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王子の頼み事

いつもより更新が遅くなってしまいすみません。

「まさかこの件に興味があるなんて思いませんでした。殿下は今回起こったことについてどうお思いですか?」

 

 私も敢えて議題には触れずに聞いてみると、そうだなと考える素振りを見せた殿下は口を解く。

 

「学園でこんなことをするなんてとても勇気があると思うよ。」

 

 そのどちらとも取れる返しに、流石だなと感心していると、足を組み直した殿下は学園長先生に話題を振った。

 

「学園長はどうお考えですか?」

 

 えっ、なにこれ。

 

 てっきり私に返ってくるとばかり思っていたボールがいきなり変化球を見せたので目をパチクリとさせる。

 

 試しているのは、私だけじゃない……?

 

 そもそも、こんなこといつまでも続けるわけにはいかないはずだと殿下の意図を探ろうと頭をフル回転させていると、学園長先生は苦笑いを浮かべた。

 

「殿下、お戯れが過ぎますよ。いくらスミスくんの反応を見たいからって、これは不安にさせるだけですよ。」

 

 学園長先生の言葉に殿下へと視線を移すと良い笑顔を浮かべた顔と目があった。

 

「あはは、ごめんごめん。君を見るとどうしても揶揄いたくなってね。」

 

 なんですか、その理由。

 

 とツッコミたくなるのをグッと堪え、なんとか平穏を装う。

 

「……余興はここまで。これからが本題だよ。」

 

 腕を顔の前で組んだ殿下はさっきよりも真剣な表情を浮かべている。

 

 一体どんな話が始まるのだろうと私は姿勢を正して耳を傾けた。

 

「まずは、『花姫』を偽物と見分けてくれてありがとう。生徒の目に触れる前に解決できたのは君のおかげだよ。」

 

 真っ先にお礼の言葉を告げられ、私の行動が役に立ったと改めて言われているようで嬉しくなった。

 

「鑑定士でも見分けるのが難しいと聞いたよ。よく一目で見分けたね。」

 

 さらに褒めるような言葉を続けられて、嫌な予感が私を襲う。

 

 偉い身分の人が過剰に褒める時は何か裏があると思った方がいい。

 

 咄嗟に父がそう言っていたのを思い出し、額に汗が浮かぶ。

 

「少し、目が良いんです。」

 

 少しを強調して告げると、殿下の目がキランと光った。

 

「そんな君にお願いがあるんだ。」

 

 まるで私の言葉を待っていたかのように放たれた言葉に、嵌められたと後悔する。

 

 何が目的なのかわからなかったら、いつもの癖で同じ言葉を返してしまった。

 

 多分、殿下はそれを見越した上で褒めたのだろう。

 

 そもそも目が良い以外になんて言えばいいのかわからないのだから、そこは仕方がないと思うしかないのだろうか。

 

 それても、運が良かっただけです、とか?いやいや、運が良いからって絵画が見分けられるわけじゃない……って、今は目の前のことだよね。

 

 うーんと言葉を考えそうになって思考を軌道に戻す。

 

 厄介ごとの匂いしかしないが、取り敢えず話だけでも聞こうと殿下を見ると、殿下は表情の読み取れない笑顔を浮かべていた。

 

「実は王宮に飾る絵を買おうと思っているんだけど、そこに同行して欲しい。」

 

 その笑顔は恐ろしいほど完璧で、ゾワッと鳥肌が立つ。

 

「もちろん、目利きの者を連れて行くけど、こんなことがあったばかりだ。念には念を、と思ってね。」

 

「えっと、私でよろしければ協力させて下さい。」

 

 あくまで君はサブだから気負う必要もない。やってくれるね?と言いたげなその圧に、私は頷く他なかった。

 

 殿下の頼みを断れる人なんてこの国でも片手で数えられるほどだろう。

 

 YESの答えに満足そうに頷く殿下を見て、私は最初から、どんなに頭を働かせてもこの結末は回避できなかったんだろうと思わざるを得なかった。

 

 結局、何もわからずに頼み事を引き受けただけだと私が気づくまであと数秒。

 

 * * *

 

 学園長室と書かれた部屋から二人の生徒が姿を現す。

 

「詳細をお伝えしなくて宜しかったのですか?」

 

 赤髪の騎士がその主である王子に話しかけると、笑顔のまま口だけが動ごいて答えが返ってくる。

 

「うん、巻き込みたくないしね。」

 

 そう答える王子はどこか楽しそうな顔をしている。

 

「珍しいですね。合理的なあなたが私情を挟むなんて。」

 

 騎士の言葉に王子は笑顔を浮かべるだけだった。

 

「……私はそこまで薄情ではないよ。」

 

 不意に立ち止まった目線の先には、一年生の教室があった。

 

 私情挟みまくりじゃないですか、と騎士が心の中で思うのも無理ないほどわかりやすい。

 

「それにしても、廊下で話すなんていくら防音石があると言っても、少し軽率過ぎるんじゃないか?」

 

「では、どこで話せば良いと?監視の目はいつだって付きまとうものでしょう。」

 

 騎士の返しに王子は苦笑いを浮かべた。

 

 窓の隙間から差し込んでいた光が影を落とす。

 

「……早くこの件を片付けないとね。」

 

 不敵に笑うその姿は誰が見ても悪役そのものだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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