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タナカの異世界成り上がり  作者: ぐり
王国放浪編
46/114

Route46「この世界の始まりについて――」

( ´_ゝ`) 強化は終わったといつから錯覚していた?

 封印された地。世界に溢れる過剰な魔力が集う場所。永い時のなかで幻獣がただ生まれ喰らいあい消えていった場所。そんな代わり映えしなかった灰色の世界がめずらしく蠢いていた。

 超常の強者たる幻獣。それをはるかに超える漆黒の者たちがこの世界を蹂躙していた。ここは誰もいない封印された地。この戦いは誰に知られることのないはずだった。しかしたった独りだけこの戦いを見つめている者がいた。


「アヤツら……。いったい何者じゃ……」


 彼女は深淵の魔女ベアトリス。代々その力を継承し続けてきた史上最強の魔女。世界の管理者たる使徒はおろか神代の化物である幻獣をも超えた存在である。さらにいうなら力だけではなく知識をも継承してきた彼女は大賢者をもこえる真理に最も近き者だった。その彼女が力を計る術に長けていたのは何ら不思議ではない。しかしその彼女をして理解の及ばない存在がそこにいた。

 例えばいま目の前で戦っている魔族。ベアトリスの継承した知識にあるかつて存在した歴代最強といわれた魔族の王。それをはるかに超える力を感じる。その力は並みの精霊と単身戦える実力が窺えた。

 さらになぜか自分を模した魔法を放つ精霊。その魔法力から判断するにかなり上位の精霊。あと三階位も昇れば世界管理者筆頭たるモリナーガと並ぶほどの実力になるであろうことが読み取れた。

 そして一番の問題。灰色の世界を飛翔する漢。幻獣に死をもたらす魔法は理解不能。潜在魔力も予測不能。存在自体有り得ないような存在がそこにあった。

 幻獣を殲滅し高笑いを続けていたその漢から世界を圧迫するような気配が発せられる。信じられないほどの魔力の高まり。ベアトリスは大魔法が発動するのを感じ取る。


「これだけの魔力……。いったいどれだけの奇跡を体現する気じゃ……」


 そして奇跡が発現する――。

 そのときベアトリスは見た。

 その漢に後光が差すのを。

 漢の頭上に球体が現れたのを。

 突然二つに割れた球体。

 中から紙ふぶきが舞い降りる。

 そして垂れ下がった布地にはビクトリーの文字が――。


「――ってそれだけかい!」


 深淵の魔女のツッコミが封印の地に鳴り響いた。






「――なるほど。深淵の魔女か……、って知らねえよ! カクさん知ってるか?」


 タナカの前にツッコミとともに現れた深淵の魔女ベアトリス。最初こそ突然現れた半透明のばあさんに下半身がヒュンとなったタナカだったがそこは強くてカッコいい漢タナカ。臨機応変に幽霊との意思疎通を図っていた。


「創世の時代から続く魔女の系譜だな。それくらいしか俺も知らねえ。創世神様の使徒だった上司ならなにか知ってたかも知れねえが」


 チームタナカの知恵袋カクさんをもってしても深淵の魔女の詳細は分からなかった。


「それほどの力をもつ精霊であれば創世神様の使徒だと思っておったが違ったか」


 これが目の前のオッさんの使徒だと知ればどれほど驚いたことだろうか。しかしベアトリスはそのあたりには関心をよせない。今の彼女には目的があった。そのためにまずは必要な知識の講釈を始める。


「まあよいわい。わしから話そう。深淵の魔女について……いや、この世界の始まりについて――」






 ――世界の狭間。暗黒の世界。まるで星々が輝く宇宙(そら)のように数多の世界へ通づる道が煌めいていた。

 その暗黒の世界に一柱の神が誕生する。名をウムス。神ウムスは暗黒の世界に道を築き新たな世界を産み落とす。創世神となったウムスはそこに海を創り大地を創り宇宙を創り数多の生き物を解き放った。そしてこの世界を管理する者を生み出し理想の世界を築きあげていった。永遠に思えた至福の時代。しかし突然に終わりがやってくる。

 それは創世神ウムスと同等の存在の襲来。暗黒の世界より生まれし創世の力を持つもの。名をキョウ。ウムスよりはるか古くから存在したこの神はすでに世界を創りそしてこわしていた(・・・・・・)

 なぜそうなったのかは解らないが、キョウは自分が創った世界をこわし喰らいさらに他世界をも喰らおうとした。

 創世神ウムスの世界に舞い降りた破界神キョウ。ウムスとキョウは世界の存亡をかけて戦う。しかし世界を創りこわすことのできる存在同士の戦いはその余波だけで世界の存続を脅かした。ウムスは戦いをやめ自身を世界の守りとするため世界と同化する。

 強力な結界に包まれた世界。追い出されてしまったキョウは結界に包まれた世界に纏わりつき虎視眈々と隙をうかがい続けるのだった。


「――そんなことがあったでござるか」


 好奇心旺盛なスケさんが感心している。


「まあそんなところだな。ちょっと説明が固すぎるが合格だ」


 ドヤ顔でうなずいているタナカ。その目は同好の士を見つけた喜びに満ち溢れていた。


「なんでおぬしそんなに偉そうなんじゃ。それとその生暖かい眼差しをやめい」


 ベアトリスは話を続ける。

 創世神ウムスは世界を存続させるため子どもたちに役割を残した。自分の使徒にはこれまでと変わらず世界を管理していく役割を。人間には異界より新しい血を呼び込む役割を。そして深淵の魔女には自分にかわる世界の守り手を生み出す役割を。

 ウムスを失った世界管理の負担は大きなものだった。使徒たちは自ら新たな使徒を作り出し世界の安定に奔走した。最も力ある使徒モリナーガを筆頭としよく世界をおさめた。しかしその管理は完璧とはいかず淀みが生まれこの封印の地を生み出すこととなる。

 いっぽう人間はというと一部の者を厳選し役割を遂行することにした。破界神キョウが侵入の機会を窺っている状況で無作為に道を開くわけにはいかなかったからだ。役割を担った者たちは周期的におとずれるウムスの力が強まる時を待ち召喚の儀を行った。この時ばかりはキョウも侵入を抑え込められ召喚が成功する。こうして呼び出すのは古く原初の世界に近い者。すでに神の加護から離れた強き人間。こうして人間たちは新しい血を取り込み続け神への耐性を強めていった。

 そして深淵の魔女。なぜ守り手の役を使徒ではなく人間に与えたのか。人間をはるかに超える力をもつ使徒。しかし経験あるいは信仰を得ることであがる階位には限界があった。最高位に到達したとしてもその力は神の前には無に等しいだろう。そのため選ばれたのは可能性を秘めた弱き者――人間。だが可能性があるとはいえそれは限りなく小さく遠い道のり。深淵の魔女はいつかたどり着くであろう頂を目指して代々その力を継承し続けていった。人を超え使徒を超えやがては神の域を目指す旅人となったのだ。


「――生まれてから数百年。そのほとんどを美しい筋肉の研究に費やしてきたが……。もう少し歴史を学んでおくべきだったか」


 カクさんは初めて聞く創世の歴史に唸り声をあげている。いったいどういう教育をしていたのか元上司。創世の歴史に並ぶ謎である。


「まあなんとなくわかったが……。なんかこの世界やばくね?」


「うむ。やばいのぅ。しかもさらにとてつもなくやばいことになっておるよ」


 事の発端はプリン王国が行った勇者召喚。時を無視した召喚は隙を窺っていた破界神キョウにとってまさに好機であっただろう。召喚に際して己が化身を侵入させることに成功した。

 深淵の魔女ベアトリスはこれを察知する。いや、創世神ウムスより引継し神の力が教えてくれたといってもよい。運命の敵の出現を。しかし時は満ちていなかった。それはあまりにも早過ぎた。

 本来の予定からすれば計画はまだ始まったばかりといってもよかった。すでに使徒を超える力を有していたベアトリスだったが、いまだ神の力を振るえる段階にはない。あとどれほどの世代が必要とされたのか。いまとなっては知る由もない。

 キョウの化身が出現した以上は深淵の魔女たる自分が相手をするしかなかった。化身とはいえ現在のベアトリスの力では敗北は必至。そこで罠を張りキョウの化身を封印された地へ閉じ込めようとした。この地には数多の使徒が創り上げた結界がある。長い年月をかけ世界の魔力で強化された結界ならば化身を封じることができる。そう考え事に及んだのだが結果は失敗。しかしそのまま化身を放置すれば世界は内側から壊されてしまう。もはやなりふり構わず自分もろとも化身を封印された地へと堕としたのだった。


「――わしはキョウの化身に敗れこのような姿でこの地をさまよっておるというわけじゃ」


「へえ……。ん? ちょっと待て。ということはここにやばいやつがいるんじゃ……」


 タナカは急に青ざめ冷や汗をかきはじめる。聞いた話からすればかなりやばい相手。もはやアレがあんな感じでそんなほどにまずい状況だった。


「心配せんでもすでに奴はここから出ていきおったよ。いや出られたらまずかったんじゃが」


 ベアトリスが言いにくそうに語る。


「夏の頃じゃったか。西のほうでとてつもないエネルギーの放出を感知した。そのエネルギーは空間を不安定化させるほどでのう。これを利用されてヤツにこの地から脱出されてしもうた」


「いないのか。脅かしやがって……。いや、残念だな。オレのカラーテで瞬殺してやれたのに」


 すばやく気持ちを切り替えたタナカがシャドーボクシングで強気な姿勢をアピール。ちょうど夏頃に自身がある西の地を消滅させるほどにやらかしたことも忘れ、口で「シュッ、シュッ」と効果音をつける演出に夢中になっている。


「まあいいか。それにしても原因はプリン王国の勇者召喚か……。なんかもういろいろなもんがそこから始まってんだなあ」


 自身も召喚にまきこまれたことを思い出す。


「なんとも皮肉なことじゃよ。救いを求めて破滅を引き寄せたんじゃからのぅ。しかしモリナーガも望んだことではあるまいて。アレはアレで世界を救おうと足掻いておるんじゃろうからの。まあアレのやりようが正しいとも思わんが」


 創世神を失った絶望か。はたまた世界を託された使命感からか。力を求めたモリナーガは今や自身を神と名乗り己を信仰するもので世界を統一しようと目論んでいた。


「うちの上司もその犠牲になったというわけか」


「南無南無」


 しみじみと言葉をこぼすカクさんとタナカから教えられた魔法の言葉を口にするスケさん。彼らの思いはきっとかの上司の眠りを安らかにしてくれることだろう。筋肉フェチだったかもしれないかの上司の眠りを……。


「うむ、なんとも小腹のすく話だ。とりあえずさしあたって危険がないことと、近いうちに世界がやばいってことがわかったな」


 ウンウンと話をまとめるタナカ。もはや故郷のお菓子のことで頭の中がいっぱいなのは些細なことだろう。


「キョウの化身は今も世界のどこかで暗躍しておるじゃろう。本来とおい未来に起こったであろう世界の終焉がまさに始まろうとしておる。そこでお主に頼みたいことがあるんじゃ」


「オレ?」


「創世神様より預かった力。お主に托したい」


「チートキター!」


 拳を突き上げ天を仰ぎみるタナカ。その瞳は喜びの汁で光り輝いている。


「……ちょっと待て。それって無理なんじゃないか? 魔女の系譜なんだろ? オレ男だし」


 これまで世界に裏切られて続けてきた数々の出来事。それはタナカに疑うということを教えてくれた。実に悲しい世界である。


「いや別に継承は男でもよかったらしいんじゃが、いつの間にか『深淵の魔女』と呼ばれるようになったらしくてのう。なんだかそれっぽいから女限定で継承するようにしたそうじゃ」


「そんだけかよ! いや、まあそれはそれで結構大事なことのような気がするな……うむ」


 厨二の心をいつまでも忘れない漢タナカ。理解をしめすその器の大きさはすでに子供用茶碗を超えたといえよう。


「まあよし。オレとしては全然問題ない。むしろ下さい。お願いします」


 そして卑屈な姿勢。土下座をして力を乞うその姿はまさに小者の鏡。


「ただしもはや死んでしもうたわしにはこれまで蓄積された力の継承はできん。できるのは創世神様より預かった力『創世と破界』『深淵の詐欺師』の二つを託すことだけじゃ」


「なんかカッコいいのキター!」


 テンションのあがるタナカを放置し説明を続けるベアトリス。


「『創世と破界』はまさしく神の力そのもの。無から有を創りだし有を無に帰する力。持ち得る力によるがすべてを可能にするといってもよい」


「んー?。それって大魔法といっしょなんじゃ……」


 いまだにくす玉創造しか大魔法を成功させていないタナカに不安がよぎる。


「いかな大魔法とて世界の理の上で成り立っておる。世界の理を超える奇跡は起こせぬし、この世界にいてこそ使える力じゃ。場合によってはこの世界から出て戦わねばならぬ我らにとって大魔法は意味がない」


「うーむ、わかったようなわからんような」


 タナカにとってはその力が使えるのかどうかが問題であろう。


「そしてもうひとつの力『深淵の詐欺師』。過ぎた力は禍をもたらすがそんな力でも求めてしまうのが俗世。余計な揉め事に係わる余裕などない我らに創世神様が授けてくれたのがこの力。我らの持つ力に触れようとする者を欺き拒絶する力じゃ。どれほど高質な解析魔道具でも我らがもつ神の力に触れることはできん。まあこれがあるおかげで深淵の魔女と気付かれることなくやってこれたわけじゃ」


「すごい力を持っていながら敢えて隠すわけか。なかなか燃える設定だな。ウンウン」


 深淵の魔女の設定におおいに満足するタナカなのであった。そんなタナカにベアトリスは身構える。


「心の準備はよいな。それでは力を渡すぞ。――ホァアアアアアア!」


「……ばあさん顔こええよ」


 タナカの身体が光に包まれる。タナカの小言は無視されあっけなく力の受け渡しが終わる。


「なんかあっさりしすぎ。いまいちこうなんというか燃えるもんがなかった」


「なに言っとるんじゃい。それより力を使ってみせい。最初は難しかろうて、神の力を剣に纏わせるところから始めるがよい。それさえできればとりあえず化身と切り結ぶことはできよう」


 タナカは剣に手をかける。しかしなにを思ったのか剣をはなし手から光り輝く剣を出現させる。もはや説明するまでもない点火魔法を利用した剣だ。


「おおう。なんじゃそれは……」


 これにはベアトリスも驚く。高密度のエネルギーからプラズマが迸る。


「どうせならこれでいこう。なぜならカッコいいから――」


 タナカが神の力を纏わせようと集中する。徐々に変色していく光の剣。ついには黒き光を纏う剣となる。矛盾を体現させた黒い光。それこそまさに不可能を可能とする神の力が宿った証。ちなみに黒という色にとくに意味はない。あえていうならタナカがそう望んだから。そうカッコいいからだ!


「――神をも滅する闇の光よ。我が剣となりてすべてを切り裂け『終焉の刻(ジエンドオブシーン)』」


 上段から切り落とされる光の刃。中学校時代、体育の授業で剣道着から漂う瘴気を経験したタナカだからこそ到達し終えた素振りだった。

 そしてなにも起こらない。


「――うむ、今日もいい天気だ」


 光の剣を消滅させるとまるで何事もなかったかのように天気の話を始めるタナカ。霧で覆われた空を眺める笑顔からは余裕が感じられる。いついかなる時もまわりの状況を把握することを忘れないまさに戦人(いくさびと)の鑑だ。タナカさんに限ってなにも起こらず恥ずかしかったため天気の話でごまかしたなんてことはないだろう。


「……なにがしたいんじゃまったく――」


 あきれて小言をはじめようとするベアトリスだったが言葉が続かなかった。さきほどまで封印の地を覆っていた霧の空。それが割れるように裂けていく。そこから現れたのは久しぶりに見る青く澄んだ空。それは破界神キョウの化身ですら破れなかった結界を切り裂いた証だった。


「おお! 空が見えるでござる。ようやく出れるのではござらぬか?」


「なかなかやるじゃねえか」


 思わぬところで脱出の機会を得て盛り上がるスケさんとカクさん。そしてベアトリスは先ほどのタナカの一刀に希望を見た。


「この空。いずれ世界の魔力で修復され再び閉じよう。ゆけい。そして神の力を引き継し者としての役目をはたすのじゃ」


「お、おう……。ところでばあさんはどうするんだ?」


「わしは神の力によって生かされておった残留思念。残っておる力が尽きれば消えるだけじゃよ」


「い、いいのかよそれで……」


 最期の引き金をひいた事実を前に愕然とする。その事実は理想的小者といわれたタナカにとっては重い。


「気にするな。すでに死んだ身よ。むしろギリギリとはいえ希望を繋げたことに感謝しておるよ。ありがとう」


「そ、それじゃあ行くからな」


 感謝の言葉に照れたのか旅立つタナカ。スケさんカクさんもそれに続く。ゆっくりと上昇していくタナカたち。ベアトリスはそれを見送る。


「ほんとにこれでいいのか! 実はなんか方法があったりするんじゃないのか!」


 途中で振り返り確認するタナカ。相変わらずの優柔不断ぶりである。


「なにもありゃせんよ! それより忘れるでないぞ! 必ずやキョウの化身を討ち果たすのじゃぞ!」


 叫び返すベアトリス。頼りないタナカの姿に念をおすのを忘れない。さらに上昇していくタナカたち。


「ほんとにいっちまうぞ! いいのか! もうすぐ脱出しちまうぞ!」


 さらに振り返るタナカ。


「いってこおい! 成功を祈っておるぞおい!」


 最後に声援を送るベアトリス。空の向こうへ消えゆくタナカを最後まで見送る。


「おーい! もう出ちゃったぞお! なんか結界閉じ始めてるけどほんとにいいのかあ!」


 いいかげんキレるベアトリス。


「じゃかあしゃあ! はよいかんかい!」


 ようやく飛び去ったタナカたち。そして再び空を霧が覆い始める。あっという間に元通りになった灰色の空を見つめながら一抹の不安を覚えるベアトリス。


「まったく、本当に大丈夫かいのう……。あれほどの力を持ちながらなんであんなに小者臭いんじゃ」


 タナカとのやりとりを思い出す。滑稽とも思える姿。その根本にあるのは優しさであったのかもしれない。そう思うと自然と笑みが浮かぶ。

 最期の時がきた。うすれゆく意識のなか思う。はからずもおとずれてしまった終焉のとき。重荷を背負わせてしまったあの不器用な男にすまないと。

 そして願う。世界が無事に終焉のときを乗り越えられんことを――。

 彼女は知り得るはずもなかった。あり得たかもしれない魔女の系譜が続いた未来。星の数ほどあった数多の可能性。それらのなかでも彼女が選んだ男こそが最良の選択であったことを――。

 かくして深淵の魔女の系譜はここに絶たれる。しかし彼女たちが紡いだ希望の光は世界を救う最強の切り札となって世に放たれたのだった。


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