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タナカの異世界成り上がり  作者: ぐり
王国放浪編
34/114

Route34「時は来たれり」

 プリン王国西部――

 そこには緑の少ない荒野が見渡す限り広がっていた。そんな中を進む怪しげな3つの影――タナカたち一行である。

 国境の自然豊かな山地とのあまりの変わりように、荒野を進むのを若干躊躇したものの、そこは強固な意志と強靭な精神をもつタナカ。前に進むことを選んだのであった。


「あぢ~……。涼しくなるまでどこかの街に隠れ住んでおくべきだったか……」


 内陸部特有の乾燥した猛暑の中、タナカは愚痴をこぼしながら歩みを進める。プリン王国での再出発を誓った意気込みはすでに跡形もなく消滅していた。実に気持ちの切り替えのできる漢である。


「難儀なことだ。まあ精霊の俺には暑さなんて関係ないがな」


 カクさんはサイドチェストポーズで自慢する。その暑苦しい状況にタナカは暑さが5割増しになった気がした。


「拙者も暑さは大して気にならないでござるよ」


 スケさんも同じくサイドチェストポーズで横に並びカクさんと連携する。この二人、日に日に連携力が増していた。実に役に立たない成長ぶりである。

 こんな二人の連携によりタナカの体感暑苦しさがついに2倍に到達した。ここに至りついに足がとまるタナカ。もはやテンションさがりまくりのタナカは怒る気にもなれずただ涼しさのみを求める。


「あ~……。このままではいかんな。今日はもうやめだ。補給をしなくては……」


 タナカたちは適当な日影に移動して休憩にはいる。まずはアイテムボックスから氷を取り出そうとするタナカ。しかしアイテムボックスにあった氷の備蓄はすでに空になっていた。


「もうなくなっていたか……。しょうがないな」


 タナカはその場で生活魔法の生氷を使うと同時に浮遊魔法を発動させた。タナカの前に突如現れた巨大な氷塊は地面に落ちることなく空中で静止したままだった。


「スケさん。いつもどおり頼む」


「了解でござる」


 タナカはチームで一番危険の少ない攻撃魔法を扱えるスケさんに氷のカットを頼む。頼まれたスケさんが次々に風刃魔法を繰り出し氷を切り刻んでいく。作業が終わると氷を数個口の中に含んで残りはアイテムボックスにすばやく収納。


「ウマウマ。さすがスケさん、いい仕事するぜ」


「タナカ殿に比べれば、まだまだでござるよ」


 氷を堪能しながら元気のでたタナカはスケさんの魔法を褒め称える。実際スケさんの魔法の腕はすでに一流といってもいいところまで成長していた。しかしそんなことを知りもしない二人はまったり雑談に興じる。ただ一人、魔法の知識があるカクさんだけが仲間のでたらめな力を認識していた。


「恐ろしいほどに才能の無駄遣いだな……、まあいいか。ところで修行はどうするよ」


「そうだな……。やるとするか」


 タナカたちはあいかわらず旅を続けながらも機会があれば魔物を狩り、日中の半分は各々の修行にあてていた。

 テンションがさがりまくるも修業を続けてこれたというのだから、アフロ事件がいかにタナカの心を深く抉ったか計り知れよう。しかし心に傷をおいながらも「影のある俺かっこいいかも」とそれすらモテるための糧にしようとする前向きなタナカ。その鬼謀は世界の意志を欺き、因果律さえ覆す日も近いのかもしれない。……まあ、そんなわけはないか。

 とにもかくにも日課である修行を始めるタナカたち一行。そしてタナカの修行であるが、いつのまにか習得していた大魔法を使いこなすためカクさんの指導をうけ続けていた。

 大魔法は本来、世界の管理者である神や精霊が扱うことができる高度なスキルである。しかしこれまでに大魔法を後天的に習得することができた英雄や高僧が少なからず存在していた。そして彼らの場合は大魔法を行使するにあたり、まず儀式を行い大量の魔力をあつめるところから始めるのがセオリーである。

 しかしタナカの場合、原因不明だが大量の魔力の行使ができるため儀式は必要ないだろうという結論に至る。タナカが儀式とか面倒くさいと思ったから省略することにしたなんてことはけっしてない。……努力をおしまないカッコイイ主人公であるタナカがそんな考えだったなんてことはないはずだ。

 そして次に求められるのが魔力の制御と集中力。もともと魔力の制御には力をいれていたタナカであるが、ここしばらくは大魔法行使のためこればかりやらされていた。


「いい加減十分じゃないか? もうそろそろ実践にうつってもいいんじゃないかなあ……なんて?」


 タナカとしては早く大魔法を使ってみたいという気持ちでいっぱいであった。そこではやる気持ちを抑えながらカクさんに提案してみたのだが――


「そうだな……。実践してもいい頃合いかな」


 少しだけ考えるとあっさり了承するカクさん。こうもあっさりゴーサインがでるとは思っていなかったタナカは驚くと同時に一気にテンションがあがる。


「おっしゃー! 漲ってきたぜい。クックック、これでようやく神々との戦いの舞台にあがれるというわけか。……長かったぞ。やることすべてが常に先手をうたれ、窮地に立たされ続けてきたがそれもなくなる。ついに失われし力が蘇る。神代の戦いをいま再び始めようではないか。フハハハハハハ!」


 漲りすぎて発病するタナカ。だが言っていることはあながち間違ってはいない。世界の管理者である神や精霊と戦うには通常の人間では圧倒的に火力が足りなさすぎる。それを補うのが神器クラスの武器であったり大魔法による攻撃なのだ。実際に神や精霊同士の戦いでは大魔法の応酬となる。大魔法を使いこなせるということは神や精霊と同じ舞台に立てることを意味する。

 まあタナカのでたらめな力の前にはたいした意味はないのだが、その真実を知る者は誰もいないので彼らが大魔法の修行に熱心になるのは仕方がないことだろう。


「いくぜ! 集中集中……」


 タナカはカッコイイポーズをとると大魔法行使のための集中にはいる。自分の中に回路をつくりあげ魔力を制御し使用準備を整えていく。


「クッ」


 タナカから漏れ出る魔力の圧力に思わず声が漏れるカクさん。精霊のカクさんをもってしてもその力ははてしなく巨大に感じるほどだった。


「時は来たれり……。我が野望はここに完成する……。絶世の美女たちよ生まれ出でよ! ハーレム創造!!」


 両手を掲げ空に向かって宣言するタナカ。その体は魔力の昇華によって光り輝やいている。ここに奇跡の力、大魔法が行使され目の前に美女たちが……現れなかった。


「……あれ?」


「バカヤロー! あれ? じゃねえよ! 何やってんだ。いきなり最初から高難度なことやってんじゃねーよ! 最初は小さいことからやっていけよな!」


 めずらしくカクさんからツッコミがはいる。こと魔法に関してはカクさんはきびしい。カクさんの注意を心にとめ再度挑戦するタナカ。


「気をとりなおしてもう一度いくぜ!」


 再びカッコイイポーズにはいるタナカ。先ほどと同じように大魔法が発動していく。


「我が野望の一歩……生まれ出でよ。幼女創造!」


 そして結果は先ほどと同じ。


「だから、なんでそう高難度なことやろうとしてんだよ! 小さいことからやれっていってんだろーが!」


「やってんじゃねーか! ちゃんと小さい幼女にしただろうか!」


「そういう問題じゃねえよ! 人間を創造するとか高難度にもほどがあるわ! だいたい管理者の力をなんだと思ってんだ。こんな奇跡起こそうとしたやつなんて聞いたことねえよ!」


「なにいってんだ。俺がハーレムを築き上げるなんて奇跡以外のなにものでもないだろうが! ……うぐっ」


 自らの言葉で精神的ダメージを負うタナカ。その瞳から思わず光り輝く汁がこぼれおちてしまう。


「オッサンだってなあ。たまには冒険したいんだよ! ダメだとわかりながらもやっちまうことだってあるんだよぉおおお!」


「わけわかんねーよ!」


 そんな二人の喧騒をよそに一人魔法の修行に明け暮れるスケさん。


「平和でござるなあ」


 そんな彼の目の前では彼が操る第七位魔法暴風によって起伏のあった荒れ地が削られ更地へと舗装されつつある。タナカの無尽蔵な魔力の恩恵で魔法使い放題のスケさんもまた順調に常識の壁を砕きつつあった。

 こんな風に相変わらず斜め上へと成長するタナカたち一行。愉快な日々を送る彼らではあるが、新たなる戦いが始まろうとしていたことに誰も気づいてはいなかった。


 おひさしぶりです。なんかひさしぶりすぎてタナカの格好良さがアップしたような気がしたそこのアナタ。なかなかいい眼を持ってます。今回からサブタイトル部分の表記を変えてます。なんと! 一部に英語が入ってます。すごいです。なんかこれだけでオサレ度がアップした感じです。タナカ的格好良さ3割増って感じですよ!

 いやあ、なんていうか自分の才能がちょっと恐ろしくなりました。恐らくこれを真似して今後英語表記なサブタイトルが増えてきますね。まあ私は心が風呂桶なみに広いですから起源説なんてとなえませんけどね、フフン。

 なんちってヽ(°▽、°)ノ デヘヘ


No.34

名前:タナカ レベル:51 経験値:324/5100 ギルドランク:E

体力:9.2e13/9.2e13 魔力:1.6e14/1.6e14

力:9.1e12 器用さ:9.7e12 素早さ:1.1e13 賢さ:1.5e13 精神:1.7e13

スキル:剣(3.32) 魔法(4.78) 信仰されし者(10.00) 竜殺し(7.72) 精霊主(4.35) 詠唱破棄(2.12) 多重詠唱(2.20) 大魔法(0.02)

装備:剣 夏物の格好いい服 黒いマントセカンド

お金:4522000G


名前:スケ レベル:46 経験値:1301/4600 ギルドランク:E

体力:814.00/814.00 魔力:1512.00/1512.00

力:424.00 器用さ:410.00 素早さ:591.00 賢さ:634.00 精神:647.00

スキル:矛(3.86) 魔法(4.08) 竜殺し(7.03) 信仰されし者(7.70)

装備:大鎌 黒いローブ

お金:100000G


名前:カク

体力:65536.00/65536.00 魔力:65536.00/65536.00

スキル:人化(10.00) 魔法(10.00) 大魔法(1.05) 使徒(4.35) 信仰されし者(7.01)


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