第14話:うちのサンタが考えすぎる!
《 前回のあらすじ 》
仕込まれてた虹色の宝石をぶち壊したら、
七福神どもが35年ぶりに本気出した。
次の瞬間──
七福神全員が同時に立ち上がった。
恵比寿が両手を広げて叫ぶ。
「俺は……海の恵みを世界中に届ける神だった!!」
大黒天が米俵を叩く。
「俺は豊作の神だ! ケチなんて似合わねえ!!」
布袋が腹を叩いて笑う。
「笑顔を運ぶのが俺の仕事だ!!」
福禄寿が頭を撫でる。
「長寿と幸運を届けるのがワシの役目じゃ!!」
寿老人「健康と知恵を!!」
弁才天「芸術と美を!!」
毘沙門天が甲冑をガチャリと鳴らし、豪快な笑みを浮かべる。
「世界中に、福を届けるッ!!」
午前4時ちょうど。
毘沙門天が軍配団扇を一振り。
「煩悩童子よ──
呪縛は解けた。
今こそ福を届ける時だ」
甲板に108体の童子が整然と現れる。
さっきまでの不気味な低音は消え、
代わりに明るく、しかし律儀な声が揃う。
「作れ! 作れ!」
「福を! 福を!」
大きなホワイトボードが、バーンと掲げられる。
そこは、ノエルや七福神による書き込みで埋め尽くされていた。
「宝船・改 製造案
・でかくてド派手
・でかい大砲ついてる
・全世界同時生配信システム
・とにかくハデに!
・最高速度マッハ7
・世界中に福を届ける
「これ…もはや戦艦ですよね?」
クランプスが、ドン引きしている。
「最悪だ…。最後の一行以外、誰のアイデアなのかよく分かる…」
ルドルフが遠い目をしている。
宝船の周囲で、突然祭り囃子が鳴り始めた。
「よーし、いっちょ作るぞーっ!」
恵比寿が鯛の旗を振り回し、布袋が腹をドンドン叩いてリズムを取る。
煩悩童子たちが「作業! 作業!」と叫びながら、赤いハチマキを巻いて駆け回りはじめた。
大黒天が巨大な金槌を振り上げ、
ゴゴゴゴゴッ!
船体が一瞬で、途方もなく伸びていく。
「縁起ものは長いに限るわ!」
毘沙門天が黙々と甲板に主砲を設置。
ドカン、ドカン、ドカン……七門の巨砲が次々に据え付けられていく。
「砲のでかさは、神の威厳だ!」
弁才天が指を鳴らすたびに、船体が赤と金の塗装でピカピカになっていく。
「映える色は命よ!」
船のてっぺんに、100メートル級の巨大ネオンが取り付けられる!
30分後。
そこにそびえ立つのは、もはや「宝船」ではなかった。
超弩級空中戦艦【七福来】。
全長777メートル。
七門の大砲「福来砲」が威嚇するように並び、
船体は赤と金の、派手に映えるカラーリング。
頭上のネオンが「HAPPY NEW YEAR」とビカビカ光り、108人の煩悩童子が敬礼しながら「福を! 福を!」と合唱している。
「ぼくが考えたすごい戦艦、みたいなエゲツないものが今! 私の目の前に…」
ルドルフの喉が、ごくり、と鳴る。
その肩を、弁財天が優しく叩いた。
「ノエルちゃんの意見を多く採用したの。わたし達の恩人だしね。でも、心配ないわよ、私たちプロですからね♪」
ノエルが艦橋から身を乗り出して、
マイクを握りしめてニヤリ。
「よし、正月ワールドツアー!
出発だ!!」
ズゴォォォォォォォォ!!
艦体が一気に加速し、
音の壁をぶち破って朝焼けの空へ飛び立つ!
弁才天が船首でスマホを掲げ、
満面の笑みで生配信開始。
「みんな明けましておめでとう~!
今年は七福神が直接お届けに来ちゃった♪
ハッシュタグ #七福神ワールドツアー でよろしくね~♡」
高度3万メートル。
朝焼けの空に、突然、巨大な飛行物が現れた。
全長777メートルの、赤と金の、ド派手すぎる空中戦艦。
艦橋のてっぺんでは【HAPPY NEW YEAR】のネオンがビカビカ点滅。
甲板では小さな煩悩童子108人が整列して、朗らかに「福を! 福を!」と敬礼している。
世界は凍りついた。
不景気のどん底で、誰もがうつむいて歩いていた2025年の大晦日明け。
仕事はなくなり、笑顔は絶滅危惧種、おまけに前の年には強烈な刺激臭のクッキーがドカドカ降ってきて、ただでさえ終末感が漂っていた矢先の出来事だった。
「空に……戦艦?」
「終わりだ……世界が終わるんだ……」
誰もがそう思った瞬間──
ドブォン!!
第一砲塔が火を噴いた。
金色の鯛型の光が世界中に降り注ぐ。
恵比寿砲「鯛ノ刻」発射!
失業中のサラリーマンが、突然「俺、今年は絶対売れる!」と叫んでスマホで起業ページを開いた!
ガラガラガラ……ドカーン!
大黒砲「福袋重粒弾」発射!
ポケットに、なくしたはずの定期券や財布が、いつの間にか戻っている。
「え、マジで……?」
ホワッハッハッハ!!
布袋砲「大笑波動」発射!
ケンカ中の夫婦が「何笑ってんだよ」「お前こそ」と言いながら笑いが止まらなくなる!
シャラーン♪
弁才天砲「極彩映」発射!
企画が全部ボツだったデザイナーが「これだ!」と叫んでノートに走り書きを始めた!
ポワァ……!
福禄寿砲「寿星光」が輝く。
恋人がいない若者がスマホを見ると、同級生から「今度デートしない?」とメッセージが届いている!
シュラララ……!
寿老人砲「静寂の智」が、静かに放たれる。
頭がぐちゃぐちゃだった受験生が「これだ」と参考書を開く!
ドゴオオンッ!
毘沙門天砲「勝利の采配」が豪快に撃たれる。
「明日から路頭に迷う」と思っていた人が、宝くじに当選する!
そして──
七福神が同時に砲口を天に掲げる。
最終祝福砲!
七色の光が一つになって世界を包み、
空に浮かんだ文字は、言語の壁を超えて、同じ意味として人々の頭に入ってきた。
【明けまして おめでとう 世界】
艦内巨大モニターに、世界中の人たちが幸せそうに笑う光景が映し出される。
恵比寿が鯛を抱えて号泣。
布袋が腹を震わせて大爆笑。
弁才天が「映えすぎてヤバい」と震えている。
大黒天が米俵を撫で、「豊作なり!」と満足げ。
福禄寿と寿老人が静かに涙を拭い、
毘沙門天が、初めて、優しい笑みを浮かべた。
不景気の底で凍りついていた世界が、幸せに満ちていく。
超弩級空中戦艦は、朝焼けの中を、誇らしげに進んでいった。
──ここまで読んでくれた良い子たちへ。
お疲れさん!
だが、まだ帰るなよ?
・次のエピソードは12月31日、20時に投稿予定だとよ。
年末の忙しい時期だ。
ブックマークして、時間ある時にでも読め。
・ブックマークしてない奴、手あげろ。
ホールドアップしろとは言ってねえ。
・活動報告も要チェックだ。
小話をアップしていくよう、作者を脅しといた。
本編が待てない良い子は、そっちも読め。
──ノエルより。




