表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/68

魔王討伐①

「ここが魔王の拠点」


 アビーが遠い目をしながら言う。

 大きい建物ではある。


「なんで知っているの?」


 リズが言う。当然の疑問だ。


「私は貴女達と違って聞き込みしっかりしてたから」


 遠い目をしたまま続ける。

 聞き込みに疲れたのか、それとも隠し事をしているのか。僕には判断がつかない。


「重戦士がいなくなったのは惜しいなッ!」


 ティフが言う。マイクがいなくなっちゃったからね。

 黄金の鎧と盾を光とともに出現させ真っ先に飛びかかるマイクはかっこよかった、とアビーが言っていたな。なんでタンクが真っ先に攻撃をしかけるんだろうなぁ。


「そうだね……で、突入するの?」


「もう少し慎重に動いた方がいいと思います。不法侵入で捕まりかねませんし……」


「朝鮮だもんね。一応教会はあるから、リズから話は通せそうだけど、伝わるまでに何日かかるかな」


「……朝鮮の教会は宗派が違うから私は何もできないわよ」


 宗派って何?そういう顔をしていると、リズにはバレバレなのか説明をしてくれる。


「同宗教で解釈が違うと別宗派になるのよ」


「なるほど」


 リズは宗派におけるトップに近いってことか。


 じゃあ最近知名度を上げている秘密結社も別宗派にあたるのかな。一応同一宗教という話だし。詳しくは知らないけど。


「ギルドもあるから僕が話をつけることもでき……ないな。そんな時間惜しいからさっさと突入しろって言われそうだ」


「友人の距離感だからこその弊害ってヤツ?」


「かもね」


 ジーンの質問に適当に答えつつ、これからどうするかを考える。


「斥候の僕がまず見に行ってくるよ」



 ▫



「よし」


 壁を通り抜けて様子をうかがう。

 辺りを見渡す。

 大きい屋敷だが、家具の類もなく、殺風景だ。人気もない。それにしては綺麗に掃除がされていて不自然さを感じる。


 慎重に探索を進めていく。 途中、針が落ちてきたり、落とし穴があったりしたが、特に何事もなく進めている。


「ここが最後か……」


 1番奥の部屋だ。そっと扉を開けて中を窺うが、誰もいない。本棚だけが置いてある。


 ……全ての本が僕に向かって落ちてくる。殺意はあまりないが、人間だと結構危ない。これも罠だったか。


 ?本棚になんか書いてあるな。


『雨降った後に地固まる』

 どういうことだ?

 暗号か何かかもしれない。とりあえず口に出してみるか。


「雨降った後に地固まる」


 ……カチッと音がした。どこかが開いたようだ。

 本棚を剥がしてみる。そこには空間が広がっていた。杜撰すぎないか。


 足を踏み入れる。階段ではなく、穴のようだ。なるほど、普通の人間だと危ないな。仲間達は皆問題無さそうだが、連れて行くことがあれば、気をつけてくらいは言った方が良いのかもしれない。


「よっと」


 下に降りる。


 辺りを見渡すが何も無い。ただただ歩いていく。

 こういう時、空を飛べたら楽なのだけど、僕達には様々なしがらみがある。僕は空を飛べる気はしなかった。


「“本よ”」


 声が聞こえる。そう思った瞬間、全てが目に入らないほど多くの本が襲ってきた。

 もちろん効果はない。

 驚いているうちに本は全て消えた。


 何かがいるのは間違い無さそうだ。解析。

『虚飾の魔王』

 当たりだ。

 これを外に伝えたいが、この状況だと難しいか。1回避難してから手紙でも飛ばそう。


 距離をバラして本棚のあった部屋に戻る。

 ……羽ばたく音が聞こえるな。追いかけてきている。なら、僕がこのまま逃げれば、外で待機している仲間達のところまで誘導できるんじゃないか?

 特にゼンなんかは野外の方がやりやすいはずだ。うん、そうしよう。


 ダッシュで走る。音が近づいてくると、適度に距離を切りつつ間を取って走る。手を抜かれていることに気がついたのか相手の苛立ったような声が聞こえる。さすがに頃合か?手紙を書いて仲間達のところに、距離を切って飛ばす。これくらいはお手の物だ。


 さて、走って帰るか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ