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「ああ」
なるほど、アルの今までの言動はもしかして僕の真似か?らしくないとは思ってたんだよね。
全方位の人を小馬鹿にするような発言が多いというか。僕は……確かにその手の発言は多かったかもしれない。反省しよう。
「セディスさん。これあれですよ、『愚かな人間共の武器を僕が使いこなしてやってるんだ、感謝しろ』系のキャラだとアルフレッドさんに認識されてるんですよ」
アンジーがこっそり僕に教えてくれる。
……そういうこと?ええ……。心外だ。
「世界の謎を解き明かすことこそ、人類しいては世界の発展のためなんですよ!!それを分からない悪魔も、天使も、獣人も、精霊も!ハハハハハハハ、分かりますよね!?セディスさん!!!!」
知らねーよ。
秘密結社ってそんなにやばいところなの?宗教の新しい解釈を考える宗派の1つくらいに捉えていたんだけど。
世界の発展……ここでは謎を解き明かす、か?そのためにレイが必要で、そのために僕をここに招いた、と。
「志を同じくする友を異世界から呼び寄せたかいがありましたよ!おかげで予言を覆すことができました、だって予言はあくまで『この世界の』予言なのですから」
な、何?どういうこと?思考が追いつかない。アルに異次元の理が持ち込まれていそうなことは知っていたけどさ!専門外の話は頭が拒む。リズー!戻ってこーい!
「異世界からの友人は僕と混ざりあって今や同一、もう予言なんて怖くありません。こうすることでアシュリーさんが英雄になる“前”に回収することができる!」
ええと、予言を達成させないために、アルは魔王討伐に加わったってことでいいのかな?自信ないぞ。
「分かりますよね?この偉大さが!分かってるんだから早くアシュリーさんを受け渡ししてくださいよ!!」
分からないよ。
え、どうしよう。どうすれば。
というか調子がいつものアルだ。やはりさっきのは演技だったな?なんで演技なんかしていたんだ。
「お父さんを侮辱するのもいい加減にしろ」
レイが光の剣を構える。
僕はレイの父親じゃないが、ちょっとだけ嬉しい。
「アシュリーさん、これは世界のためなんです、分かりますよね?」
「知るか。俺にとって大切なのは俺だけだ」
「いえいえ。世界のためなので、貴方のためにもなりますよ?」
「俺の話を聞こうともしないヤツが俺のため?笑わせる」
ダメだ。どっちも相手と会話をする気が無さすぎる。会話になってない。
「一体逃がしましたねえ」
アンジーが呑気にそう言った。完全に蚊帳の外だもんな、僕もだけど。
「それだけど、さっき剣を投げて刺しといたよ、ほらあそこ」
入口近くの天井を指さす。
「あ、ほんとだ。声聞こえますね」
悪魔は人間よりずっと丈夫なのでこうしてまだ生きている。そうなるように調整した。
「あとで解剖させてほしいなって……ダメかな?」
「まずは城主さんと話つけないとですねえ」
確かにそうだ。未だ僕達は襲撃犯で侵入者扱いだ。
「セディスさんってそんなに自分の欲に正直な感じでしたっけ?……あー祝福ってやつの効果ですか?まあ僕は計画に支障ないんでスルーしてますけど、他の人はどうなってるか確認してなかったなあ」
会話に一段落が着いたのか、僕の方を見ながらアルがそうやって言ってくる。さすがの頭の回転の速さだが、少しイラッとさせてくるこの感じに懐かしさを覚える。そうそう、こんな感じだったね。
「ティフが1番上手く使いこなしてたよ。1番振り回されてたのはアビーかな……」
ティフはさすが客観視の鬼としか言いようがない。
アビーに関しては、器用な彼女のことだ、そのうち上手く使いこなせるようになるだろう。
「僕も上手く使いこなさなきゃな」
「ふーん」
アルが首を傾げながら僕を眺めている。
……今までの行動ってもしかして僕をイラつかせようとしていたのかな。
思い返せば彼は、数々の差別発言も相手の反応を知りたいがために口に出しているように見えた。本人が強すぎるから、それでも対処ができていたんだろう。
今がチャンスだろうか?そう思い、僕は大剣を手に持ち、上から振り下ろす。
「セディスさんはここが怖いんですよ」
……悪魔、じゃなくて鬼か。鬼になった影響で筋力が上昇しているらしい。指1本で止められた。
「普通、友好的に思っている人間には刃を向けたくないものですよ。人外には分かりませんか?」
「……」
うーん。
やったことを考えたら絶対討伐した方がいい。なんなら僕たちに罪が押し付けられかねないし。
生け捕りにして、僕達の弁明をしてくれるなら最高だけどね。
「レイ、拘束魔法」
「はい!」
拘束魔法の準備をしていたレイに呼びかける。
このために会話に応じて適度に攻撃して時間を稼いでいた。
「“バインド”」
「なっ」
「迂闊だなぁ、こちらとしてはありがたいけどね」
さて、首を刎ねるか。
「“刀”」
せっかくなのでこの前買った刀を手に持つ。
久しぶりに立ち上がり、アルの近くに行く。




