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エピローグ①

「はあ……」


 ため息をつく。私はなんだかんだと、上手くやっていた。まあ、昔助けた王子様がしつこくてめんどくさいとか、賊を倒したことで、騎士にならないかと言われて迷ったりとかいろいろあったが、そこそこ楽しくやれている。


 なぜ、ため息をつくのかってそれは……。


「おい、俺の依頼はどうなってる」


「……アシュリー。いくらなんでも態度が悪すぎないか?一応私はお前の上司のはずなんだが」


「うるさい」


 アシュリーがいるからである。プロデュースをするとセディスさんに言ってしまった手前取り下げることもできず、私は新聞記者として世界を飛び回りながらアシュリーを英雄にするためにそれなりに手を尽くしていた。


 セディスさんがいない時のアシュリーは態度が悪すぎる。目線すら合わせずにぶっきらぼうに答えるアシュリーにため息をつきたくもなる。

 子供の時は変なやつではあったがここまで態度は悪くなかったはずだ。

 セディスさん曰く人にあまり馴染めないせいで、少し敵意が前に出てしまっているだけなんだ……とか。相変わらずセディスさんは人に優しいんだか雑なんだか分からない人だけど、子供のことは一応心配しているらしい。


「大学在学中だろ?そんなに気を焦らなくても……」


「もう学士は取った。今は修士課程だよ」


「そう……」


 アシュリーは思った以上に優秀らしい。勉学と並行でもなんら問題ないようだ。


 レイは、発表した論文が評価されたとかで、そのままアメリカの大学に通っていた。私立なので学費を稼ぐために、こうして私に雇われている。どうやら1年で学士の単位を取ったようだ。


「頭脳明晰の名探偵は少し偏屈くらいでちょうどいいのかもしれないな……」


 世界中に名を馳せる名探偵としてアシュリーは有名となっていた。素の身体能力の高さも荒事にはちょうどいいらしい。


「それで次の依頼だが、ここの街に人を優に超える大きさの狼が出たという噂がある」


「いかにも俺向けだね」


「その通り。場所はキカネ街っていうらしい。あまり良い噂は聞かないが」


「行く!行きます」


「ん?うん頑張ってな」


 アシュリーが依頼表を奪い取るように持って行き走っていなくなった。


 窓の外を見る。アシュリーは本人がヤバいやつだからか知らないが、ヤバい女によくモテる。

 私……女に会いに来ているからと何人かの女が張り付くように観察している。もちろん隠れてはいるが。


 ……。あの女は聖女じゃないか?思わず目を擦る。取材で見たことあるぞ。どこで釣ってきたんだ。

 思わず窓を開ける。


「お前聖女だよな?」


「ち、違いますが!?」


「取材させてくれ」


「だから違います!!」


 口を開くと思ったより幼い。なんなら私よりも若いんじゃないか?そうだとするとおかしいな、聖女がその名を轟かせ始めたのは確か10年くらい前か。子供だったということになってしまう。とすると、彼女が聖女であるというのは私の誤解なのだろうか。


「心配するな。身長の高い男は好みじゃない」


「え……?」


「え?」


 女が私の頭からつま先までじっくり見る。

 どうした?


「女性だったんですね」


「……。いや、声で分かるだろ。服も一応女物だし」


「それは良いことです。異性装はいけませんよ?」


 男に熱を上げている割にそういうところは聖職者らしい。奇妙なことだ。


「アシュレイ様と随分仲が良さそうでしたが……」


 他の女がそう言った。……彼女も見たことがあるな。獣人の戦士だったか?一見すると大人しそうなお嬢様に見えるため自身の記憶が不安になる。しかし、よく観察すると、足運び、呼吸など訓練されら戦士そのものであり、自身の観察眼に自信を持った。

 女王の姪であるはずの彼女がここにいる。彼女にもぜひ取材をしたいところだ。


 しかし私とアシュリーの仲がいい?あれで?


「まあ仲が悪いわけではないが」


「狙ってるんでしょう」


「いやだから、私は背の高い男は好みじゃないって」


 正確には私より背の低い男が好きだ。理由?理由は特にない。必要か?

 私は結構身長がある方なので探すのは難しくない。私を呼び寄せようとしつこい王子様だって私よりも身長は低い。少女趣味でもあるのか、会う度昔やったみたいにお姫様抱っこを要求してくるのは面倒だが。


「じゃあなんでアシュレイ様とあんなに仲良くできるんですかー!おかしいじゃないですか。私が話しかけても無視ですわよ!」


「そうなんだ……いや、ただの腐れ縁だ。今度会ったら好意を向けてくれる人間には優しくするよう伝えておくよ」


「こ、こここ好意!?わたくしはそんなハレンチなもの持っていませんわ!」


「そう……」


 ストーカーしてるくせにそこは否定するのか。

 面倒くさい女だな。そこだけは少しアシュリーに同情する。


「……」


 無言で最後の1人が私を見つめている。ああ、ちょっと不自然に感じると思ったらハーフエルフか。珍しい。


「そんなにアシュリーのことが気になるんだったら私が着いてきてやる。もちろん取材はさせてもらうがな」


 そんなこんなでアシュリーを追いかけることになったわけだった。


 どうやって追いかけたかと言えば今までと同じだ。ハーフエルフの女のストーキング能力の高さには背筋が凍った。あいつも苦労しているんだな……。

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