六六艦隊計画、始動!
1930年1月21日東京
帝国海軍の艦政本部においてある建艦計画が産声をあげようとしていた。
完成なったアメリカのダニエルズ・プランに対抗すべく帝国海軍は、量より質を求めた建艦計画を考案していた。
また、米海軍のダニエルズ・プランにおける重大な欠点を分析し同じ轍を踏まないべくしていた。
その欠点とは、速力にあった。
コロラド級
性能諸元
排水量基準:32,500トン
満載:33,590トン
全長190.20m
全幅32.92m
吃水9.07m
機関蒸気タービン 4軸:28,900 shp (22 MW)
最大速21ノット
乗員士官:58名 兵員:1,022名
兵装45口径40.6cm砲:8門
51口径12.7cm砲:8門
38口径12.7cm砲:8門
56口径40mm対空砲:36門
70口径20mm対空砲:43門
サウスダコタ級
性能諸元
排水量43,200 t
全長208 m (684 ft)
全幅32 m (105 ft)
吃水10.1 m (33 ft)
機関蒸気ターボ電気推進4軸、60,000馬力
最大速力23 kt (43 km/h)
航続距離
乗員
兵装50口径16インチ砲12門
53口径6インチ砲16門
50口径3インチ対空砲8門
21インチ魚雷発射管2基
レキシントン級
性能諸元(計画値)
排水量常備:43,500t
全長266.5m
全幅32.2m
吃水9.1m
機関蒸気ターボエレクトリック16缶/4軸
180,000馬力
最大速力33.3ノット
航続距離10ノット/12,000海里
乗員1,297名
兵装50口径Mk 2 40.6cm砲連装4基
15.2cm砲単装16基
7.6cm砲単装高角砲 6基
533mm魚雷発射管8門
上記のコロラド級戦艦とサウスダコタ級戦艦、レキシントン級巡洋戦艦の速力を比較すれば一目瞭然の通り、コロラド級が21ノット、サウスダコタ級が23ノットそしてレキシントン級は33ノットと戦艦と巡洋戦艦の速力の差が激しいのである。
コロラド級とレキシントン級だと12ノットの差、サウスダコタ級とレキシントン級でも10ノットと、戦艦と巡洋戦艦の速力の差が違い過ぎて、一緒に艦隊行動を組むことがほぼ不可能なのである。
無理にでも艦隊行動を組むとレキシントン級の快速を生かすことができなくなってしまう。
しかし艦隊を二分すると各個撃破を許すことになる。
このことを恐れていた帝国海軍だったが、速力、防御力、兵装の全てを取るなら大出力の機関が必要であった。
そして帝国海軍は、ロ号艦本式缶の製造に成功する。
それまで使用されていたイ号艦本式缶を改良したものであり、高出力を期待することが出来た。
また、資金面において米海軍と同じ41センチ砲搭載戦艦16隻を建造することは不可能であった。
もし、無理を押して八八艦隊のような建艦計画を進めた場合、帝国の経済が破綻するとの結論が大蔵省より出された。
そのため帝国海軍は、新たに10隻の戦艦を建造し、八八艦隊計画において唯一建造された長門型戦艦と合わせ、41センチ砲搭載戦艦6隻、46センチ砲搭載戦艦6隻の計12隻の戦艦で体裁を整えることにした。
しかし、たとえ10隻でも帝国海軍にとって重荷なのは疑いようがなく、大蔵省が難色を示していた。
そこで、全ての弩級戦艦と、帝国海軍が現在保有する長門型を除いた8隻の超弩級戦艦の中から2隻を廃艦としてスクラップにすることでようやく大蔵省を頷かせることに成功した。
大蔵省が頷いたことで帝国議会もこの建艦計画(後に六六艦隊計画と命名)を承認したのである。
だが、ここでどの戦艦を廃艦とするかで議論が沸騰した。
最初は、36センチ砲を8門しか搭載していない金剛型を廃艦にすべきとの意見が強かったが、30ノット近い高速は魅力的であり、案外使い勝手もいいだろうという意見もまた強かった。
伊勢型、扶桑型は36センチ砲を12門搭載しており、その火力は捨て切れるものではなかった。
最終的に伊勢型、扶桑型では、扶桑型の方が低速であり、主砲の配置も多少の問題があったため、扶桑型を廃艦とすることになった。
これが六六艦隊計画成立までの一連の流れである。