一歩を
「で、どうだったの?」
食堂でルーナと無事に合流した私は急いで日替わり定食を注文。
席に着くとすぐにルーナが逃さないと言わんばかりに問いかけてきた。
「ん? 何が?」
手を合わせて目の前に広がる美味しそうなハンバーグに気を取られていた私は一瞬何のことだかわからずに聞き返してしまった。
「何って! ……ほら、学園長に呼び出されてたでしょ?」
ガシャッとテーブルの上の食器が音を鳴らし、周りの視線を集めたことでルーナは大きな声を顰める。
「うん、その話はまたあとでね。ここだと誰が聞いているかわからないし。」
私の言葉にルーナはそんなにやばかったんだろうかと不安そうに眉を下げた。
「大丈夫だよ。怒られたわけではないから。」
言葉が足りなかったなとそう付け足すと、よかったと安堵の息を吐いていた。
予鈴のチャイムの音が聞こえ始め、私は慌ててご飯を口に駆け込んだ。
だから忘れてしまっていた。
応接室の前の廊下ですれ違った人物のことを……
* * *
「それで、何の話だったの?」
放課後。ルーナの部屋にお呼ばれした私は、紅茶を差し出される。
「うん、やっぱり『花姫』は偽物だったんだって。」
「えぇっ!?」
コップを受け取りながら答えると、ルーナの驚愕の声が聞こえた。
「いや、エリーナが嘘をつくとは思ってなかったけど、偽物って、結構やばいよね?」
「……そうだと思う。学園長先生も調査中みたいなこと言ってたし。」
お砂糖を一つ入れて紅茶をかき混ぜる。
「そんなことになってんのに、なんでエリーナは平然としてるの?」
ジト目を向けられた私は苦笑いを浮かべた。
「だって、この件には関わるなって遠回しに言われちゃったから、もう気にするのもあれかなぁって。」
一口紅茶を口に入れると、茶葉の良い香りが口いっぱいに広がる。
ミルクを入れても合いそうだと思いながら、ルーナに視線を移すと不服そうな顔をしていた。
「今日呼び出されたのも釘を刺すためだったってこと? どこまで自分勝手なの!」
その矛先はどうやら学園長先生に向かっていたようで、クッションを叩きながら怒りを表している。
きっと婚約者の件と今回の件がどっちも学園側の都合で終わらされてしまったことに腹を立ててくれているのだろう。
「前回のはともかく、今回は仕方ないなって思ってる。危ないことに巻き込まないための配慮だと思うし。」
「だとしても! もうちょっとやり方があったんじゃないの!?」
ボフンっと両手をクッションに押し付けたルーナ。
私のために怒ってくれている。そう思うと胸が軽くなった。
「うん、私もそう思う。」
だから、自分の正直な気持ちがポロッと口から出てしまった。
私の言葉にルーナは驚いて目を見開く。
「私、学校の為だって言い聞かせてたけど、やっぱり納得なんてできない。」
はっきりと言葉にすると、心の中が整理できたみたいにモヤモヤがなくなった。
「よく言った! エリーナ、成長したね。」
よしよしと頭を撫でられて笑みが溢れる。
「えへへ、そうかな。」
ルーナに褒めてもらえると、なんだか強くなった気がして、私はどこまでも頑張れるような気持ちになる。
「よし、じゃあその勢いで直談判しに行こう!」
「直談判?」
予想外の言葉に聞き返すと、ルーナは首を縦に振った。
「そう、『花姫』のこと納得できないってちゃんと伝えに行こう?」
ルーナはいつだって私に道を示してくれる。
敷かれたレールの上を歩くだけならどんなに楽だろうか。
でも、自分で考えなければならないとも同時に思う。
直談判は私から言い出すべきだった。
だって、ルーナに責任を押し付けるようなものだから。
「うん、ありがとうルーナ。私、頑張ってみるね。」
ちゃんと一人でやり遂げて、自分のことを認められるように。
キリがいいので少し短いですが今日はここまでの投稿になります。
次の話では物語が大きく動くかも?
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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