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エニウェトク環礁沖海戦2

1941年12月9日 戦艦山城射撃指揮所


砲術長高橋雄次中佐が水平線上に見え始めたマストを眺めていると艦長の阿部俊雄大佐から電話が入った。


「司令部より伝達がきた。砲戦距離は、二五〇(25,000m)だ。観測機を発進させるぞ」

「分かりました。どこからの観測ですか?」


本来ならば弾着観測は、敵艦隊の上空から行うのが理想である。


しかし...


「我が艦隊の上空からだ。そうすれば撃墜される可能性も低くなるだろうというのが司令部の判断らしい」

「なるほど。では、直ちに観測機を発進させます」


高橋は、返答すると再び外をみた。


その時、見張り員より報告が入った。


「敵艦隊の後方に戦艦らしき大型艦多数を確認」

「敵艦隊との現在の距離は?」

「三二〇(32,000m)です」

「あと少し、か」


連合艦隊司令部が指定してきた砲戦距離まであと七〇(7,000m)である。


が...


「敵戦艦、面舵に転舵!進路○度に変針します。距離三〇〇(30,000m)!」

「なにっ⁈ 三〇〇だと?」


この時期においては、25,000mであっても昼間砲戦距離としては遠距離であった。


だが敵艦隊は、それを超える30,000mで砲撃を開始しようとしているのである。


高橋の疑問ももっともだった。


「連合艦隊司令部より、全軍突撃セヨ。全軍突撃セヨであります!」


増速した各戦隊が白波を切って突撃を開始する。


「敵艦発砲!」

「この距離では当たらん」


初弾命中、それもこの大遠距離では当たるものではない、それが常識だった。


しかし常識とは破られるためにあるのかもしれない。


数十秒後、山城の前を進む旗艦扶桑の周りを太い水柱が囲んだ。


そしてその水柱が収まった時、彼は信じがたい光景を目にする。


扶桑の甲板上から二本の黒煙が立ち上っていた。


「ばかな...この距離で初弾命中だと?」


このままでは一方的に敵艦隊に殴られて終わるのではないか、そんな思いが頭をよぎる。


しかし、指揮官が弱気では部下の士気に差し障りがあると思い直し、紛れ当たりだと自分に言い聞かせ敵艦隊との距離が25,000mになるのを待った。


しかしその間に、再度扶桑の周りを水柱が囲む。


直撃弾こそなかったものの、やはり数発の至近弾があった。


敵弾は着実に水面下で扶桑を痛めつけている事だろう。


「敵艦隊との距離二五〇。扶桑変針します!」


待ちに待った報告に士気を奮い立たせると命令を下す。


「主砲、左砲戦用意。弾種徹甲」

「司令部より本艦へ通達。本艦の砲撃目標は敵戦艦三番艦」

「了解。目標、敵戦艦三番艦。測的始め!」

「巡洋艦及び駆逐艦、敵との交戦を開始しました!」



「敵巡洋艦との距離、一五〇(15,000m)!」

「敵巡洋艦、撃ち方始めました!」


矢継ぎ早に報告が飛び込んでくる中、第八駆逐隊の敷波、綾波、漣、浦波、そして第九駆逐隊の岸波、山波、川波、白波の駆逐艦8隻は、白波を蹴立てて敵に突き進んでいく。


目標は、味方戦艦部隊に砲撃を開始した米戦艦群。


第八、九駆逐隊の突撃を見た米駆逐艦が慌てたように追従してくるが敷波型駆逐艦の誇る39ノットという高速力がそれを許さない。


敷波型は、米艦隊との決戦を念頭に設計をされた大型の艦隊型駆逐艦で、2,830tの艦体に12.7連装砲3基、25ミリ三連装機銃2基、13ミリ単装機銃3基を有し、五連装61センチ魚雷発射管3基15射線を持つ。


だが、戦艦に向けて驀進する敷波型駆逐艦8隻を脅威とみた米巡洋艦、それも現時点で最新鋭のニューオリンズ級重巡洋艦3隻が接近してきた。


前部の20センチ砲6門を撃ちながら前進してくる敵重巡は、駆逐艦にとっては戦艦並みの強敵である。


そのため第八、九駆逐隊は敵戦艦への雷撃を断念、目の前の敵重巡に雷撃を敢行することにした。


「敵重巡との距離、一〇〇(10,000m)!」


の報告と同時に全艦が面舵一杯をとり雷撃を敢行した。


その直後、唸りを上げて飛来した敵の20センチ砲弾が第八駆逐隊旗艦敷波の一番砲塔を串刺しにした。


第一砲塔が高さ30mまで飛ばされるほどの大爆発を起こした敷波は、砲弾命中からわずか40秒でその艦体を海に沈めた。


生存者は、乗組員273名中15名であった。


そして第八、九駆逐隊は8隻中3隻を失い、3隻が戦線を離脱する。


しかし、その戦果を残した米重巡洋艦もその代償を求められることになる。


海中を進んだ120本の酸素魚雷のうち3本が2隻の米重巡を突き刺し、艦の奥深くに食い込んで炸裂したのである。


戦艦でも当たりどころによっては一撃で戦闘力を失う酸素魚雷が、戦艦よりもはるかに装甲の薄い巡洋艦に命中したらどうなるかは容易に想像できる。


帝国海軍の開発した、悪魔ともいうべき魚雷の最初の生贄にされた哀れな米巡洋艦は敷波と同じ末路を辿った。


彼女達2隻の沈没までに要した時間は3分だった。


この時はまだ、第八、九駆逐隊の決死の突撃の成果はこれだけで終わったかに見えた。


だが、酸素魚雷の特徴は、高威力、無航跡の他にもう一つあった。


その長大な射程である。


そして無航跡の槍は未だ海中を突き進んでいた。













2話で海戦パートを終わらせるつもりでしたが、もしかしたら(ていうかほぼ100パーセント)2話を超えると思います。

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