偽物か本物か
「こちらなど如何でしょう?」
最初に出されたのは水彩画で描かれた絵画。
キャンパスに湖の風景画が映し出されたそれはとても美しいものだった。
早速見たことのない画家の絵だと思いながら、
「とても綺麗ですわ。」
と一言感想を述べる。
「彼女もこう言っていることだし、候補に入れといてもらえるかな。」
「かしこまりました。ありがとうございます。」
他の絵と混ざらないように端に寄せられた絵画をじっと見る。
何かあるかもしれないし、目に焼き付けておこうと思っての行動だった。
しかし、商人には別に映ったようで、
「……ご令嬢はこのような絵が好みですかな?」
と質問されてしまった。
一瞬疑われたのかもしれないとヒヤッとしたが、どうやら商売チャンスだと思われたようだった。
私は笑顔のままで口を開く。
「ええ、派手な色のものも良いですけど、このような淡い色も素敵ですね。」
「普段は濃いものを好むということですか?」
「え、ええ、まあ。」
客の一言一句を見逃さずに核心を突くのは流石としかいいようがない。
私は淡い色の方が好きだけど、敢えて派手付きのご令嬢という印象を与えようと放った言葉に思いの外食いつかれて笑顔を崩さないので精一杯だ。
「でしたらこちらなどいかがでしょう?本物の宝石を使って描かれたものになります。」
そう言って差し出されたのは細々とした宝石達がキャンバスいっぱいに煌めいている絵画だった。
これは一体原料だけでいくらするのだろうと怖い想像をしてしまいながらも、なんとか平穏を装う。
いや、装ったらダメか。
「まあ、素敵ですわ!こちらはどの画家のものなのでしょうか?」
いかにも気に入りましたという反応に商人の方はニヤリとする。
「海の向こうのラスカという者です。平民出身なのですが、数々の名画を残していて、コレクターの中では高値で取引されています。」
「あら、平民の出なのに宝石を使えたんですの?」
「彼の絵を気に入った方が是非宝石を使って世界を表現して欲しいと発注したものになります。その方が亡くなって、今我々の手に渡ったのですが、こんなチャンスは二度と訪れないかもしれません。」
「まあ!それは急がなければなりませんね。」
こうやって客の焦りを引き出して買わせるのは何処の紹介もやっていることだが、やっぱり凄いと思わざるを得ない。
貴族は特別という言葉や貴重なものに弱い。
そこを刺激されたら一発だろう。
やっていくうちに私の役割がわかって来た気がする。
殿下達は隙がないから警戒されてしまうけど、私がいることで少しの隙を見せる。
そしてそんな私を選んだ殿下の評価が商人の中で甘いものになって油断させる、というものなのだろう。……多分。
私の考えられるのはここまでで、これ以上殿下が何を思ってこういう状況を作り出したのかまでは計りきれない。
「ではこの二点をお願いできるかな?」
「お買い上げありがとうございます。」
すんなりと私の意見が通ってしまったことに、今更ながら本物で、この取引が正当なものだったらどうしようという不安が襲う。
「……その前に、鑑定をしても構わないかな?君達を信用してないわけではないけど、王宮に飾るものは鑑定してから買うことが決まっているんだ。」
おぉ、すごい。
そう言われてしまったら断りようがないし、今更慌てたら不自然になってしまう。
どう出るのだろうかと商人の顔色を伺うと、
「もちろん構いませんよ。」
まるで本当に何もないようにそう告げられた。
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