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3章 プロローグ

 ーーリン・プ・リエン王国 王城


 開拓地放棄の一件からここに戻って来た数ヶ月の間は、目まぐるしい日々を送る羽目になった。

 まず帰還早々兄王エルネストから呼び出され、謹慎処分を言い渡される。


 その間にここ3年分の報告書及び始末書の作成や開拓計画の破棄の検討会議が行われたりと、謹慎処分とは何なのかをまずエルネストに辞書を引いてもらいたいと思うような、開拓地にいた時よりも明らかに増えてしまった仕事の山に悩まされ、更にその直後兄上(リオネス)東開拓計画(死刑宣告)が言い渡され、兄上に泣き付かれ…


 様々な対応に追われた僕は、いっそ全て投げ出して本気でウイニーへ逃げようかという衝動に駆られる日々が数えきれないくらい続くいていた。


 しかも追い打ちをかけるように、唯一の心の支えであったレティから初めて会った時に彼女が使っていた偽名の持ち主"ダニエル"と偶然にも知り合い、一緒に旅をする仲になったと仄めかす内容の手紙が、その一番忙しかった時期にごっそりと届き、誰かそいつを殺してくれと願うばかりで、仕事も恋も全てにおいて僕はもう限界寸前の所まで来ていた。


「ダメです!もう耐えられません!!ウイニー…いや、ベルンに行かせてください!僕は彼女の所へ行っていっそ好きだと告白してきます!」


 机の上にあった書類を全部投げ飛ばし、バタリと前に倒れこんで、僕はもう何もしない宣言をしてみせた。

 宣言してみせた。けど、今部屋には僕以外には誰もいなかった。


 いつもならここでゲイリーか兄上がツッコミなり嫌味なりを言ってくる所なのだが、ゲイリーは鯨波の偵察、兄上は僕との取引によってある場所に雪狐せっこと一緒に匿っているので王城(ここ)にはいない。


 はあぁ〜と身体よりも大きな溜息を吐き出して八つ当たりした書類の束をかき集める。


 大体始末書ってなんなんだ?こんなに書かないといけないものなのか?

 こんな紙切れの山に何の意味があるっていうんだ。どうせ全て水の泡になるっていうのに。


 と、集めた書類をまた机に叩きつけようとした瞬間、コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。


「はい」

 と返事をすると、外から女官のくぐもった声が聞こえてきた。

「フィオディール殿下、陛下がお呼びです。至急謁見室へとの事です」


 エルネストが?

 僕1人呼び出すなんて珍しいな…


 僕は常にエルネストの前では"良い子"を演じ続けていた。

 そのお陰で、呼び出されるのは例外なく兄上ばかりで、今みたいに僕が1人だけ呼び出される何て事は一度も無かった。


 少々訝しみながら「判りました」と女官に返事を返し、兄王のいる謁見室へ向かう事にした。


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