第9話:クリスマスがヤバすぎる!
《 前回のあらすじ 》
世界一ド派手なツリーをぶっ放したぜ!
──数日が経った。
コテージの暖炉がパチパチと音を立てる中、
テレビは連日「北極光の柱事件」を繰り返し流していた。
『奇跡的に助かった工場長のベイク氏は、意識を取り戻すなり、野望は諦めないと語っており……』
ピッ!
『妖精たちの行方は依然として不明……』
ピッ!
ノエルはソファに寝転がったまま、リモコンを投げて画面を消した。
「クリスマスを乗っ取ろうとか、バカかよ」
ルドルフがコーヒーをすすりながら、チラリと横目でノエルを見る。
「テロリストみたいな考え方だよね」
瞬間、銃口がルドルフの眉間にピタリ。
「こっち見ながら言うんじゃねーよ、クソトナカイ。脳漿ぶちまけたいのか?」
「ごめんなさい調子に乗りました!
安全装置外すのやめて!?」
とてもハートフルな朝の会話だ。
──場面変わって、サンタクロース協会本部・会長室。
黒檀の重厚な机の前で、ベイクが膝を震わせて立たされている。
革張りの椅子に深く腰掛けた会長は、顔を影に隠したまま、葉巻をゆっくりと吹かす。
「……で、ニコラウスの娘で間違いないんだな?」
「は、はい! 納品予定だったキラメキパウダーを失ったのは、全てノエルが──」
会長が紫煙をベイクの顔に吹きかけた。
「だが、納品せずに魔力を使ったのはお前だ。違うか?」
煙が渦を巻き、怯えるベイクを包む。
「お前には失望した。
虹色プロジェクトの一つを、たった一日で台無しにするとはな……
協会には、『ベイク氏は逃亡し、行方不明』と伝えよう」
パチン。
指が鳴る。
煙が晴れると、そこには痩せこけたトナカイが一頭、震えながら立っていた。
首には「Beik」と彫られた小さな鈴が、哀れに揺れている。
会長の声が、氷のように冷たい。
トナカイ(元ベイク)は、悲鳴にも似た鳴き声を上げた。
12月23日・夜。
ドアが苛立たしげにノックされる。
ルドルフが開けると、そこにはプレゼント袋を担いだクランプスが立っていた。
珍しく、黒いサンタ服を着込んでいる。
「笛吹いてないのに来るなんて珍しいね、クランプス」
「……本日はノエルに、ちょっとした苦情がありますの」
ドサリ。
袋が床に落ちる。
「ノエル! なんで貴女はいつも嫌がらせのような事をなさいますの!?」
ソファで寝転がるノエルが、天使のような笑顔で答える。
「面白いからに決まってんだろ」
「プレゼント袋がどうかしたの?」
ルドルフが袋を開けた瞬間──
グワァァァァッ!!
暴力的なまでの生姜の香りが爆発。
ルドルフ、即座に鼻血を噴いて転倒。
「ぐあああっ!? 鼻が! 鼻が死ぬぅぅぅ!!」
クランプスは鼻をつまみながら、袋を縛り直した。
「この袋の中に、閻魔大王も泣くレベルにスパイシーな香りのジンジャークッキーが、絶え間なく転送されてきます。説明して下さいませ」
ノエルは天井を見ながら足をパタパタ。
「チビどもを縛ってた契約が消えたから、先代が残した工房で働いてもらってんだ。
ボロい建物だけど『聖ニコラウスの工房だ』って教えたら、張り切ってる」
「でしたら、他のものを作るよう指示して下さい!」
「オモチャ作れって言うと、契約内容と違う!と主張すんだよ」
クランプスが呆れ顔で肩をすくめる。
「相当テキトーな契約しましたのね…?
で、この尋常じゃない量のクッキー、どうするつもりですの?」
ノエルがニパッと笑う。
「おいおい、俺はサンタだぜ? 用途は一つしかねえだろ」
(資格剥奪寸前だけどね)
ルドルフが小声で呟いた瞬間──
チュイン!
銃弾が耳の横を掠め、壁に穴が空く。
「ぎゃあああ! 本当に撃つなー! モゴモゴ言っただけなのに何で聞こえるの!?」
「サンタの耳を舐めんなよ?」
クランプスが袋を恐るおそるつつきながらドン引き。
「クリスマスプレゼント用……ですか?
これを、罪もない子供たちに……?」
絶え間なく中身が増えているせいで、
袋がビクン、ビクンと蠢いている。
「大げさだな。世界中の良い子たちだぜ? いくら量があっても――」
「一応言いますけど、このペースだと一人当たり10キロ配る計算ですわよ?」
クランプスが遠い目で虚空を見つめる。
ノエルも同じ方向を眺めて、
満面の笑み。
「明日が楽しみだな、ルドルフ、クランプス!
良い子たちにプレゼントを押しつけ──じゃなくて、配ってまわる素敵な夜になるぜ!」
こうして、
聖ニコラウスの娘ノエルは、
(若干歪んだ形で)サンタクロースとしての活動を再開した。
クリスマスの夜、
もし鈴の音と、
「うわあああ!?」
という悲鳴が聞こえたら、
空を見上げてみて。
きっとそこには、
ソリいっぱいにクッキーを乗せた、
最高に可愛くて最悪にヤバいサンタさんが、
街中にスパイシーなプレゼントを投下しているはずだから。
それでは皆さま、
メリークリスマス!
──ここまで読んでくれた良い子たちへ。
お疲れ様だったな。
だが、まだ帰るなよ?
・次のエピソードは12月25日、20時に投稿予定だとよ。
新年パーティー始めちまうぜ!
・ブックマークしてない奴、手あげろ。
ホールドアップしろとは言ってねえ。
・活動報告も要チェックだ。
小話をアップしていくよう、作者を脅しといた。
本編が待てない良い子は、そっちも読め。
──ノエルより。




