7-11
「僕の好奇心につけ込んで……相変わらず人でなしですねセディスさん」
僕の放った大剣は当たり前のように止められた。ははは、前の魔王より強そうで嫌だな!
「リーザがいないのは痛いけど仕方ない。忙しいみたいだから。言ってること、わかる?」
アビーが敵意を剥き出しにしたような顔で言った。
……ここまで大事になってるって知らなかったからじゃないのか。
そういうことを言いたいわけではないと分かっているが、どうしても指摘したくなるのを抑える。
「セディスの真似いつまでするんだよ、お前向いてないぞ」
「うるさい」
「……確かにアビーなら何時でもリズ、連れてこれるもんね?ああ、もちろんする必要はないよ」
仕方ないのでアビーの煽りに乗ることにした。
これでいいのかは知らないけど、補完程度にはなるだろう。横目でアルの様子を窺う。
「うへえ」
ジーンが僕を見て気分が悪そうな顔をして、言葉を発した。それはどういう反応だ?答えによってはもう1回牢屋にぶち込んでやろうか?なんてね。
「はあ、茶番はいい加減にしてくださいよ、アビーさんもお得意の爆発魔法?でしたっけ?使ったらどうですか?」
「なんだと」
アビーが怒ったような顔で魔法を準備する。
「“尖れ”」
地面から針のようなものが飛び出して生えてくる。
アルが焦った顔で避けた。
「こういう時は爆発か氷結でしょう!」
「?なにそれ。またよく分からない作法?」
「ああもう!」
アルがアビーを直接狙おうと、……姿がブレた?
アルがアビーの目の前にいる。
「それはセディスで見た」
そのままアビーに蹴りあげられた。
僕のとは全く違う仕組みだと思うが、まあ対処できたならいいか。
「本当に悪魔になったんだねぇ」
僕の近くまで吹っ飛ばされてきたので、大剣で思いっきり刺す。
手応えがない。ああ、あの時と同じだな。
「虚構の悪魔だろうと僕が解体してやる」
ナイフを手に持って首元に当てようとすると、反撃をされた。小さい小形の銃のような物が握られている。何、僕は死なないから問題な、血……?いや、そりゃあ僕だって血は出るが、これはすぐに治らない。これはまずいな───────「トリ様!」
「ありがとう」
どうやらレイが咄嗟に剣でアルの攻撃を受けたらしい。いや、もうこれはアルじゃないな。虚飾の魔王と呼ぼう。とりあえず逃げて傷の様子をよく観察する。僕の全知識をもって傷を塞ぐことを意識すると、治すことができた。
やはり虚飾の魔王の能力は僕にまで及ぶ認識阻害の一種なのかもしれない。
「……そういえばジーンを怖がっていたよね、前」
「オレ?そうだっけ?」
「羽根出してよ羽根」
あれから気になって詳細に調べてみるとジーンは天使の子孫であることが分かった。確かにあんまり見ない真っ白い髪に首を捻ったこともあった。少し青っぽいからアルビノとかではなさそうだったし謎だった。まあそもそも白人はアルビノや白変種の結果ではあるのだけど。青白い髪はどうやら天使由来の色素だったらしい。
「羽根ぇ?」
「……。ちょっと強めの援護魔法をわたしにかけてみて」
アビーが何かを閃いたのか目を見開いてそう言った。
「ああ゛?」
「いいから」
「ちっ、……ほらよ」
「“爆ぜろ”」
アビーがジーンの援護魔法を受け、いつも通りに魔法を使う。
「効いてる!効いてるよ!」
虚飾の魔王が平気な振りをするが、僕には分かる。ダメージが通っている。
「な……んだと」
ジーンが愕然とした顔をする。どうした?
「前回もこーすれば楽勝だったじゃねぇか!!!」
「あ、確かに」
「オレ自身に援護魔法かけて……お前もいる?」
「いらないよ意味ないし。そうだ、レイにかけてみてくれない?」
レイにかけてもらった。そもそも虚飾の魔王はレイが倒すはずだったのだ。今の虚飾の魔王は世界に対し敵対しようという感じでは無いが、それにしても何らかの補正がかかる可能性がある。
「私は!?」
「アンジーにも頼むよ」
「ほいほい」
「よし、じゃあ僕は応援してるね!」
足でまといにしかならなそうなので手を振って観戦することにした。車椅子に戻り、座り直す。
慣れないはずなのに、ジーンが上手く槍を扱いながら突撃していく。
……槍で思い切りぶん殴ったな。今のゼンなら笑いそうだからいいか。
それからしばらくして、レイがが僕の大剣で頭を殴り、虚飾の魔王が気絶し無力化されたことを確認した。




