表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/68

7-4

「レイ、どんな感じだった?」


「一応山3つほど越えて来たんですけど、小さな農村が2つあるくらいで、後は何もなく。港の場所を聞いてみたのですが、南の方に行けばいいとしか言われず……」


 ……。これはどうやら相当遠くに来てしまったらしい。近くにあるならそんなにアバウトな助言はしないだろう。


「うーん」


「あ、そういえばなんでリアンは倒れているんですか?」


 今気づいたというようにレイが言う。一応友達なんじゃないのか?……レイかアンジー、どちらに聞いても首を振りそうだ。


「自分を知りたかったんだって」


「へえそうなんですか」


 なんの要領も掴んでいない僕の返答を聞き、どうでも良さそうにレイは相槌を打った。アンジーを即否定しにかからないだけ成長しているが、そろそろ他人に興味を持って社交性を身につけてほしいぞ……。



 ▫



 御者の人に頼んで、南へと進んでもらっている。


「おはよう、アンジー」


 向かいの席で寝かせていたアンジーが目を覚ましたので、声をかける。


「おはようございます」


 どこかすっきりした顔でアンジーが答える。


「君のお母さんはまだ生きているかも……っていうのはおかしいが、まだ動いているかもしれないね」


「そういうこと言うのやめてくださいよ……」


 あれ、思ってた反応と違う!?

 すごく嫌そうな顔をしている。どうやらろくな母親じゃなかったらしい。

 中国に戻って母親を探すかい?とか聞かなくて良かった。


「トリ様トリ様、俺走って見て来ましょうか?この馬車より速いと思いますよ」


「いや、いいよ」


 隣に座るレイが僕を見上げながらそう言った。

 ちなみに車椅子はアンジーと僕の間のスペースに置いてある。


「そういえば、そろそろレイには君の本当の父親のことについて話さなくちゃいけないね」


「父親はトリ様では?」


 レイは当然のことのようにそう言って、首をかしげた。


「いや違うけど!!?」


 そして僕も当然の権利として抗議した。

 父親の話をするのはもうちょっと後にするか……。僕は思考を放棄して眠ることにした。



 ▫



「着きましたね」


 アンジーが言う。確かに港だ。盛況な様子である。

 港があって良かった。


「じゃあ並ぼうか」


 貿易に来た人達だろう、商売人らしき人達が並ぶ列の後ろに並ばせてもらう。


 他にこの国の人に会えそうなところもないし、ここに並ぶしかなさそうだ。


「日の本って貿易が盛んなんですねぇ」


 アンジーがあたりを見渡しながらそう言った。


「この国は芸術で有名なんだよ。浮世絵とか聞いた事ないかい?」


「……ありますね」


 目が鋭くなった。前から思っていたが、アンジーは絵画が好きらしい。価値の高そうな絵を見ると、目の色が変わる。彼女が名誉と金を求め続けるのもそれが理由なのかもしれない。実際のところは知らないけど。


「島国は海で隔絶されているからか、独自の文化があっていいよね」


「ですねぇ」


 なんて適当なことを話していると、いつの間にか列の最前列にいた。


「これが許可証です」


「こ、これは……はい、お通りください」


 問題なく通ることができた。

 これでミスはプラマイゼロかな。



 ▫



「しかし、城に来いとは……」


 大学を卒業しました、くらいの実績しかない僕になんたる好待遇。怪しすぎる。


「やはり魔王を討伐したというのが効いているのではないでしょうか」


「かなぁ」


 最終的に魔王は朝鮮まで逃げた。あのまま放っておけばこの国に来たとしてもおかしくはない。しかし、朝鮮も被害は一切出していなかったのだし、そこまで気にする必要もないとも思う。


「遠いな、城」


 渡された地図を眺める。

 さっき乗り上げた場所よりもここから遠い気がする。

 馬車だってそろそろ休めなくてはいけないし……この辺りなら厩舎もあるかな。宿でもとって休むか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ