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タナカの異世界成り上がり  作者: ぐり
混乱の西部編
24/114

第二十四話 決戦

 共和国首都ゴクリの中央に建つ大きな館。その一室に共和国上層部――九都市代表が集まり会議を開いていた。

 議題はテノヒラ平原に現れた化け物の対応策。当初、軍からもたらされた化け物の報告に懐疑的だった。しかし各代表が持つ独自の情報ルートからも、同じ内容の報告が入ったことから会議の雰囲気は一転する。

 会議場は重い空気に支配されていた。軍で対処不能な化け物。新兵器として投入されていたドラゴンもすでに全滅。これでは素材がないのに料理を作れと言ってるようなものである。

 対処案などあがるはずもなく、出てくるのは避難案のみだった。

 ゴクリ代表の議長から溜息が漏れる。そのとき一人の男から声がかかった。


「私からもお話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


 発言の許可を求める男――彼の名はカシウス。数で劣る共和国軍を支え続けた数々の技術、それらをもたらした研究所の所長である。その功績により、上層部会議に口を出せるほどの権力を得ていた。


「今回使用されたドラゴンについてですが、反乱軍との戦いを想定して準備していたものです。実際、化け物が出現するまで、ドラゴンは反乱軍を圧倒していました」


 重い空気の中。カシウスは余裕の笑みを浮かべながら、自分たちの成果を説明する。


「化け物に全滅させられはしましたが、それは軍を撤退させるためやむなく突貫したためです。もともと突起した戦力に使用する予定はなかったとご理解ください」


「それでは研究所で、対突起戦力用の兵器でも用意しているのかね?」


 笑顔で弁明を続けるカシウスが不快だったのか、代表の一人が横槍をいれる。皆期待していなかったが、続けて出たカシウスの発言がそれまでの重い空気を一転させる。


「もちろん、突起戦力に対する研究も行われています。対処法ならすでに用意されていますよ」


「本当かね?!」


 予想外のカシウスの答えに、騒然となる代表たち。議長がそれを治めてから、カシウスに話の続きを促す。


「私たちは勇者召喚について研究していました」


「それではだめだ。勇者は強力だが成長に時間がかかる。それに化け物が報告どおりの力をもっているとしたら、勇者でもまったく歯が立たないだろう」


 代表の一人がまたしても横槍をいれる。それは期待を裏切られたためか強い口調だった。


「もちろん勇者を召喚しようと言うわけではありません。現状、勇者を召喚しても、なんの役にもたたないでしょうから」


 相変わらず余裕の表情で、横槍を入れた代表に答えるカシウス。


「勇者召喚の儀を解析し、より強力な存在を呼び出す新たな儀式を創り上げました。勇者などと比べようもないくらい、強力な兵器となるでしょう」


 カシウスはそこまで話すと、浮かべていた余裕の笑みを、不気味に変化させる。


「もちろんより多くの対価が必要となります。しかしそれについてはご安心ください。さきの戦で部下がうまくやってくれました。まだ1万人以上の兵士が残っていますからね」


 会議場の空気が一瞬で冷え込む。そんな中、カシウスの声だけが響き渡る。


「魔術師ではなくてもこれだけの人間を集めれば、魔術師の力より膨大な魔力となるでしょう。軍を生贄にして、最強の魔神を召喚するのです。許可をいただけますかな」


「なにを馬鹿なことを! そんな許可だせるわけがなかろう!!」


 全員がカシウスを非難する。カシウスはそんな状況に全く臆することなく、話を続ける。


「共和国の民を軍の犠牲で救おうというのです。何をためらうのですか。それともこれで共和国を終わりにしますか。これまで弾圧してきた報いを受けることになるのでしょうな。その化け物がドラゴンを蹂躙したように、私たちが滅ぼされるのは勘弁してほしいものです」


 カシウスのその一言で会議場は静かになる。沈黙したまま時間だけが過ぎていく。


「……ハァ、解りました。それでは時間稼ぎをしながら、戦線をニノウデ回廊までさげてください。ここに仕掛けを施しておきます。戦場で倒れる兵たちを贄にするのなら文句はないでしょう? ああ、こちらのほうが結果的に多くの魔力が手に入るかもしれませんね。さすが上層部のみなさんは頭がいい」


 カシウスは意地の悪い笑みを浮かべながら、話を勝手に進めていく。

 その日、共和国上層部は対反乱軍の作戦におけるカシウスの特権を認めた。






 そのころタナカたちは、とりあえず共和国首都を目指し移動していた。

 残念ながらタナカたちにはトローチ王族の情報はない。途中の都市や街に入って情報を集めることにする。

 スケさんとカクさんは目立つので街の外でポージングしてもらい、タナカ一人で潜入し行動している。

 トローチ王族の居場所の情報を得ようと、タナカは躍起になっていた。ミルクを見るのが怖くなるほど、酒場をはしごしていたが全く成果はあがらなかった。そんななか聞こえてきたのが同盟軍の進軍情報である。

 同盟軍はドラゴンの襲撃でかなりの被害を受けていた。しかしその場で急ぎ回復を図っていたのだ。援軍も吸収し再編され、短期間で再び進軍を開始していた。

 タナカが考えていたより同盟軍の足が速い。このままではタナカの火事場泥棒作戦は間に合わなくなる。こうなるともはや同盟軍はタナカの敵である。共和国軍に足止めの嘆願にいきたいのをぐっと我慢して、とにかく情報収集に力を入れた。

 学園を見つけては侵入して女学生鑑賞を楽しむ。警備のオジサンの目をかいくぐる毎日。タナカの動きのキレがぐんぐん増していった。

 劇場を見つけては気に入った女優を応援するため毎日公演に通う。応援団と行動をともにし、統率された応援をすることで器用さもぐんぐん増した。

 時間は刻々と過ぎていき、ついに共和国美女名鑑第一巻が完成する。タナカは出来上がった美女名鑑を満足そうに眺める。そこにはなにかをやり遂げた漢の顔があった。

 このようにタナカは充実した日々を送る。おかげでタナカたちは心置きなく、ハル皇国へと帰る旅路に就いたのであった。






 共和国軍はカシウスの作戦に従い、進軍してきた同盟軍と正面から戦わなかった。局地的な戦いを嫌がらせのように行い時間を稼ぐ。こうして時間をかけながら戦線をさげていった。首都への玄関口といわれる、ニノウデ回廊まで戦線がさがった時には、すでに下準備は完了されていた。

 そう、この場所こそカシウスが決戦に選んだ場所である。巧妙に隠してはいるが、すでにこの戦場に儀式用の仕掛けは施されていた。

 そのことを知らされずに陣取る共和国軍。あとは同盟軍の到着を待つのみだった。後方の離れた司令部では、カシウスが満足そうに戦場を眺めている。


「両親の血と魂を吸った魔道具はどうだ? ずいぶんと手になじむようになったようだな」


「……いいえ」


 カシウスは笑みを浮かべて、隣に控えるブルータスに話しかける。カシウスとは対照的に、無表情で答えるブルータス。

 いつもはローブを深く被っているが、今はローブから頭を出している。隷属の魔道具がはめられた首が顕になっていた。


「王家の血など、そうそう手に入るものではないのだから大事にしろよ。それに今回の作戦では、魔神を操るための大事な魔道具だからな」


「わかりました」


 素っ気無いブルータスの反応に苦笑するカシウス。彼女は隷属の魔道具の副作用で、感情が薄くなっているのだ。

 カシウスとしてはもっと感情を顕にしてほしかった。これから彼女は自身の弟妹を、その手にかけようとしているのだから。

 心の奥底から狂気が湧き出てくるを感じる。この戦いが終わった後に隷属の魔道具を外して、彼女の反応を楽しむことをふと思いつく。そして今はこれでいいと、自分の狂気を納得させるのだった。


「それにしても、もっと時間をかけて楽しむ予定だったのだがな。かの化け物のせいですべて台無しだ。まあ計画通りのことはやったのだから、これで文句はいわれないだろう。とりあえずこの国とおさらばする前に、最後の戦いを楽しむとするか」


 カシウスは決戦前と思えないほど、呑気にこの状況を楽しもうとしていた。

 そんな中ついに同盟軍が姿を現す。ドラゴンに襲撃されたため数を減らしていたが、援軍が合流しその数は再び五万に達していた。

 対する共和国軍は一万五千。動かず同盟軍をじっと待ち構える。そして充分に同盟軍をひきつけてから共和国軍も動き出した。


名前:タナカ レベル:30 経験値:720/3000 ギルドランク:E

体力:4.4e13/4.4e13 魔力:6.6e13/6.6e13

力:4.4e12 器用さ:4.6e12 素早さ:4.9e12 賢さ:5.9e12 精神:6.2e12

スキル:剣(2.33) 魔法(2.38) 信仰されし者(1.52) 竜殺し(5.69) 精霊主(0.20)

装備:剣 格好いい服 黒いマント

お金:4548000G


名前:スケ レベル:20 経験値:1739/2000 ギルドランク:E

体力:235.00/235.00 魔力:299.00/299.00

力:123.00 器用さ:121.00 素早さ:170.00 賢さ:145.00 精神:149.00

スキル:矛(1.29) 魔法(1.34) 竜殺し(5.36)

装備:大鎌 黒いローブ

お金:100000G


名前:カク

体力:4096.00/4096.00 魔力:4096.00/4096.00

スキル:人化(10.00) 魔法(10.00) 大魔法(1.03) 使徒(0.20)


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