜が尻尾を振り上げ和人もろとも吹き飛ばそうとした時、ドンっ!と大きな音を立てて和人が地面に樽を出した。

 何かの悪あがきかと思い黒竜は尻尾を再度振り上げようとしたその時、なんともいえぬ香りが鼻孔をくすぐった。

 心躍る香りに抗えず黒竜は和人に問いかけた。

 

 『人間よ、その樽の中身はなんだ?』

 「これは私の世界のお酒です」

 『む、もしかして異世界の酒か!!』

 

 さすが竜と言おうか和人の世界という言葉で、異世界だとわかったようだ。

 

 「このまま見逃して頂けるならそのお酒は差し上げます」

 

 和人はそう言うとさらに樽を4つ追加する。

 黒竜は我慢できなくなったのか樽に顔を突っ込み酒を飲み始めた。

 

 「え……、何が起こって……?」

 「とりあえず優奈さん治療しましょう、ポーションとか取り出せますか?」

 「ああそうですね、ちょっと待ってください」

 

 優奈はアイテムボックスからハイポーションを取り出し一気に飲み込む。

 体を淡い光が包み込みそれが消えると殆どの傷と骨折が治っていた。

 

 「それであれはどうなってるんでしょうか……」

 「えっとですね、数日前に読んだ本にここの黒竜は無類の酒好きと書いてあったのを思い出したんです。

 なので優奈さんが冒険者ギルドで離席してる間に保険にって思ってウィスキーを樽一杯造ってみたんです。

 異世界のお酒なのでだめだったらどうしようかと思ったんですが、なんとかなってよかったです」

 

 満面の笑みを浮かべて黒竜を眺める和人。

 「酒好きなんて知らなかったわ」と優奈は呟くと壁に背を預けて座り込んだ。

 すぐに移動しなければいけないのだが、なんだか気が抜けてしまったのだ。

 

 『がぁはっはっはっはっは。美味い美味いなこの酒は!』

 

 気づくと5つの樽すべてが空っぽになっていた。

 

 『うむ、うむうむ。そこの人間の男よ名は何という』

 「相馬和人と言います」

 『ソウマカズトか、我はそなたが気に入ったぞ! まさか酒を出して交渉してくる者がいるとは思わなんだ。

 しかも異世界の酒ときた! 実はなただの冒険者なら殺しておったが勇者がきた時点で殺さず叩き出すだけのつもりだったのだ。

 しばらく戦ってなかったので勇者と手合わせでもと思ったのだが、あまりにも弱くて困っておったのだよ。

 カズトが勇者を庇ってくれたおかげで殺さずにすんだ』

 「優奈さんは女神のせいでレベルが1に戻ってしまっているのです」

 『またあやつか、懲りずに勇者にちょっかいをかけおってからに。

 それにしてもカズトよ、我が怖くはなかったのか? いくら勇者が心配だったとはいえ、そなた程度では少し掠った程度でも致命傷だろうに』

 

 「もちろん怖かったですよ、足が震えてすぐにでも逃げ出したかった。だけど、優奈さんを一人にはしたくなかったんです。

 戦闘では足手まといかもしれない、でも優奈さんが傷ついて倒れた時にすぐに側に駆け寄りたかったんです。

 世界の脅威を退けてからずっと優奈さんは独りぼっちだったと聞きました、慕ったり頼ったりしてくれる人はいますけど優奈さんと友達になってくれる人はいなかったと。

 今日優奈さんと一緒にいて、優奈さんの戦いをみてその想いがもっと強くなりました。

 私は優奈さんの笑顔を守りたい、もう一人で孤独に戦わせたくないです」

 

 「和人さん……」

 『そうか、そうか! ふわっはっはっは。よしそなたに優奈の側にいれる力を授けてやろう! 両手を前にだすがいい』

 

 和人が両手を前にだすと手の上に手のひらサイズの黒と白のドラゴンの鱗が現れ和人の手のひらの中に消えていった。

 

 「これは?」

 『今な、カズトに我と我の妻である白竜の加護を与えた。詳しくは勇者に聞くがよい、ではまた会おうカズトよ! その時はまた異世界の酒を飲ませてくれ』

 「はい必ず! ありがとうございます黒竜さん」

 『アルト、我の名はアルトだ。カズトよ』

 「アルトさんまた会いましょう!」

 

 大きく翼をはためかせアルトが上空にあがっていく、そしてどこからかアルトより一回り小さい白竜が現れアルトと共に巣の奥へと飛んで行った。

 

 「信じられない……、和人さん自分が何したかわかってます?」

 「え、えっ? 何かまずいことしましたか」

 「はぁ、竜の加護二つも貰うなんて羨ましくなんてないんだからね!」

 「ちょ、優奈さん!」

 「冗談は置いておいて、まず竜の加護ですが半端なく防御があがります。

 私が渡したグローブは魔力を流さないと発動しませんが、加護は常時発動しています。

 というか、アルトの加護なら生半可な竜じゃ傷一つつけられませんよ。

 あとアルトは攻撃魔法に長けてますので魔法の威力が段違いにあがります。

 お嫁さんの白竜ですが回復魔法に長けてますので回復魔法の威力があがります。

 和人さんもうすでにチートですね、チート!」

 「なんかすごいの貰っちゃったみたいですね」

 「でも和人さんが頑張った成果です、守ってくれてありがとうございます」

 

 そういうと優奈は立ち上がり和人の手を握る。

 二人は淡い光に包まれその場から消えた。

 

 


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