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タナカの異世界成り上がり  作者: ぐり
混乱の西部編
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第十九話 転移

 タナカたちは急いでナナシの街に向かった。どうやら美女軍団はすべて立ち去った後のようだ。タナカは思わず舌打ちしてしまう。

 街中では早くも片付けを始めている者たちがいた。開拓地というのもあるのかもしれないが、なかなか精魂たくましい住民たちだ。

 街中を進みギルドまでくると、エチゴヤが人々にいろいろと指示をだしていた。


「エチゴヤさん。今さっき戻ったぜ」


「おや、お早いお帰りで」


 タナカに気づくと笑顔になり、開口一番なかなか嫌味なことを言ってくる。タナカは必殺の論戦をしかけようと試みる。


「いやいや、俺たちもいろいろ大変だったのよ。あんなこととか、そんなこととかさ? さっきも美女軍団をなんやかんやでえいやーな感じだったんだぜ」


 全然ダメダメだった。とりあえず適当なことをいってごまかすタナカ。エチゴヤは嫌味をいったわりには、大して怒ってはいないようだ。というより街の状況をどうにかするのが最優先で、タナカにいちいち付き合ってられないといった風だ。


「よくわかりませんが、とりあえず復興を急ぎ手伝ってください。またあの一団が襲ってくるとも限りませんから」


「ああ、そのことなんだけどさ……」


 タナカは美女が殺された件について話す。そしてその後、美女軍団が引き上げたことから、目的は美女だった可能性が高いことも伝える。ただ精霊云々の話については、めんどう事に巻き込まれそうなので黙っていた。エチゴヤはタナカの話を聞いて考え込む。


「……なるほど、確かにその可能性はありますね。被害者の女性が誰だか解りませんか?」


「死体も残らず木端微塵な感じで、もう調べようがないよ」


 精霊なので消えてしまったとは言えない。適当なことを言ってごまかす。


「そうですか。少しは明るい材料ですが、安全だという保証はありません。とにかく復興の手伝いをお願いします」


「あいあいさー」


 エチゴヤはさっさとタナカたちから離れていき、復興のため人々に指示を出していく。スケさんがそんなエチゴヤを見て感心している。


「忙しそうでござるな」


「うむ。おかげで修行をだらだらやってた件がうやむやにできそうだな……、ククク。まあ俺たちも適当に手伝うとしよう」


 タナカたちはギルドを離れ街中を進む。周りを眺めながら進むが、怪我人とか死者とかはいないようだった。その割には建物の被害は多そうだ。美女をおびきよせるために、派手に破壊して周ったといったところだろうか。


「とりあえず宿屋にいくか。俺たちの大事な寝床だしな。宿屋に被害があるようだったら、俺たちのためにも最優先で片づけを手伝おう」


「そうでござるな」


「おうよ!」


 三人は普段利用していた宿屋に向かう。あちこち破壊された街中を進みながら、今後のことについて考える。


「あとはカクさんの装備も整えないとな……」


 タナカがカクさんを見ながらそう呟く。カクさんは黒いブーメランパンツ一丁という姿だ。街中でもかなり目立っている。はっきりいって人化をした意味がない。


「ああ、それならいらねえぜ。武器とか防具とか重たいもの持てないからな」


 カクさんはタナカの提案をあっさり断る。しかも理由がめちゃくちゃだ。


「はあ? なんだよそれ? その無駄にある筋肉はなんなんだよ!」


 タナカは筋肉に向かって抗議する。そんなタナカの抗議をかるく受け流しながら、カクさんはその理由を説明する。


「上司から『精霊たるもの美しくあらねばならぬ』と言われてたからな。人化したときの見た目には、かなり力をいれてるぜ」


 カクさんは立ち止まり、得意のサイドチェストのポーズで応える。なぜか隣でスケさんもマネしている。


「見た目だけかよ! しかも方向ズレてるっての! 上司もちゃんと修正してやれよ……。ていうか上司ってあの美女だよな? あの美女天然だったのか……。あとスケさんもそういうのはやめなさい!」


 タナカはスケさんが変な方向に成長しないように、ちゃんとしつける。スケさんは残念そうにだが素直に従う。


「そういうわけで装備はなしでいいぜ。人化してる間は力のほとんどを、この筋肉とブーメランパンツの維持に使ってるからな」


「いや、そんなことやんないでいいから! 普通でいいから!」


 もともと目立たないように人化したのだ。タナカは普通なのを切に願った。そしてできれば美女を希望したかった。そんなタナカの心を知ってか知らずか、カクさんは話を続ける。


「まあ、戦闘ともなれば人化をといて手伝うからよ。魔法なら人間が使えるのはほとんど扱えるからな」


 カクさんがドヤ顔で自慢してくる。さすが精霊といったところか、どうやら魔法は得意なようだ。タナカは素直に関心する。


「まじで? すげえなカクさん。……うむ、これは折を見て戦術の再構築をせねばな」






 しばらくは街の後片付けばかりだろうが、落ち着いたらいろいろとやってみようと考えるタナカであった。

 その後1か月ほど、ナナシの街は復興作業で大忙しとなっていた。もちろんタナカたちも一応手伝っていた。

 そして修復作業などが落ち着き始めた頃から、溜まっていた魔物討伐の依頼も着々とこなしていった。

 そんなある日、あいかわらず街周辺でタナカたちは魔物を狩っていた。スケさんがオフェンス、タナカがサポート、カクさんがポージングで応援である。


「ポージングで応援ってなんだよ! カクさんもなんかしろよ!」


 タナカは少し離れた場所で、こちらを向いていろんなポージングをしているカクさんに向かって叫ぶ。


「いや、そんなこといったって、俺レベルあがらないしな」


 そう、どうやら精霊は成長の仕組みが根本的に違うようなのだ。精霊はスキルによって成長する。そして今のところカクさんが戦闘に参加して成長するスキルはなかった。


「そういえばカクさんはいろいろ魔法が使えるんだったな。……よし、いい機会だ。いろいろ作戦を練ろうぜ」


 タナカたちは魔物狩りを中断して、カクさんの魔法によって戦術を増やすことを考える。3人は集まり腰を落とす。


「その前に我がチームタナカの基本方針を話しておかねばな」


「ほう、そんなものがあるのか」


 そんなものがあるとは意外だったのか、カクさんが感心しているようだ。


「我らが最も優先すべきことは……美女の確保だ」


 ストレスのため思わず溜まっていた本音がダダ漏れとなる。それを聞いてスケさんが頭をかしげる。


「あれ? そうでござったか?」


「うむ、間違った。もう一度やり直しだ。我らが最も優先すべきことは……俺の保身だ。とはいえ、今や俺とチームは一心同体。つまり我らの行動の基本は皆で生き延びること。これが最優先事項だ」


 キリリとした顔でカクさんに説明するタナカ。カクさんは腕を組んで頷いている。


「ふむ」


「というわけでなにか有用な魔法はないか?」


 この中で一番魔法に詳しいのはカクさんである。結局カクさんになにか有用な魔法を提示してもらうことにする。


「そうだな……。だったら転移魔法とかいいんじゃねえか? まあ一山越える程度の移動ならすぐにできると思うぜ」


 悩んでいたカクさんがようやく口にする。それを聞いてタナカの顔が輝く。


「おお! 転移か。逃げるには最適だな。それにしても空間系とはな。うむ、なんか主人公ぽくっていいな。それでいこう。早速やってみようぜ」


 ニヤリ顔で空間系魔法という提案に満足する。カクさんが元の姿にもどり。ふわふわとタナカの頭の上に移動する。そしてカクさんが一瞬輝きが増したと思った瞬間、地面に光の文様が浮かび上がる。


「おお、魔法陣! なんかワクワクしてキター! ワーッハッハッハ! 天よ。我は空間を支配するぞ! そしていつかそこに駆け上がってみせる!」


 タナカは空を指さし叫びあげる。空間転移を前に相当興奮しているようだ。スケさんは興味深そうに地面をツンツンしている。しかしそこで突然カクさんが人化する。


「やべえ! 制御ミスっちまった」


「にゃにー! なにやってんだよ! どうなるんだ?!」


 突然の事体に混乱するタナカ。めずらしくカクさんも焦っているようだ。


「どこに転移するかわからねえ……」


「ホワッー! なんでんなことになってんだよ!」


「バカヤロー! てめえがめちゃくちゃ魔力流し込んだんだろうが!」


 二人とも興奮して叫びあっている。なぜかスケさんが体操座りをして、のんびり二人を見学している。切羽詰まりやがて何を言ってるのか訳が分からないことになっていく。


「はぁ? なにいってんだよ? やってねえよ! 俺は何もしてねえっつーの! いいか? 俺はなあ、面倒なことは何もしないことを誇りにしてんだよ! 休みの前には食い物大量に買い込んで、家から一歩も出ず引きこもるのが楽しみなんだよ! ネットで不毛な時間を過ごすのが至高の楽しみなんだよ!」


「なにいってんだ! わけわかんねーよ! ……やべえ! 転移が始まる!」


「ちょっ! 待っ……。らっ! らめぇええええ!!」


 魔法陣が一際大きく輝き三人を包み込む。光がおさまった時、そこには誰もいなかった。


名前:タナカ レベル:24 経験値:1535/2400 ギルドランク:E

体力:3.8e13/3.8e13 魔力:5.3e13/5.3e13

力:3.8e12 器用さ:3.7e12 素早さ:3.8e12 賢さ:5.1e12 精神:5.1e12

スキル:剣(2.33) 魔法(2.33) 信仰されし者(1.51) 竜殺し(0.51) 精霊主(0.17)

装備:剣 格好いい服 黒いマント

お金:4548000G


名前:スケ レベル:11 経験値:155/1100 ギルドランク:E

体力:149.00/149.00 魔力:213.00/213.00

力:69.00 器用さ:67.00 素早さ:90.00 賢さ:82.00 精神:85.00

スキル:矛(1.01) 魔法(1.34)

装備:大鎌 黒いローブ

お金:100000G


名前:カク

体力:4096.00/4096.00 魔力:4096.00/4096.00

スキル:人化(10.00) 魔法(10.00) 大魔法(1.03) 使徒(0.17)


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