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タナカの異世界成り上がり  作者: ぐり
混乱の西部編
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第十六話 最強チーム

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前はタナカ。街にあるギルドって所で仕事をもらって生活している。まあだいたい魔物を狩っているだけだが」


 タナカとスケさんはナナシの街に向かっていた。その間暇なので退屈しのぎにスケさんと話をする。


「魔物狩りでござるか。通りで強いわけでござる」


 翼のある美女とタナカの戦闘を思い出し、スケさんは納得する。そんなスケさんの褒め言葉にタナカはいい反応をしない。


「いや、これでも結構一杯一杯なんだぜ。ほんといままでいろいろやばい目にあってきたんだ」


 タナカはうつろな目で遠くを見ながらそう答えた。いまタナカの頭の中で、この世界に来てからの苦労が走馬灯のように再生されていた。暗黒面に堕ちそうになるのをなんとかこらえ、話題をかえようとする。


「ところでスケさんは街にいって、その後どうするんだ?」


 とりあえずスケさんに今後の予定について話をふってみる。スケさんは顎に手をやり考え込む。


「そうでござるな。特に何も考えていなかったでござる……そういえば拙者生まれたてで、何のもちあわせもないでござるな」


 そんなスケさんの答えを聞き、あることを思いつくタナカ。それはかつて酒場で腹をこわすほどミルクを飲みながら考え付いた結論。タナカはその壮大な計画を実行に移そうと動き始める。


「俺がなんとかしようか? そのかわりスケさんには俺の仲間になってもらいたい」


 タナカはスケさんに誘いをかける。初めが肝心なので真剣な表情だ。


「仲間でござるか?」


 スケさんはタナカが予想外なことを提案してきたので驚く。


「そうだ。さっきもいったが俺は自分の力に限界を感じている。そこで自分の力に代わる最強の仲間を得ようと思っている。というわけでどうだ? 俺の仲間にならないか? 魔道書もあるし装備もそろえるぞ。少しだがお小遣いもだそうじゃないか」


 タナカはここぞとばかりに魅力的と思える提案を出す。その様子は少し興奮ぎみで、だんだんと押しを強めていった。そんなタナカの様子とは違いスケさんは冷静に答える。


「最強の仲間でござるか……。拙者生まれたてで弱いのでござるが」


 スケさんは自分の強さから判断して、無理そうだとの答える。しかしタナカはそんな答えを予想してたかのように即座に反応する。


「これから強くなればいい! 俺なんてレベル20超えてるけど、未だに赤子の壁をようやく超えた程度なんだぞ。伸び代がある分だけ、スケさんのほうが希望はある!」


 タナカは必死にスケさんの可能性をアピールする。スケさんはさらに考え込み話を続ける。


「最強の仲間なんてつくってどうするでござるか?」


 スケさんは最大の疑問を聞いてみる。スケさんにとってはここが一番重要な点だった。答えによっては即座に断ることもありうる点だろう。しかしタナカはそんなことは考えもせず、自信を持って答える。


「フフフ、最強チームの至高にして唯一の目的は……、俺の保身だ」


 タナカの意外すぎる答えに唖然となるスケさん。なんとか言葉を続ける。


「保身でござるか……。そのために最強チームなんてものが必要なのでござろうか?」


 あまりの内容についていけず、さらに疑問を投げかけてみる。タナカは何かスイッチが入ったのか、ノリノリで答える。


「当然だ! 我の保身のためならば、世界そのものを敵にまわす力と覚悟が必要なのだ。神におうては神を斬り、悪魔におうては悪魔を斬る! それが我が最強チームなのだ!」


 スケさんは考え込む。はたしてタナカが加護を必要とする弱い存在なのか。タナカ自身が必要だと考えているようなので、とりあえずそれについては置いておくことにする。

 スケさんがみたところタナカはかなり変人だ。しかし悪い人間には見えなかった。スケさんとしてもタナカの力になるのはやぶさかでない。ただスケさん自身がタナカの力となり得るのか。スケさんはとてもそうは思えなかった。しかしタナカ本人はそう信じているようである。ならば恩人の仲間になってほしいという願いに応え、後は自分が全力を尽くし、最強を目指すだけではないかと結論づける。


「わかったでござる。もともとタナカ殿に救われた身。ならばこの身タナカ殿のために、盾となり矛となりましょうぞ」


 タナカの厨二病のテンションにノッて応えるスケさん。その応えに喜び、さらにテンションがあがっていくタナカ。


「おお、やってくれるか! ついに……、ついに我が1000年の悲願、天をもつかむ最強チームへの道が開かれるのだ! フハハハハ!」


 タナカの笑い声が辺りに響き渡る。ここに現在構成員2名の最強チームが誕生したのだった。






 数日後タナカたちはナナシの街に到着する。エチゴヤの街も発展途上でまだ小さかったが、こちらの街も同じような状態であった。しかし街行く魔族の人々は活気に満ち溢れ、立派な街になるのも時間の問題のように思えた。

 タナカたちはスケさんの装備を整えるため、まずは店に向かう。


「まずは見た目から入らねばな。やはりスケさんに似合うのは大鎌に漆黒のローブだな」


 タナカは厨二心を発揮し、スケさんのスタイルをきめる。


「そうでござろうか。まあ拙者スキルもないし、得物はなんでもいいでござる」


 スケさんは特にこだわりはないようだ。素直にタナカの提案を受け入れる。適当なものを購入しスケさんは装備してみる。その見た目はまさに死神といった感じだ。タナカはその死神姿を見てちょっと怖かったのだが、そっと心にしまいこむ。


「俺もついでに新調するか……。うーむ、カッコイイ杖とかほしいんだがな」


 結局タナカ自身は服とマントを新調した。その日はそのまま宿にはいり、ゆっくり身体を休めることにする。

 次の日、ギルドで依頼を確認した二人は、魔物狩りをするため街周辺の荒野を徘徊する。とりあえず狙うのは付近によくいる土トカゲだ。早速土トカゲをみつけた二人は戦いを始めた。


「……峰打ちでござる」


 スケさんの大鎌による攻撃が土トカゲにヒットする。しかし土トカゲはまだ元気だ。ツッコミをいれるがごとくスケさんに体当たりをしてくる。


「いかーん! だめだろうちゃんとトドメを差さなければ! こうやるんだ!」


 タナカは間に割って入り剣を一閃する。


「フッ、安心しろ。峰打ちだ」


 土トカゲは無残にも両断され、二つの物体となって地面に転がる。


「おお! さすがタナカ殿でござる。ところで峰打ちとはなんでござるか?」


 スケさんはタナカの一撃に感動しつつも、攻撃の最後に言うようにいわれた決め台詞について確認してくる。


「食材になる魔物へむけての感謝の言葉だ。お約束なので覚えておくように」


「わかったでござる」


 こうして異世界に間違った慣習を伝えながら、二人は魔物を狩り続ける。基本的にはスケさんが戦い、タナカがサポートである。スケさんがダメージを受けた場合は、回復魔法で完全回復である。なんだかスケルトンに回復魔法だと逆にダメージを受けそうだが、そうはならないらしい。

 ギルドでスケルトンのことを確認したところ、スケルトンは死霊とかそういった類のものではないらしい。実際には骨を媒体にした魔法生物といった感じらしい。そのためダメージを受けた場合には、回復魔法で修復できるとのことだった。

 1週間ほど魔物狩りを続けて、スケさんの戦闘力も着実にあがり、ついでにタナカの魔法の腕もあがっていった。

 そしてまた朝からギルドにやってきたところ、この街にようやくやってきたエチゴヤと出会う。お互いに話したいことがあったため、とりあえずギルドの一室に移り話をする。


「翼のある美女ですか……」


「ああ、一方的に襲ってきて話し合いに応じようともしなかった」


 エチゴヤは腕を組み考えにふける。タナカは先日あった翼のある美女の襲撃について、エチゴヤに相談したのだった。


「魔族にも翼のある人種は多数存在します。しかしそれほど好戦的な方々はいないはずですが……」


 エチゴヤは自分の記憶を思い起こし、翼人について話をする。しかしその内容はどうも先日の件とは合致しない。


「ああ、ちなみにそんとき助けたのがこのスケさん。今は俺といっしょにギルドの仕事をやってる」


 とりあえず答えがでそうにないので、スケさんを紹介するタナカ。スケさんは身を正しエチゴヤに挨拶をする。


「スケでござる。これから世話になるでござるよ」


 エチゴヤはいつもどおり笑顔で応対する。


「それはご苦労様です。それにしてもタナカさんが誰かと組んで仕事をするとは、思いもよりませんでした」


 タナカは異能である。そう認識しているエチゴヤは、タナカには誰の助けも必要ないと考えている。タナカ自身もそう考えて、一人で仕事をしていくとばかり思っていた。


「そう? 俺もいろいろ将来のこととか考えてるわけよ。とりあえず翼人の件はギルドにまかせていいよね? まあ俺たちでも逃げ切れたし、出会ったら逃げるように注意を促しておけば、なんとかなるんじゃないかな」


 タナカは最強チームのことで頭がいっぱいだ。襲撃事件のことはすべて、ギルドに丸投げするつもり満々である。しきりにギルドに対応を勧めるタナカ。


「……そうでしょうか。まあとりあえず住民の方々には、注意を促しておくことにしましょう。被害がでるようでしたら討伐を依頼するかもしれませんが、よろしいですか?」


 正直タナカが異常なだけで、もし誰かが襲撃されれば被害がでるのではないか、とエチゴヤは考えている。しかし現状あまりに情報がなく手の打ちようがない。被害がでたときはタナカにまかせることを認めさせて、現状は注意を促すことにする。


「うーむ、美女を手にかけるのは気がひけるが……、しかたないか。まあまだそうなると決まったわけじゃないし、よしとするか」


 とりあえずタナカは襲撃事件についてはこれで一旦忘れることにする。


「ではこの件はこれで終わりにしましょう。他になにかありますか?」


 エチゴヤとしてはこれでお開きのつもりだったがタナカから要望がでてくる。


「そうだ。ちょっと1週間ほど仕事を休もうと思うんだけど」


「1週間ですか。なにをするか聞いてもよろしいですか?」


 タナカの魔物討伐数は桁違いで、エチゴヤはかなりそれに期待している。エチゴヤに先行してこの街に来てもらい、すでに1週間かなりの戦果をあげている。エチゴヤとしてはこのまま、このペースで仕事をこなしてもらいたい。とりあえず理由を聞き、それだけの時間を費やす価値があるのか判断してみようと思った。


「俺は魔法の制御があまりうまくなくて。新しい魔法を覚えたら調整のため修行する必要があるんだよね」


「へえ、タナカさん魔法が苦手だったんですね。初耳です」


 タナカが生活魔法しか使えない、とは聞いていたがそんな理由があったのかと納得する。普通は覚えたてでもそれなりに使える。そして使っていくうちに、小さな問題などはすぐになくなるものだ。異能ともいえる強さを誇るタナカにも苦手なものがあると知り、少し安心するエチゴヤ。


「何言ってるんだよ。俺はすべてにおいて最悪だっての! とにかく修行期間を取りたいんだがいいか?」


 それにしても1週間とはいえ、かなりの痛手だ。しかし魔法を修行するというのを、エチゴヤ側から断念させる理由はない。


「わかりました。こちらは効率的に作業をふって、なんとかしましょう。なるべく早く復帰してくださいね」


「了解」


 とりあえず魔法の修行という建設的な理由だったので、快く了承してみせるエチゴヤ。

 美女の件もギルドに押し付け、魔法の修行もできるとあってテンションがあがりまくるタナカ。

 こうしてタナカたちは予定が伸びに伸びていた魔法修行、その準備にとりかかるのだった。


名前:タナカ レベル:22 経験値:1449/2200 ギルドランク:E

体力:3.6e13/3.6e13 魔力:4.6e13/4.6e13

力:3.6e12 器用さ:3.5e12 素早さ:3.6e12 賢さ:4.6e12 精神:4.6e12

スキル:剣(2.33) 魔法(1.51) 信仰されし者(1.48) 竜殺し(0.51)

装備:剣 格好いい服 黒いマント

お金:4018000G


名前:スケ レベル:7 経験値:438/700 ギルドランク:E

体力:104.00/104.00 魔力:112.00/112.00

力:39.00 器用さ:38.00 素早さ:52.00 賢さ:41.00 精神:45.00

スキル:矛(0.81)

装備:大鎌 黒いローブ

お金:100000G


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[気になる点] 有効数字が田中のものは二桁に対して他は3~5程度で統一されていない点
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