第23話:うちのサンタが欲しがりすぎる!
《 前回のあらすじ 》
アホ毛の神様がアホ毛の中に消えた。
北極、サンタクロースの家。
屋根を叩く風が唸り、家全体が微かに軋む。
外は猛吹雪で、窓ガラスは厚い霜に覆われ、指でなぞってもすぐに白く戻る。
室内では、暖炉の炎が赤くゆらめき、薪が時折パチンと弾ける音を立てていた。
外の氷が割れる音も、今日は聞こえない。
革のソファに深く沈み込んだノエルは、膝の上に業務用サイズのポップコーンボウルを抱え、テレビをぼんやりと睨みつけていた。
右手のコルト・ガバメントを指先でくるくる回し、左手でポップコーンを口に放り込みながら、画面に映るニュースに鼻を鳴らした。
「ふん……俺らがいなきゃ均衡神の暴走は止められなかったのに、あいつらばかり注目されんのな」
ニュースでは、新年に七福神の空中戦艦【七福来】が世界中を回って福を配る様子が繰り返し流れ、人々が笑顔でインタビューに答えていた。
横のソファではクランプスが黒いモコモコのロングコートにすっぽり包まり、頭にちょこんと乗せたヤギのぬいぐるみキャップを指先で直しながら、クッキーをポリポリ音を立てて食べている。
袋には金糸で「Bad Santa Only ♡」と刺繍され、暖炉の火を受けてルビーのような瞳とともに妖しく輝いていた。
銀髪が肩にさらりと落ち、クッキーを優雅に味わう姿は、お嬢様そのもの。
暖炉のすぐ横ではルドルフが立派な角を暖炉に向け、赤鼻を少し震わせながらコーヒーカップを両手で包んでいる。
毛並みが火の光で赤く輝き、時折尻尾をゆらゆらと動かしている。
「ノエルもクリスマスの時に世界を絶望に追い込んで、特番組まれてたでしょ。
それにしても、正月から大騒ぎだったね……少しは静かに過ごしたいよ」
ノエルがポップコーンを口に放り込み、頬を膨らませながら返す。
「静かすぎるよな、北極は。雪と風と銃声だけじゃ、退屈で死にそうになるぜ。
暇つぶしにターミネーター2でも観るか」
ルドルフがコーヒーカップを置いて、うんざりした顔でため息をつく。
「また? あの映画、ほんと好きだね……。
液体窒素で凍った敵を銃でぶち抜くやつ。
毎回『かっけえ!』って言ってるけど、よく飽きないよね」
ノエルがリモコンを手に取り、テレビ画面を切り替える。
「かっけえもんは、何回観てもかっけえんだよ」
その言葉を合図にしたように、ノエルのスマホがけたたましく鳴り響いた。
着信音はジングルベル。
ノエルは眉をひそめ、ポップコーンまみれの手でスマホを掴み、通話ボタンを押す。
「はいよ、ノエルだ。何か用か?」
相手は弁才天の明るく弾んだ声。
背景に波の音とトロピカルなBGMが聞こえてくる。
「ノエルちゃん~! やっと繋がった!
正月大決戦のお礼がまだだったよね? 七福神みんなで相談して、超豪華プレゼント決めたの!
常夏の南国リゾートホテルを丸ごと貸し切り! プライベートビーチ付き、インフィニティプール付き、BBQし放題だよ~♡」
ノエル、思わずポップコーンを噴き出し、ボウルを床にひっくり返す。
カリカリと乾いた音が響き、ルドルフが慌てて避ける。
「……は? リゾート? 南国? お前ら、今どこにいるんだよ」
弁才天の声がさらに弾む。
「もう現地! 私たち正月ツアー終わってそのままバカンス中なの~!
北極ばっかりじゃ疲れちゃうでしょ?
鏡開きの特設会場も用意したから、みんなでお餅食べながらのんびり羽根伸ばそうよ。
あ、人数多くても大丈夫よ、ホテル丸ごとだから!」
電話が切れる。
ノエルはスマホを呆然と見つめ、ゆっくりと顔を上げた。
瞳が、珍しくキラキラと輝き始める。
「…常夏…ビーチ…海…日焼けして銃の手入れしながら寝転がる…最高じゃねえか!!」
(次章へ続く! バカンス決定で妖精大群が動き出す!?)
──ここまで読んでくれた良い子たちへ。
お疲れ様だったな。
だが、まだ帰るなよ?
・次のエピソードは1月10日、20時に投稿予定だとよ。
・ブックマークしてない奴、手あげろ。
ホールドアップしろとは言ってねえ。
・活動報告も要チェックだ。
小話をアップしていくよう、作者を脅しといた。
本編が待てない良い子は、そっちも読め。
──ノエルより。




