奴隷を買った日
皆もめんどくさいなぁってことがあるだろうと思う。
例えば食べ終わったあとの食器の片付け、あるいは、食材の買い出しなど。
それらを全部解決する方法としてこの世界には奴隷制度というものがある。
奴隷は多くの場合、戦争で負けた側の人間が落とされる階層だった。つまり、人が人を使うという構造がさも当然として存在したのだが、最近はもっぱら魔族が奴隷に選ばれるようになった。
理由は複数ある。ひとつには体格。人間と同じ食事を取りながら、筋肉質で引き締まったからだであり、女奴隷でも酒樽を軽々と担ぐことができる。
その他にも膚の色、角の有無。紫がかった膚は瞬時に人と区別がつき、角は奴隷の象徴となった。
そして、未来を見通すと呼ばれる予知能力。
シーズンにはガレー船で運ばれてくる奴隷の数は1隻当たり20000人を越えるという。その中でも家の中に上がって主人の世話をする奴隷は丁重に扱われ、そこそこの金額で取引されることになる。
今日、俺がその奴隷を親に買ってもらえる事になったのは成人祝いと、一人暮らしの友として買い与えるのがいいのではということだった。
親に連れられてやってきた奴隷販売所は不気味だった。
外観は白を貴重とした建物で、新入荷を伝えるのぼりと、どんな奴隷がいるかという宣伝文句が所狭しとならんでいる。
けして安くない大理石のパネルを足元に配置しているあたり、かなりの利益がでている事が分かる。
奴隷は儲かるのだ。
店内は複数の区分けがなされていて、用途別に奴隷が並べられている。力仕事専門、夜仕事専門、家事その他専門などなど。今回は家事その他である。
奴隷は立たされて展示されている。
黒いスカートに白いフリフリつきのエプロンを付けさせて、買いに来た人間の顔を見ないようにしている。角は個体差があるようでサイズや巻き方が微妙に違った。
奴隷を見ていると店員がめざとく見つけてきて声をかけてきた。
「本日はどのような奴隷をお探しですか?」
「息子の成人祝いに何か良い奴隷がいればと思って」と母。
「それならば、こちらの奴隷がよろしいですよ。魔法でプロテクトしているため、人間を傷つける事も、危ない思考に陥ることも御座いません。まさに理想の奴隷と言えます」
紹介されたのは手足を縛られて後ろで纏められ、▽みたいになった女奴隷だった。目はアイマスク、口は猿ぐつわで覆われていて、お世辞にも良い奴隷とは言えない。
他の奴隷がいい。そう言いそうな俺の雰囲気を察したのか店員が猿轡を外すと、喉の奥から出てくる出てくる、長さ30センチ近い杭が出てきて奴隷は苦しそうに噎せながら壊れたラジオのように言葉を発した。
「なんでもします。買ってください。このまま買っていただけないと肉として売られます。お願いです。どうか、どうか買ってください。」
俺はこの奴隷にした。
店員も可愛そうだと思ったのか、奴隷の服を数着と返品用の約束手形を発行してくれた。




