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良心  作者: 森村渉
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「ねえあの娘…汚いね。ロングヘアーは好みだけどあれは…」

「あの長すぎる髪はロクに手入れをしていないかららしいぜ。恋愛対象じゃないな。」


「やだわ。引っ越す場所を間違えたわ。近所なんて臭いに違いないわ。」

「奥さん、それは私も思いました。」


東京のとあるアパートに彼女は住んでいる。夜は街灯が少ないため辺りは暗く、治安が悪いため、複数のバイク音が聞こえてくるのは日常茶飯事。道路にはタバコの吸い殻がよく落ちている。

いつものドアを開けるとごみ袋が玄関を埋め尽くしている。


母は今日もパチンコに行っているから夜遅い。彼女は隣の部屋の住民が植木鉢で育てているトマトをこっそり盗み、それを口にした。

(こんな生活で何がいいのか…)


彼女にはお金がない。父は交通事故で重傷、今は植物状態であるため収入のほとんどは彼女のバイト代である。


朝起きると彼女はすぐバイトに行く支度をする。これが日課である。

長くて邪魔な髪は帽子の中にしまい、バイト先の近くにある畑から盗んできたじゃがいもを食べ、自転車の鍵をホコリまみれのタンスから取り出してアパートをあとにした。

彼女は不登校である。汚いとクラスメイトからいじめられるからである。


小学生のころから使っている自転車をいつものように乗りこなし、バイト先に行く。子供用だからあまりスピードが出ないが、大急ぎで足を動かしている。

自転車で下り坂を進むときが一番気持ちいい。そのとき、足元から「バンッ」と、イヤな音がした。彼女は驚いてすぐブレーキをかけ、すぐに止まった。さっきまであった高さには明らかに満たしていないタイヤが自転車に固定されている。パンクだ。


今は替えのタイヤを持っていないため画面が割れたスマホを取り出し、バイト先に電話した。

「すみません。急きょバイトに行けなくなったので今日は休ませてください。はい…はい。わかりました…シフトは後日調整します…」


彼女はレストランの接客を担当している。レストランのオーナーはとてもいい人で、賞味期限の切れた食材で夕食をご馳走してくれることがある。夕食の節約のために、このバイトを選んだのだ。

(今日の食事どうしよう…)


登り坂を上っていく道中、コンビニがあったからついでに寄ることにした。今の所持金は300円だからおにぎりくらいは買えるだろう。

『次のニュースです。都内で26歳の取騎最雲(とりき さうん)さんの遺体の一部が発見されました。警察は…』

コンビニの真上には大きなモニターがあり、今日のニュースが把握できる。

彼女はニュースを無視してコンビニに入ろうとした。そのとき、

『次のニュースです。銀行強盗をした高校生5人が捕まりました。彼らの供述は闇バイトで雇われたとのことです。闇バイトに参加しないように注意喚起がされています。』


彼女は足を止めた。

「闇バイト」、それはお金を渡すからと人を集め、脅しや暴力によって犯罪行為をさせるなどの…とにかく怪しいものである。

だが、彼女は今の生活より刑務所の方が断然いいと感じていた。

借金取りに追われてバイトしかやることがなく、友達もいない、食事をするのがやっとな毎日。見張りがいるけど仲間がいて、三食付きの毎日。どちらの方がいいのだろうか。


彼女は後者を選んだ。それに、捕まらなければお金を沢山貰えるかもしれないと…。


彼女はコンビニの入り口から離れてスマホを取り出し、溜まったDMを開いた。なぜかと大量に送られてくるDM。そこには怪しいDMが沢山あった。

『頑張れば1日で1000万円も夢じゃない?!様々な仕事があるよ!そんなバイトの申し込みはこのURLを開いてね!』

彼女はこのメッセージを選んだ。1日で1000万円稼ぐなんてどこかの王様かよと突っ込みたくなるこのメッセージは怪しくて面白そうである。


URLを開くと名前と住所と連絡先とマイナンバーカード、それと顔写真を載せる欄がある。

それにしても彼女は自分の名前を見るだけで気分が悪くなる。

(名前は…奇日良心「きびはあと」。何度見てもため息をついてしまう私が情けないわね。)


申し込みの手続きをしていくうえで、目を引かれる質問が来た。それは、「あなたのあだ名は何ですか」である。彼女には特にあだ名みたいなものがなく、彼女はテキトーに「ハート」と入力した。


申し込みが終わり、送信が完了した。返事はすぐに返ってきた。

(「明後日新宿のとある倉庫に来てください。集会があります。詳しい場所は当日連絡します」?何これ。ああ。来なかったら家まで来て脅します的な?楽しそうね。)

『ハート』は明後日に向けて自分で髪を切り、準備した。しかし、その闇バイトはハートが思っていたものとは全く違うものだった…

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