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「……」
「……」
「これ不味いわよね…」
「そうだね…」
僕とリズは2人で頭を抱えていた。
『アレキサンダー将軍、魔王討伐メンバーに差別を受けていたと告発。然るべき措置をとるとのこと』
今朝の新聞だ。
辺境とはいえ、連絡はつながっているため新聞も手に入る。時間差はない。
「僕は差別していないんだけどな…世にも珍しい半悪魔だから特別扱いはしていた気もするけど……。リズは?」
回復も速そうだし、少し解剖させてほしいなとは思っていた。
口に出したことはない…はず。そのせいでよそよそしくなっていた可能性はあるけど。
「私もしていないわよ。そうね…悪魔は試練を与える存在とされているから一言一句聞き逃さないようには注意していたかしらね……」
「……」
「……」
また沈黙が訪れる。頭が痛い。…僕は頭が痛くなるはずがないので気のせいかな。
「……心当たりはお互いあるようね」
リズが重々しく口を開いた。
「……謝りに行くべきだろうか」
僕も口を開いた。気分は重い。
「謝罪を要求しているわけではないからそれは相手を逆上させる可能性もあるわ…でも会いに行った方が良さそうね。呪いの件もあるわけだし」
「リズはここから離れてもいいのかい?」
「……。本気で結界をはれば大丈夫よ。……多分」
そりゃあリズが本気で結界をはれば敵が忍び込むことはないだろうけど…。
「……」
「…こういう時にアビーがいれば良かったのかしらね」
「もしかしたら向こうで会えるかもしれないよ」
「そうね」
▫
「そういうことで今回は馬車を使います」
「そんな…」
何故かショックを受けているレイに僕は困惑する。
レイはあくまで護衛として雇ってるんだけどな。さっきの女の子に対抗心を燃やすのは分かるが、馬車まで敵視するのはよく分からない。反抗期かな。
「レイに3人も抱えさせるわけにもいかないからね」
「…はーい」
レイを説得した。
結構聞き分けはいいんだけどなぁ。
どうにかして早とちりと死に急ぎがちな性格を矯正しないと早死してしまいそうだ。
「リズ、結界はれたー?」
「当たり前じゃない。私をだれだと思っているの?」
「枢機卿のエリザベート・アングリクス…だよね?」
「分かってるじゃない。…まあ辺境に追いやられているから肩書きだけだけれど」
合っていて良かった。リズのことは定期的に新聞で見ているのだ。…親友だし。
「じゃあ行こうか」
馬車と馬はアンジー、さっき一緒に人面鳥を食べた少女が用意してくれた。
どうやら、彼女を置いていなくなった母親が、唯一残していったものらしい。ちょうど良くて助かるけど、そんな都合がよいことがあるのかと驚いた。




