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「レイ。そう気を悪くしないでくれ」


「知っていました…俺ごときトリ様の足元にも及びませんもんね…」


 早とちりなところは相変わらずのようだ。

 落ち込んだ様子を見せるレイに目を合わせようとするが目をそらされる。


「…僕の目をよく見るんだレイ。君は僕よりはるかに強い。それは僕もわかっているけど、君だって1人でできることは限られているだろ?」


 そもそも僕は戦闘向きじゃない。

 さして強くはないのだ。

 出会った時点でレイの方が強くてもおかしくない。


「……。分かりました」


 納得がいかないながらも、飲み込むことにしたようだった。

 この物分りの良さは長所ではあるが、欠点でもある。


「そういうことで雇いたいんだけど…どうかな?」


 少女の方に目を向けて聞く。


「考えさせてください…」


 少女は深く考え込むような素振りをしている。

 了承してくれたらその時は名前を聞こう、そう考えて僕は頷いた。


「いいよ」



 ▫



「リズ、ただいま───────って鳥?」


 リズは教会の外で怪鳥と交戦中だった。


「ああ、セディス。帰って来たばかりで申し訳ないのだけど協力してもらえるかしら」


「分かったよ…解析」


 どういう状況なのかよく分からない。辺境ではよくあることなのだろうか。

 しかし、見たことない鳥だ…。


「いや鳥っていうか人の顔ついてませんか?」


 レイが困惑したような顔で僕に聞く。


「レイ、鳥の定義を言うんだ」


 これも教育の一環としてちょうどいいかと思い、僕は少しレイを試すことにした。


「体が羽毛で覆われている。前肢が翼となっている。くちばしをもつ。卵生の恒温動物…。卵生かは不明ですが、たしかに鳥ですね…」


「そんなことどうでもいいからさっさと来て!」


 リズに呼ばれた。

 しかし、攻めあぐねてはいるけど、大分余裕はありそうだ。そこまで焦る必要はあるのだろうか。


「ははは。…人面鳥?だって。中華系かな?ええと、図鑑図鑑…。災厄の象徴…へえ結構レアなのか…」


 虚空を××に繋いで、図鑑を取り出した。

 結構詳しい説明がのっているが、この絵にはくちばしは書かれていない。名前が同じだけで別物の可能性もある。


「今不穏な言葉が聞こえた気がするけど気のせいだと思うことにするわ!弱点は!?」


 倒したあとは解剖させてもらえるだろうか。


「普通に鳥のような構造をしているから打撃もよく効くと思うよ」


「了解!【正義の壁】!」


 空に大きい鉄塊のようなものが浮かぶ。

 僕の目で見ればあれは鉄では無いことが分かるが、それは置いておく。


 怪鳥が落ちてきた。


「……リズ。この大きさの鳥が落ちて来たらどうなるんだろうね?」


「……」


 目をそらされた。


「レイ、鳥に打撃が効いた理由を言ってごらん」


「…空を飛ぶために、必要な肉しかついていないからでしょうか?」


「正解だよ。よく勉強しているね」


「はい…ありがとうございます」


 レイが嬉しそうに微笑む。


 レイはかなり頭がいい。

 いつかしかるべき学校に通わせたいものだ。


「…ふう、ギリギリセーフね…」


 鳥が近くの森に落ちた。

 リズが頑張って方向をそらしたのだろう。


「解剖していいかい?ああ、用事が終わったら焼き鳥にしてもいいね。…僕はあまり料理ができないからそれ以外は無理だけどね」


「トリ様、無理はしないでください。料理は俺がやりますから」


「……。人面鳥を私に食べさせるつもり?絶対にごめんなんだけれど」


「大丈夫だよ。首から下は確実に鳥だから!」


「余計不安になるわね…」



 ▫



「人面鳥…これ本当に食べても大丈夫なのかしら…」


「はいトリ様どうぞ」


「ありがもぐもぐ…いや僕まだゆっくりしむぐ」


「結構美味しいですね」


「……」


 レイは話を聞かない…。その上等な目をもう少し有効活用して欲しい。


 今回は少し疲れたけどいい資料が手に入ったし結果オーライだろうか。


 走り音が聞こえる。

 角からものすごい勢いで走って来た女の子が直角に切り返し…止まった。


「あの、私護衛になってあげてもい───────人の首!?」


「ああ、人の首じゃないよ、ほら」


 さっきの少女だ。

 あとで名前を聞こう。

 とりあえず少女の混乱を減らすために、目を動かし、頭の正面をさす。


「え、いや前を見るのはちょっとぉ…本当だ。くちばしあるじゃないですか」


 この子表情が全く変わらないな。

 ……興味深い。


「君も食べるかい?」


 少しでも表情が変わらないだろうかと、柄にもなく聞いてしまった。


「あ、じゃあ遠慮なくいただきます、えへへ」


 少女は無表情のまま笑い声を口に出して、肉をほおばっている。


「これ私がおかしいのかしら…」


 リズが物憂げな表情でぼそりと呟いた。


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