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1.招待状

初めての投稿になります。

楽しんで頂けたら嬉しいです。


現在一人称もどきと三人称が入り乱れてます、順次三人称へ変更していきます。

 太陽の光が木漏れ日となって降り注ぐ。

 気づいたら優奈は森の中を歩いていた。

 森の中の道を進むと、サクサクと地面を歩く音が響く。

 

 しばらく道なりに進んでいたら、森が途切れ広場に出た。

 ちょっとした野球場くらいの広さの広場に、色とりどりの花が咲き乱れている。

 中央には光を反射しキラキラと光る透明な石の花が、中央の大きな石を囲むように咲いていた。

 石に近づくとそれは、青みかがった水晶の花だった。

 花弁は閉じられ中に人が閉じ込められている。

 

 腰まである絹糸のように細く波打つ銀の髪。

 瞳は閉じられていてわからないが、端正で美しい顔立ち。

 まるで彫刻のように均整の取れた身体に、踝まである白い服をゆったりと羽織っている。

 腰で簡単に纏められた服は、裾がめくれ細く美しい脚が見えていた。

 閉じ込められいるにもかかわらず、とても神々しくまるで女神のようだった……。

 

 もっと近くで見ようと吸い寄せられるように優奈は花に近づいていく。

 もう少しで触れられる、水晶の花に向かって手を伸ばそうとしたら体を揺すられ目を覚ました。

 

 「ユウナ様、起きてくださいユウナ様」

 「ん……」

 

 目を覚ますと美しい夢の残滓が、さらさらと砂のように零れ落ちていく。

 とても美しい夢を見ていた気がする。

 優奈は頭を振り気持ちを切り替える、まだ日は高いのだ。

 

 「ごめんなさい、ものすごい睡魔に襲われて気づいたら寝ていたわ。何かあった?」

 「魔王様よりお茶会のご招待状が届いておりますが、出席なさいますか?」

 

 そう言いながらリリアは金で縁取られた豪奢な招待状を手渡してきた。

 優奈を起こした金髪碧眼の美人はハイエルフのリリア、200年前優奈が世界の脅威を取り除いた直後からずっと補佐をしている。

 

 「魔王のお茶会?」

 

 執務室の机の上に置かれた招待状を優奈は手に取る。

 

 「なんでも四天王のライム様が珍しいお菓子を手に入れたので、ぜひ勇者様に召し上がって欲しいと」

 「魔王には会いたくないけど、ライムには会いたいなー」

 

 招待状の封を切り中身を見ると『愛しい勇者 ユウナよ、ライムがそなたの為に手に入れたお菓子を食べにくるがよい!

 そしてその後我とデートをするがよい!!』

 

 中身を読んだ瞬間優奈の手のひらから炎が生まれ招待状が灰になる。

 

 「相変わらず魔王は碌なことを書いてこないわね」

 「もうユウナ様! 机の上が灰だらけではないですか。誰が片付けると思ってるんですか!」

 「ごめんなさい、自分で片付けるから! 相変わらずおかしなことを書いてくる魔王がいけないのよ」

 

 風魔法を使いテーブルの上の灰を集めようとしたら、さらに灰が散らばってしまい慌てる優奈をリリアがすごい睨んでいた。

 

 200年前優奈は日本から勇者としてこの世界に召喚された。

 優奈を召喚した女神は、数年後に現れる世界の脅威を倒したら日本に戻してくれると約束した。

 数年死にもの狂いでLvをあげ、当時人界と交流のなかった魔界に赴き魔王に協力を取り付け

 死闘の末魔王と共に世界の脅威を倒し、あとは日本に帰還するだけという時に事件は起きた。

 

 そう、魔王による勇者への求婚。

 もちろん優奈は断った、魔王は嫌いではないけどやはり日本へ帰りたかったから。

 だけど、それを面白がった女神が優奈を不老不死にしてしまった。

 厳密には不老と病気等による死亡がないのだけど、レベルがあがりすぎてたせいでよほどのことがなければ怪我でも死ねない。

 人間の寿命だと魔王と釣り合わないので、「これで魔王と結婚しても大丈夫ね」

 そう言い放った女神を優奈はどれだけその場で切り捨てたかったか。

 別に魔王が悪いわけではないのはわかってるが、魔王が求婚しなければ日本に還れたのにという思いがいまだに消えずにいる優奈。 魔王もそれがわかってるのか、最初は真摯に思いを伝えていたが今では茶化した感じで優奈に接している。

 

 

 封筒の中にはもう一枚招待状が入っていた、こちらはライムの字でお茶会の日時が書いてある。

 最初はたぶん魔王に無理やりいれさせられたのだろう。

 ライムには会いたいけど、魔王にはあまり会いたくない……そんなことを考え

 顔を顰めて招待状を優奈が睨んでいると、リリアが困ったような顔をして優奈を見ていた。

 

 「魔王が悪いわけではないのにいまだに割り切れない自分がいるわ。もう200年も立つのにねぇ……」

 

 招待状を見つめながら、今はもう帰れない故郷に優奈は思いを馳せる。

 はぁとため息をつくと、招待状の角を人差し指の腹の上にのせくるくると回す。

 

 「出席の返事をしておいてくれる? ライムに会いにいくと書いておいてね」

 「はい、かしこまりました」

 

 苦笑しながらリリアはそう返事をした。




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