偽物か本物か2
商人の言葉にピリッと空気が変わった。
後ろに控えていたブラウンさんが前に出て来て、一言断ってから鑑定を始める。
私はドキドキとそれを見守っていると、ブラウンさんはすぐに顔を上げた。
「本物です。」
一枚目の水彩画はどうやら本物らしかった。
じゃあ、二枚目が違うとか?
私は手のひらサイズの絵画へ目を向けた。
あの宝石は偽物だったりするのだろうか。
ブラウンさんは手袋をした手で手に取って傾けたり、ルーペで細やかな部分まで確認してから私達に振り返る。
「こちらも、本物です。」
「……それは良かった。」
殿下は何か言いたげな気持ちを胸の奥にしまったらしかった。
私がここで台無しにするわけもなかったので、ニッコリと絵が買えて満足ですという表情を浮かべる。
てっきり偽物を売りつけてくると思ったけど、私の勘違いだったのかな。
横で何やら考え始めている殿下を横目に商人達を見ると、絵を包み始めていた。
この人達は犯人じゃなかった……?
あれ、ということはこの絵は本当に買ってしまうの?
殿下の方を見ると、私の視線に気づいた殿下に困ったような笑顔を向けられてしまった。
「では、お会計はこちらになります。」
信じられないほど丸のついた数字に、私は思わず目を逸らした。
その視界の端に絵を包む副会長さんの姿が映る。
「最終確認です。こちらの絵でお間違えないですね。」
包み終わった絵画を持って来させた商人は布を少しだけめくり、合っているかの確認をとる。
ほんの数秒。先程買った絵が見せられる。
殿下が頷いて契約完了のサインをしようとペンを取ったのを私はほとんど反射的に止めていた。
「お待ちください、殿下。購入してはいけません。」
私の言葉に殿下は驚きながら、犯人を刺激しないように言葉を綴る。
「今更怖気付いてしまったのかな?大丈夫だよ、払うのは君じゃないから。」
どうやら私が本当に買うことになって不安から言ったものだと思ったようだった。
商人の人が手にグッと力を入れたのが見えた。
何かを堪えるようなその仕草に私は確信する。
「いいえ、殿下。偽物を買ってはいけないと申しているのです。」
「黙って聞いていれば、何を言っているんだ!さっき鑑定は済んだだろう!?」
私の言葉に一番に反応したのは予想した通り商人だった。
「……確かに彼女の態度は失礼だったかもしれないけど、女性に声を上げるのはいただけないな。」
商人の態度に殿下も疑念を抱いたようで、私を庇ってくれる。
その笑顔はやっぱり何を考えているのかわからなかった。
「ええ、先程鑑定した絵画は本物なのでしょう。」
場の空気を掴む為いつもよりはっきりと口にした声は室内に響いた。
「そうでしょう?それなら偽物などと戯言は……」
「ですが、今目の前にあるこれは先ほどのものとは明らかに違います。」
私の堂々とした態度に商人は固まった。
心なしか顔色が悪くなった気がする。
「何をおっしゃっているのですか?貴方が気に入って選んだものですよ?」
往生際の悪いの言葉に私は怒りを腹の中に隠してにっこりと笑顔を作る。
「私が気に入ったのは、さっき見せていただいた絵。これではありません。」
絵の入れ替わりを示唆すると、殿下はブラウンさんに目配せをした。
ブラウンさんは自然な動作で絵画を手に取り、ルーペを使って鑑定をする。
「彼女の言う通り、この絵は偽物です。」
その言葉に今度こそ二人の顔は真っ青になった。
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【追記】
明日から二日に一回更新になります。




