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ワガママ姫とイジワル殿下 2

 幸いにもこちらに注目している人は少なく、始終のやり取りも、表向きお互い笑顔だった為か、

 レイと私の喧嘩に気がついた人はいないようだった。

 ぐしゃぐしゃになった髪を必死で直していると、お兄様がそれを手伝うように頭を撫でてきた。


「はぁ…殿下…大変申し訳ないですが、お任せして宜しいですか?」

 と、溜息混じりにお兄様はレイに声を掛けた。

 お任せするとは内緒話の内容の事ではなく、私の事を言っているらしい。


「ああ、すまん。任せろ。ほら、レティ。踊りに行くぞ」

 半ば強引に手を引こうとするのでますます面白くない。

 2人して絶対に何か企んでいる。


 そうはいかないとばかりに、レイの腕を振り払う。

「お断りします。と申し上げましたが?無作法な方のお相手はご遠慮蒙ります」

 ツンとすまして言ってやる。

「まぁ、そう言わずに、レティももう大人なんだから、殿下と歩み寄るのも必要なんじゃない?」


 普段の兄らしからぬ発言にますます眉をひそめる。

 噂の事はお兄様の耳にも入っている筈だし

 そうでなくとも私が本気で嫌がっている時は、無理強いする様な人では無いのに。


「お兄様まで!いったい2人して何を企んでおりますの?」

 私を無視してお兄様と話をするレイにも、

 その内容を教えてくれないお兄様にもとても腹が立っていた。

 昔から私は常にのけ者扱いなのだ。

 少々泣きたくなってくる。


 そんな事を知ってか知らずか、

 はあぁ〜と大きな溜息をしてレイが手を差し伸べる。


「宜しかったら、一曲お相手願いたいのですが?」

 さも面倒くさそうに言われて、喜ぶ淑女が何処にいるのかと言いたくなる。


「宜しくないので、他を当たって下さいな」

 これまた満面の笑みで答える。


「お前ね、そんなに兄貴を困らせたいのか?俺もこのままだと本当に恥をかく訳だが?」

 王子がフラれたとなると、確かに暇な世間の格好のネタになるだろう。


 私にしてみれば、痛くも痒くもないし、

 偶にはそういう目にあって見ればいいとさえ思う。

 のだけど…


「あなたが噂を気にするような方だとは思いませんが、お兄様が困ったことになるのは頂けませんので、仕方ありませんわね」

 諦めて折れることにする。

 関係の無いお兄様が色々言われる事になるのだけは避けたい。


 …が、やはり何か釈然としない。


 首を傾げながら、訝しげにレイに手を差し出すと、

「よし、ちゃちゃっと踊るぞ」

 などとグイグイ引っ張られる形で会場の中央まで連れて行かれた。


 ダンスホールまで来てしまえば、

 流石に注目が集まるので、文句も言い返せない。

 レイの肩に手を置き、空いた方の手をレイの手に添え、

 ゆっくりとワルツに合わせて踊り出す。


「へぇ…お前、一応踊れるんだな」

 意地悪そうに声をかけて来る。

 足を踏んづけてやろうかと、サッと右足を出したが、察しがいいレイは、

「おっと!」なんていいながらヒラリとかわす。相変わらず忌々しい。


「レイは噂を知らないんですの?あまり長い事踊っていたくないのですが?」

 ヒソヒソと小声で会話する。

「噂?……ああ、お前が俺の妃候補No.1とかいう奴か。俺は気にしないぞ。結婚相手なんて誰でもいいからな」

 懐が広いのか、節操が無いのか、レイは恋愛に関しては本当に無頓着だと思う。


「ワタクシが気にするんです!…大体、あなた私の事恋愛対象として好きって訳じゃ無いでしょ?」

 思わず地で話してしまう。


「女として見てるかと言われれば、まあ、見てないな。そもそもお前はトラブルばっかり持ってくるのが得意すぎるから、お断り出来るならしたい所ではあるが…結婚に関しては俺に権限があっても無いような所があるからな」

 お前だってそうだろう?とレイは続ける。


 確かに皇太子という立場上、周りの打算的な思惑が付いて回るだろうから、

 レイがこの人がいいとか嫌だと言っても、

 はい、そうですか。とすんなり決まるとは限らない。

 噂を流して事実にしてしまえばいい。なんて考える人だっているはずだ。


 そもそも最終的な決定権は伯父である陛下にあるのだ。

 私も兄もお母様が国王の妹という事もあって、

 他の公爵家に比べればそういう点はあるかもしれない。


 お兄様にしたって、レイの次に王位継承権があるのだから、

 おいそれと決められないだろう。


 暫く考えてから、それでも…と口を開く。

「お父様は私が本当に嫌だって言えば、無理強いする様な事はしないわ。私は自分で結婚相手を選びたいの」


 ちゃんと恋をして、好きな人と結婚したいと思う。

 儚い夢かもしれないけれど、捨て切ることはどうしても出来ない。


「ふーん。そんなに俺が嫌なのか。流石にそこまで嫌われてるとは思わなかった」

 とレイは肩を竦める。


「別にレイが嫌いって訳じゃないわ。ただ恋愛対象として見れないってだけよ。お兄様よりもお兄様してるし」


 これは本音。物心着く頃には父だけでなく兄も王宮に出入りする様になっていた為、

 小さい頃から王宮で過ごす事が多く、

 兄が訓練中の時などはレイが相手をしてくれる事が殆どだった。


 その為、私が何か悪いことをすると決まって叱ってくるのは、

 レイの役目になっていた。

 お兄様もお父様も私を叱る事はなかったので、それは嬉しい事でもあった。


「まぁな、俺がお前を女として見れないのは、その辺もあるんだろうな。とはいえ、お前みたいなのが実の妹じゃなくて良かったとも思うぞ?」

「どういう意味かしら?」

「言葉通りの意味だが?」


 ふふんっと鼻で笑う。どうしてこう私には横柄なのか問いただしたくなる。

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