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タナカの異世界成り上がり  作者: ぐり
旅立ち編
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第十三話 竜殺しⅡ

 山岳地帯の足場の悪い大地を必死になって駆け抜けるドラゴン討伐隊。そんな討伐隊との距離を着実に縮めながら追い詰めてくる漆黒のドラゴン。

 時々弓矢をもつメンバーがドラゴンに向けて攻撃を加えるがまったく意に介さずせまってくる。討伐隊のメンバーのひとりであるホムラも必死に撤退しながらも仲間と連携を取り弓矢で攻撃を加えていた。そして撤退をしながらも戦況を冷静に分析しある結論に達していた。このままでは全滅もあり得ると。

 徐々にドラゴンに追い詰められながら討伐隊全員が限界が近いことを感じ始めた。そんな状況で撤退しながらメンバーの魔術師二人がなにやら言葉を交わしていたが突然立ち止まり第七位魔法を唱える。


「アイスストーム!」


 さすがのドラゴンも前進が止まり強烈な吹雪に抵抗を示す。


「俺たちにかまわず撤退しろ!」


 魔術師二人は足止めをするつもりなのだろう。メンバーの中であきらかに二人の足が遅く撤退の足手まといとなっていた。二人とも自分たちのせいで全滅するよりいいと判断したのだ。可能性は低いがこの攻撃でドラゴンを仕留めることができたり、それが無理でも少しの間でもドラゴンを行動不能にできれば二人の生存の確率もあがる。少なくとも撤退を続けるよりは未来があると判断しての行動だったのだろう。他のメンバーはそのまま撤退を続けることにする。

 しかしこの漆黒のドラゴンは討伐隊の考える以上の化け物だった。強烈な吹雪に襲われるなか咆哮をあげると信じられない跳躍力で突進攻撃を仕掛けてくる。まともに突撃を受けた魔術師二人は一瞬でその命を散らし他のメンバーも直撃は避けられたが突撃の際の地面との衝突の衝撃で吹き飛ばされる。

 討伐隊のメンバーはダメージをおしつつすぐに体勢を整える。しかしドラゴンも地面との衝突から立ち直り二足で立ち上がると狩りはこれでおわりだと言わんばかりに咆哮をあげる。

 そんな漆黒のドラゴンの圧倒的存在感を前にホムラはなにもできない。もはや生き残る道が考え付かない。

 咆哮をやめ獲物を探すドラゴンと目があう。その瞬間ホムラは死を覚悟する。漆黒のドラゴンがホムラを仕留めるために動きをみせようとした。まさにその時予想もしないことが起きる。

 耳を切り裂くような轟音がしたかと思った瞬間、つい今しがたまで目の前で圧倒的存在感を示していた漆黒のドラゴンが爆散したのだ。

 討伐隊はドラゴンの突撃を受けたとき以上に吹き飛ばされる。付近には爆散したドラゴンの肉片やら衝撃で吹き飛んだ岩石やらが降り注いでいる。

 討伐隊の面々は何が起きたのかわからずただ状況を見守る。静観したまま時が流れ自分たちが助かったと理解できたのはそれからしばらく経ってからであった。






 生い茂る森の中をタナカは警戒しながら進んでいた。時々遠くに見える山岳地帯を見て方向を確認する。

 最初は温泉街周辺の魔物を夢中になって狩っていた。そのうちかなり森の奥まで入り込んでしまったことに気づいた。それからは道があると思われる方向に進んでみたのだが事態が好転する気配はない。

 やがて地面を踏みしめる足の感触が微妙に変化してくる。どうやら湿地帯に踏み込んでしまったようだ。タナカはこの辺りの地理を思い出す。ここが温泉街と山岳地帯の間に点在する湿地帯のひとつであるのではないかと予想する。


「まずいな。山岳地帯から離れるように移動して、なんとかニシの街に続く道に出るしかないか……」


 この辺りの魔物はおそらくDランクである。タナカとしては戦いは避け逃げに徹するべきだろう。今後の方針をきめ山岳地帯から離れる方向に移動を始めようとする。

 しかし時すでに遅く魔物と遭遇してしまう。その魔物はまるで牙の生えたカエル。尻尾があり体表は赤みがかっている。


「グッ、こんなときに最悪の相手か……」


 この魔物は今のタナカにとっては相性の悪い相手。Dランクの魔物で名前は火トカゲ。旅立つ少年少女が最初に選ぶ相棒の中の1匹とは全然違う。この世界の火トカゲは水場に生息していながら火を吐く攻撃をしてくる魔物で、当然水や火の攻撃に強い耐性をもっている。

 現在タナカの主力魔法が点火と生水という点から戦術の幅を狭める嫌な相手である。実際タナカの点火は火トカゲの耐性を超える火力をもつので一瞬で消滅してしまうのだがそんなことを思いもしないタナカは当然逃げに徹する。

 相手は格上のDランクなのだから保身優先のタナカとしては当然の選択である。


「ゲロゲロ! ゲロゲロ!」


 タナカの精神を逆撫でするような鳴き声で喚き始める火トカゲ。タナカは火トカゲが仲間を呼ぶ習性を思い出し即座に剣を抜いて仕留める行動に移る。あっけなく火トカゲを一刀両断して倒してしまう。


「むう、仲間を呼ばれちゃまずいから思わずやってしまったが……なんか思ったより弱いな。どういうことだ?」


 Dランクの魔物が意外にも弱かったため拍子抜けしていまい思わず考えにふけってしまう。しかしそれがまずかった。ぞろぞろと火トカゲが集まってきてしまう。


「しまった……油断してしまったか!」


 10匹ほどの火トカゲに囲まれてしまう。どうやら先ほどの火トカゲの鳴き声に誘われて出てきたようだ。


「ぐぬぬぬぬ……こうなったら奥義自爆ウォータ!」


 小山ほどの水塊が突如出現し一気に地上になだれ込む。


「ごぼぉあ!」


 タナカと火トカゲは水流に飲まれその場から流されてしまう。しばらく流されるままになっていたタナカだったがしばらく流され水位が下がりようやく落ち着くことができるようになった。


「ゲホゲホッ! グフフフ……見たか我が奥義。ギザ十より価値ある我が寿命を3秒ほど犠牲にして成せる奥義を!」


 なんとか立ち上がり辺りを見渡す。どうやら20匹ほどの火トカゲに囲まれているようだ。


「なんでだー! なんでよりによって奴らの密集してる場所に流されるんだよ!」


 そんな風に自分に逆切れしてるところに火トカゲは容赦なく襲いかかってくる。


「うお! さすがカエルに似ているだけあって見事な飛び跳ね!」


 タナカは火トカゲの飛び跳ね体当たりを躱しまくる。すれ違いざまに剣で切りつけるのを忘れない。まわりに火トカゲの死体が増えていく。しかしそれ以上に取り囲む火トカゲの数が増えているようだ。


「これではジリ貧ではないか……止むを得ない。嫌な予感がするが禁呪を使わせてもらうぞ!」


 タナカは第九位の攻撃魔法を使う覚悟を決める。普段魔法を使う要領で魔力を制御してなるべく規模を抑えるべく努力する。タナカはイケると確信する。


「喰らえ! ストーンボール!」


 今までの経験から魔法を連射することは可能と判断する。これを連射し一気に敵の数を減らし隙を見て反転離脱を計る。まさに完璧なシナリオだった。目の前の巨大な岩石の塊を見るまでは。

 直径5メートルほどの巨大な岩石が出現し空気を切り裂く轟音とともに山岳地帯のほうへと飛び去る。高速で飛翔していったため摩擦で溶け真っ赤な輝きを漏らして消えていった。とりあえずタナカは見なかったことにする。


「フッ、予定通りだ。撤収!」


 タナカは岩石が多くの火トカゲを巻き込みできた道を駆け抜ける。しかしその方向は山岳地帯である。タナカは逃げに逃げ回りなんとか東へ転進し湿地の点在するエリアから脱出する。


「まさかDランクの魔物と出くわすとは俺の護身もまだまだあまいな。むっ、そういえば結構な数たおしたな」


 タナカは自分の能力値を確認してみる。結構な経験値が入っていたようだ。満足して街へ帰ろうとするが何やら見覚えがないものがあった。


 スキル:剣(2.04) 魔法(1.40) 信仰されし者(1.42) 竜殺し(0.51)


「おお、信仰されし者が微妙にあがっている。……ってそこじゃねえよ! なんで竜殺しなんだよ!?」


 いつの間にか新たなスキルが身についていた。前回確認した時点ではなかったスキルだ。


「むむむ、それにしても厨二心をなかなかに刺激してくるスキルだな。どれどれ」


 竜殺しスキルに意識を向け詳細を確認してみる。


 竜殺し:竜の力により物理攻撃力が上昇するレアスキル。竜を倒しその力を手に入れた者の証。成長するためには竜を倒し力を得る必要がある。


「俺の時代キター! と思ったら竜倒さないと成長できないとか保身第一の俺には無理じゃねーか!!」


 スキル効果を見て喜んだのも一瞬で成長のための条件の悪さに絶望するタナカ。しかし少しの間うなだれていたがふと気づく。


「いや、そういえばなんでこんなスキルが手に入ってるんだ?」


 たおした敵といえば街周辺のEランク対象の魔物と火トカゲくらいである。タナカの頭の中でハムスターが駆け巡り答えが導き出される。


「火トカゲに竜の血をひく者たちがいるというのか……。いや、火トカゲで竜殺しが手に入るなんて情報なかったはずだが……。! これはひょっとして裏ワザ発見みたいな感じか? ふふふ、そういうことか。ついに……ついに見つけたぞ! 世界の綻びを!」


 興奮してタナカの厨二病が発症する。


「ハッハッハッハ! イケる、イケるぞ! 赤子並の能力ということで苦汁をなめ続けてきたが……。ついに我の眠りし力が覚醒する!」


 タナカは笑い声をあげながら森の中を駆け抜けていく。


「しかし奴らもさすがにDランク。囲まれてしまってはやっかいだな。ある程度の数をおびき寄せ撤退しながら追いついてきたものから順に倒していくか。ふふふ、完璧だ」


 しばらく駆け続けニシの街へと続く道を発見する。すぐさま街に戻り火トカゲ討伐の依頼を独占して受ける。

 それから素早く準備を整え1週間タナカは夢中になって火トカゲを狩り続けたのだった。


名前:タナカ レベル:20 経験値:1396/2000 ギルドランク:E

体力:3.4e13/3.4e13 魔力:4.4e13/4.4e13

力:3.4e12 器用さ:3.2e12 素早さ:3.2e12 賢さ:4.4e12 精神:4.4e12

スキル:剣(2.04) 魔法(1.40) 信仰されし者(1.42) 竜殺し(0.51)

装備:剣 厚手の服

お金:3644000G


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