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三人桜  作者: 薙月 桜華
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第六話  試された後に

   第六話  試された後に

    


 試験というものは待っていなくてもいつかは来るもので、そこで人は試される。

 高校生にとっては中間試験や期末試験、学外模試といった様々な試験がある。ある意味、高校生は一番試される時期なのかもしれない。

 飛鳥、紗綾と遥も同様に高校最初の中間試験に挑んだ。

 中間試験は、一週間のうちにそれぞれ行われた。高校始まって最初の中間試験のためか内容は簡単だった。だけど、紗綾にとっては部活が無くてやる気が出ないようだ。毎日のように試されるのは受ける側としてはなんとも辛い。これならば一日で全部終わらせるように日程を組んで欲しいくらいだ。

「答案返すわよ。名前呼ばれたら取りに来て。」 各授業中に答案を返していく。答案を見せ合う飛鳥たち。数点の差にクラスメイトは一喜一憂だ。

 結果として、飛鳥たち三人とも赤点は免れた。紗綾がちょっと危なかったが、赤点による再試は無いらしい。赤点は学年平均点の半分以下。30点取れれば良いわけじゃない。

「やった。試験終わった。これで次は合唱だね。」

 開放された喜びを顕にする紗綾。三人ともそれぞれ安堵する。

 三人とも勉強で出来なかった部活や遊びへ没頭していく。



 中間試験の次の週。合唱コンクールの話がクラス担任から出てきた。クラスの学級委員が出てきて話し合いが本格化する。やれ何の曲がいいだのあの曲がいいだのと言い出す。女子だけだからか、あらぬ方向に行ったり戻ってきたりと忙しい。

 結局良く知られる合唱曲に決まる。下手に選ぼうとすると合唱用の譜が無かったりと面倒な事が起きかねない。こういう時は王道だ。

 練習は放課後。はたまた、クラス担任の授業中。授業中に練習して良いのかと聞かれれば、授業をしっかり行ってくださいと保護者は言いそう。だけど、学生の身分からすれば授業よりもイベント準備のほうが楽しいのが現実。

 始める前にパート・役割を決める。とはいえ、指揮者とピアノぐらいしかまずは決められない。ほとんどの人は自分のパートがはっきりしていないのだ。それでも、合唱部の愛原さんがみんなをまとめる。彼女はすらっとしていて、何時も表情がきつい。いや、合唱コンクールだからだろうか。やる気のある子、いやいややる子。本当に様々だ。非協力的な人たちをどうにか引き込むのも今回の合唱コンクールの一つの目的かもしれない。

「はい、じゃあみなさん発声練習から。」

 みんなで練習を始める。こういう時、ピアノが出来る子というのは重宝される。その中でも愛原さんは小さいころからピアノを習っていて、合唱部に入っている。ピアノが出来て歌も大丈夫とかなんというリーダー格だろう。出来る子的ポジションでクラス内でも目立つ。実際今回のコンクールではピアノを担当してもらう。因みに指揮は学級委員長が任されたそうだ。きっちりしっかりするタイプなので大丈夫だろう。詳しくは知らないけど。

 話ではこの女子高の合唱部は全国の合唱コンクールでもたまに優勝するくらいの実力らしい。とにかく県内ではトップクラスということだ。まぁ、愛原さん本人の実力とはまた別の話である。

 だから何だというわけでは無い。問題は合唱に触れていないクラスメイトをどうやってまとめるかだ。

 飛鳥はメゾソプラノ、遥はソプラノで紗綾はアルトと分かれた。無理して自分に合わないパートで歌うと喉を痛めるので注意することと言われた。

 飛鳥たちは普段それほど歌わないので自分の音域が分からない。ソプラノとアルトまでなら中学でも分かれたが、メゾソプラノとはなんなのだ。話を聞けばソプラノの次に高い音域を歌うパートらしい。女声のみだとさらにパートが分かれるのは仕方がないが面倒だ。男声のほうも分かれるらしい。男声の合唱。力強く見えるがなんか花が無いような気がした。いや、それは彼らに失礼か。近くの男子校にも合唱部があるそうだ。

 パートが分けられるとそれぞれパートごとの練習に入る。合唱というのはパート一つでは成り立たない。吹奏楽部の子だって、一人で出来る曲が限られる事と同じらしい。

 合唱というのは面倒なもので、誰かが音程を外したりすると、分かる人にははっきりわかってしまう。

「今日はここまで。おつかれさまでした。」

 練習が終わりそれぞれが帰路につく。とはいえ、部活動をしている人たちはそれぞれの部活に向う。

「なんか疲れた。合唱って意外と体力使うのね。」

 机につっぷす紗綾。遥もいつもより元気が無い。

 飛鳥は荷物を持って立ち上がった。これから部活の集まりがある。

「それじゃあ部活行くね。」

 飛鳥は二人と別れて廊下を歩く。そこかしこから聞こえてくる歌声。

 今この時だけは、音楽が学校を満たしている。中学とは違う、男の居ない世界。

 けど、何か物足りない気持ちになるのは何故だろう。

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