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ワガママ姫の逆襲 2

 =====



 思案しているうちにウトウトと眠ってしまい、気がつけば夕刻だった。

 目が覚めると、先日の出来事を思い出し、ふつふつと怒りが込み上げ現在に至る。

 いや、怒りというより悲しみに近いかもしれない。


 暫くすると、コンコンとドアを叩く音がした。

「どうぞ」と言うと、頬を高揚させたメルが入ってきた。


「ご苦労様。ちゃんと殿下には会えた?」

 私が問いかけると、やはり頭が取れるんじゃないかって位、首を縦にふる。


「王城って凄い所ですねぇ…まるで天国みたいでした。」

 と、夢でも見てきたかのように話すので思わず笑ってしまった。


「お手紙、預かってきました」

 差し出された手紙を受け取り、内容を確認する。

 その内容に思わずニヤリとしてしまう。


「いい知らせだったんですか?」

 と、私に釣られた様にメルが笑顔で聞いてくる。


 成長する度、憎らしくなっていくレイとは180度違うその反応に、

 メルの爪の垢でも飲ませたらマシになるかしら?なんて考えてしまう。


「ええ。今の所はね。街で何か噂はあった?」

 その問いにメルがビクッと反応する。

 まぁ、その反応で大方当たりだと確信出来るけど。

「大体予想は付いてるから、正直に聞いたことだけ話して?」


 そう言うと、メルは躊躇しがちに報告を続ける。

「えっと、昨日の舞踏会で皇太子様とお嬢様が始終一緒に過ごされ、仲睦まじく寄り添っていらっしゃった。とか、婚約発表が真近だとか…アベル様に関する噂は特には無かった…です」


 あの…本当に…?と上目遣いで聞いてくるので、コツンと額を叩いてやった。

 やっぱりねぇ…と大きく溜息を吐く。

 多分、今回の手紙のやり取りで、噂は更に確信めいて来てしまうのだろう。


「娼館の皆は元気だった?」

「あ、はいっ。お嬢様にお礼を伝えてくれって言ってました。皆も会いたがってたです」

 嬉しそうにメルは話す。


 メルも最近では屋敷の雑務に追われて、全く顔を出していない様子だったので、

 やっぱりメルに頼んで良かったとホッとする。


「お礼を言うのは私の方なのに。きっとまだまだお世話になるわ。そうね、そのうちこっそり会いに行こうかしら?」

「ダメですよ!本来お嬢様が行くような場所じゃ無いんですから!御用があれば僕が行きます!」

 慌てて止めに入るので「ざーんねん」とおどけて見せる。


「とりあえず、噂はそのままにしておいて。あ、ダミーの手紙は私が処分するから返して頂戴。んー。そうねぇ、後は明日また情報収集を頼むかも」

 ありがとう。とお礼をいってメルを下がらせた。




 さて、手紙の内容を再確認する。


 コルネリアの滞在はすんなり許可が降りたらしい。

 名目はレイが気になったから。

 というものではなく、

 女友達の居ない私の為に少し話し相手になってやって欲しい。

 とのことだった。


 ここはちょっと私的に残念な理由ね。

 まぁ、計画に支障は無いのだけれど。

 滞在期間は結局5日になったようだ。これは正直、ありがたい。

 2〜3日と言った手前、作戦実行の為の日数が割とカツカツだったので、

 少し余裕が出来たと言える。


「問題はダールか…」

 ベッドに「ぼすっ」寝そべり、天井を見上げ呟く。

 こればかりは運を天に任せるしか無いかなぁ…



 =====



 翌日、まだ外が暗いうちに起床する。こっそり誰も居ないキッチンへ行き、

 適当に軽く食べ物を漁って、口に頬張るとそのまま部屋へ戻り、

 身支度をパパッと整える。


 キャスケットに伊達眼鏡、コンビネゾンの短パン。

 ぱっと見少年のような出で立ちで、

 一目につかないように帽子を深く被り屋敷を出る。


 城の正面の門は、この時間だと当然まだ解放されていない。

 裏手にまわり、王族しか知らない筈の、脱出用の通路から城へ潜入する。

 幼い頃、レイに教えられた場所だ。


 備え付けの松明に火を灯し、通路の奥へ進む。


「確か...この辺りだったかしら?」


 壁の取っ手を掴み力一杯引っ張る。

 すると、ゴゴゴゴゴ…という音と共に壁が少し動いた。

 松明の明かりを消し、隙間から中へ入る。


 出た先はレイの部屋の浴室だった。


「ビンゴ♪」

 思わず声が漏れてしまい、慌てて口を抑える。

 音がしないように慎重に扉を開ける。


 すると、「動くな!」という声と同時に、

 壁際まで押しやられ、羽交い締めにされてしまった。

 私の首もとには、鋭く尖ったナイフが突きつけられていた。


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