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遥かな海の星の下、君と出合った奇跡

作者: 蓮城

地の文はナレーションとして活用することもできます。



登場人物:

百武千晴ひゃくたけちはる  :

嶋倉秀仁しまくらひでと   :

百武晴清ひゃくたけはるきよ

運転手・ブレーキ音      :


 夏の夜。とある高校の片隅に、二人の生徒がいた。女子生徒の名は百武千晴ひゃくたけちはる。男子生徒の名は嶋倉秀仁しまくらひでと


千晴  「・・・誰もいなくなったみたいだね」

秀仁  「そうだな。なんか雰囲気あるな、夜の学校」

千晴  「ここはさ、名門校だから戦前からあるらしいよ。戦争の時には負傷者がたくさん運び込まれたんだって」

秀仁  「そっか・・・痛かっただろうな」

千晴  「そうね。・・・で。肝試し、続ける?」

秀仁  「・・・うん」


 千晴は正門から学校の中を見やった。古びた学校の建物は、今日は一段と人気無く茫洋と立ちすくんでいるように見えた。懐中電灯も無い二人は、門をよじ登って越える。


千晴  「さて、何か話をしながら行こうか。うんと恐い話ね」

秀仁  「 分かった・・・」

千晴  「 じゃ、わたしから。ええと・・・」

 

千晴がふと思いにふける。顔を上げたとき、彼女は別人のような顔つきになっていた。


??  「ガダルカナル戦のことを話そうか」

秀仁  「へ?今なんて?」

??  「ガダルカナル戦」

秀仁  「・・・」

??  「あれはひどかった。ジャングルがそこら中にあってね。敵も味方も分かったものじゃない。」

秀仁  「千晴・・・?」

晴清  「今は百武晴清ひゃくたけはるきよだ」

秀仁  「百武、晴清・・?」

晴清  「話を続けてもいいかい?」

秀仁  「・・・どうぞ」


晴清  「どこまで話したかな・・・、あぁ、ジャングルか、うん。ところでガダルカナル戦について君はどのくらい知っている?」

秀仁  「え?ガダルカナル戦?確か第二次世界大戦のときの・・・でしたっけ?」

晴清  「そうだ。他には?」

秀仁  「・・・ごめんなさい。それくらいしか」

晴清  「そうか。今の子供はその程度しか知らないのか・・・我々が身命を捧げたあの大東亜戦争のことは、もはや忘れられてしまったのか・・・」

秀仁  「あの・・・」

晴清  「あぁ、すまない。それで、だ。ジャングルの中で我々の部隊は孤立してしまった。ジャングルというのは厄介な場所でね。補給部隊が来れないからすぐに食糧難になってしまったんだ」

秀仁  「食糧難ですか?でもジャングルならバナナとか」

晴清  「あればよかったんだけど、食べられそうなものは全て食べてしまってね」


晴清  「食べるものが何も無い戦場ほどひどいものはない。ついに人が人を食べるくじ引きが始まってしまったんだ」

秀仁  「人が、人を食べる?」

晴清  「そうだよ。戦争を知らない君たちには信じられないだろう」

秀仁  「・・・それで?」

晴清  「当たってしまった僕は食われる前に逃げ出したんだ。味方に殺され食われるか敵に殺され踏みにじられるか、ひもじい思いをしてジャングルで死ぬかのどれかになってしまうのだけどね」

秀仁  「どうなったんですか?」

晴清  「幸い敵には会わなかった。幸か不幸か味方にも、ね」

晴清  「でも、僕は病気にかかった。三日三晩熱が出て、そのまま死んでしまったんだ」

秀仁  「え・・・?」

晴清  「苦しかったけど、死ぬ瞬間は楽だったね。でもひとつだけ、心残りは家族のことだったんだ」

秀仁  「家族、ですか」

晴清  「あぁ。今、幸せそうな孫の姿が見られて安心したよ」

秀仁  「孫・・・も、もしかしてあなたは!」

晴清  「それでは、いつでも君たちを見守っているよ。さようなら」

秀仁  「ちょっ・・・!」


 千晴?は糸が切れたかのように崩れ落ちる。すぐに抱き起こす秀二。


秀仁  「千晴・・・?千晴!?」

千晴  「・・・あれ?しゅうくん」

秀仁  「・・・帰ろう」

千晴  「え?始まったばかりじゃ」

秀仁  「帰ろう!」

 

秀仁は強く言い、千晴の手を引っ張った。その顔は蒼白だった。門を乗り越え、外に出た。そのまま走り出したそのときだった。


運転手  「あ、危ない!」


 突如視界に広がるライト。鳴り響くブレーキ音。かき消される声。二人はその場から動くことができなかった。それでも千晴を守ろうと被さるように抱きしめる秀仁。その刹那、時は・・・。


千晴  「・・・」

秀仁  「・・・」

千晴  「・・・あれ?」

秀仁  「・・・え?」


 二人が目を開けるとそこは車道ではなく先ほどまでいた校庭だった。何が起きたか分からず周りを見渡す二人。門の向こう側にはパトカーのランプらしき光と、事故を起こしたであろう車が見える。そのとき、秀仁の頭に声が聞こえてきた。


晴清  「話を聞いてくれたのと、孫を守ろうとしてくれたお礼だ。これからも頼んだぞ、青年」


千晴  「・・・ねぇ、よくわからないけど、助かったのかな、私たち?」

秀仁  「・・・なぁ、千晴?」

千晴  「なに、しゅうくん?」

秀仁  「俺さ。さっき、千晴のおじいさんに会ったかもしれない。これから話すことは、信じられないかもしれないけれど・・・」



完。




お久しぶりです。蓮城です。

ようやく投稿したと思えば季節はずれなものでごめんなさい。ストックがないんです(切実)


この作品は一応台本です。もしやりたいな、なんて方がいらっしゃれば一言感想にでもメッセージ下されば励みになります。


うろな企画の方は現在プロットを練り直しています。その他連載も同様です。


今後も、よろしくお願いします。



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