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7-10

「させない」


 僕が刀をアルの首元に向けようかというその時、アルが低い声を出す。


「!トリ様、下がってください!」


 レイが鬼気迫る声で言う。さすがに僕も危機感を持って後ろに下がる。


「虚飾の魔王、僕に力を寄越せ!」


 アルがそう言うと、拘束魔法がじわじわと崩れていっている感じがした。

 何が起こってるかさっぱり分からないが、良くない展開ではありそうだ。


「レイ、レイ。これ何が起こってるの?」


「分かりません!しかし、能力値が全て上昇し続けています!」


 能力値って何?

 とりあえずパワーが上がっているって理解でいいのかな?


 解析。『虚飾の魔王』?僕達が倒したはずの魔王だ。なぜアルにこの名前が見える?


「“インフェルノ”」


 燃え盛る炎が僕達を襲う。木造の建物で使っていい魔法ではない。


「はあっ!」


 レイが光の剣で炎を薙ぎ払う。頼もしい。


「魔王相手なんて、僕1人じゃ倒せないぞ……!」


「逃げましょう!」


 レイがそう言って僕に手を差しのべる。ありがたいけど、レイに頼って逃げられるような状況でもない。使ったことは無いけど長距離のワープを試してみるべきか?


「その必要はない」


 後ろから聞こえるはずのない声が聞こえる。

 恐る恐る振り向くと、明にいるはずのアビーと、何故かゼンの槍を持ったジーンが立っていた。


 …………。

 ……………………。


「なんで!?」


 思わず声をあげる。


「転移で来た。ふん。セディスにできるんだから私にできないはずがない」


「そういうことだ。……そういうことかぁ?」


 アビーとジーンが次々と話す。

 アビーが使った魔法により、アルの攻撃はここまで来ていない。

 疲れたようにジーンは肩を竦める。


「解放されたし1文無しだしっつうことでその辺ぶらついてたら、そこのゴリラエルフ女に首根っこ掴まれてフランスに連れてかれたってワケ」


「娼館の前にいたところを捕まえた。そんなことする前にアレックスに謝るべき」


「そんなこととはなんだ!そんなこととは!女のお前には分かんねぇだろうがな、俺は3年もご無沙汰だったんだぞ!?セディス、お前なら俺の気持ちわかるよなぁ?」


 空気が読めて無さすぎるアビーと口は悪いけどイマイチ下品になりきれないジーンに懐かしさを覚える。そうそうこんな感じだった。……1文無しなのにどうやって娼館を利用するつもりだったのだろうか。


「分かるけど分かるって言いたくないかな。ジーンと同じとは思われたくないし」


 なので、僕も前の通りに軽口を叩く。


「辛辣……あー久しぶりだなこの感じ」


「アレックスに対してジーンをきちんと謝罪させてきた」


 懐かしさに浸るジーンと褒めろと言わんばかりのアビーを見て、2人ともマイペースだなぁという気分になった。2人をここまでじっくり見たことは今まで無かったかもしれない。


 しかし、やらなくちゃいけない仕事ってそれか……。いいけど。


「ゼンは許してくれたの?」


「ボコボコにされたわ!」


「ははははははは!」


「チッ、他人事だと思って笑いやがって……」


 顔が腫れているのはそれが理由か。ゼンは馬鹿みたいに強かったからなぁ、ジーンじゃ敵わないだろう。こう、シンプルに強い!という感じでアルとはまた違った感じの強さだ。


「将軍だからそっちには行けないが、フレッドをこの槍でボコしてこい、だってさ」


 ゼンやっぱ面白いやつだよね。


「フレッドを倒せる絶好のチャンス。逃す手はない。そういうことで来てみたけど、思ったより危なかった?」


「ま、そういうことだな。悪魔に堕ちた親友をぶち殺すなんていかにも楽しそうじゃねぇか」


「……ありがとう?」


 これはお礼を言うべきか大変迷うけど、2人のおかげで助かったのも事実だ。素直にお礼は言っておこう。


「おふたりとも、ありがとうございます」


 感極まったようにレイがお礼を言う。すみっこでつまらなそうに床を蹴っているアンジーとは対象的だ。彼女は彼女で冷静に物事が見極められていて良いと思う。もうほとんど僕達が勝ったようなものだからだ。


「無視されるのもいい加減傷つきますよ?」


 アビーの防御魔法を突破したアルが牙を見せながらニンマリ笑って言う。ここまで来ても爽やかに見えるのはもういっそ呪いのような気がしてくる。


「あ、木の壁が金に!?」


「え!?」


 アルの後ろを指さして適当なことを叫ぶと、アルが反射的にそちらを向いた。それでいいのか。


「はは」


 僕はそのままの勢いで大剣を振り下ろした。



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